scene 09

高校生になったワタシと彼ら

 楓 菜穂 15歳

 ワタシ、高校生になりました。


 今日は入学式の日。


「クラスも同じだなんて夢みたいだ!! 菜穂、よろしくね!!」


 クラス表を見て、そう言ってくれたのは、白木 白斗君。小学校からの付き合いで、いつもワタシを助けてくれるヒーロー。文武両道、才色兼備、何でも出来る優等生。初恋の相手。そして……中学の頃に色々経て、この高校の受験の日からワタシたち、付き合い始めました。


「白斗君、新入生代表挨拶、格好良かったよ」


「ありがと」


 入学式での新入生代表挨拶は、白斗君だった。


「白斗君、やっぱり凄いね!!」


「そんな事ないよ」


 そんな会話をしていると、


「白斗ー!!」


 どこからともなく、この教室に男子生徒が飛び込んできた。


「日向!!」


「白斗、お前もこの高校だったのか!! 久しぶりー!! 元気だったか?」


 急に登場した、コイツは綿原 日向。コイツとも、小学校からの付き合い。ワタシをよくからかって来ていた因縁の相手。スポーツが得意なやんちゃボウズ。白斗君とは実は凄く仲が良い。


「日向も元気そうだね」


「おう!! バリバリ元気よ!! 菜穂、さては白斗がこの高校来るの知ってた?」


 急にワタシに話を振ってくる日向。


「し、知らないよ……」


「怪しいな……白斗、菜穂のやつ、ここが決まってから急に明るくなったんだぜ。女子高行くとか言ってたくせによ」


「へぇー」


 笑顔でそう応える白斗君。


「日向!! あんまりそういうの話さなくていいから……」


「ホントのことだろ。それまで菜穂、なんだかどんよりしてたぜ」


「ふーん。」


 考えながら、そう応える白斗君。


「ほら、日向、授業始まるよ!! さっさと戻る!!」


 堪えきれなくなったワタシは、ぴしゃりと日向にそう言う。


「おっ、いけね!! じゃあまたな、白斗、菜穂!!」


 そう言って、日向は駆け足で自分のクラスに戻って行った。


「日向、変わらず元気そうだね。」


 教室に戻って行く日向を眺めながら、白斗君はそう言う。白斗君、相変わらず笑顔だ。


「アイツ、落ち込むことあるのかってくらい、いつも元気だったよ……」


 ワタシはうんざりした声で白斗君にそう言う。


「引っ越すまでは、日向ともずっと一緒だったから嬉しいな」


 ワタシは少し考えながら、


「そうかな……うん、確かにそうだね。日向たちが居なかったら、ワタシはこの高校受けなかったから。」


すると、白斗君は驚いたように、


「えっ、そうなんだ。」


と言った。


「そうだよ……あの頃のワタシは白斗君に近付かれないようにしてたから。」


 ワタシは、少し落ち込んだ声で、白斗君にそう言った。


「その頃の話、詳しく聞きたいな。話してくれない?」


 白斗君は真面目な顔に戻って、そう聞いてくる。


「うーん……その時のこと?  喋るの……?  うーん……」


 ワタシは、少し顔を歪めて言葉を出すのを渋った。と、そこへ、


「ホームルーム始めるぞ」


担任の先生がやってきて、そう言った。


「残念、また後で」


 そう言うと白斗君は、ワタシの方に向けていた椅子を自分の机に戻した。


 あの頃のワタシの気持ち、白斗君に話すのかぁ……。確かに白斗君に全然話してないもんなぁ……。でも、あんまり話したくないなぁ……。


 ワタシはそうぼんやりと考えながら、担任の話を聞き流していた。

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