想いを廻らしながら、学校に登校すると……②
よし、メモも確認したし準備オーケー、いつでも来い!! と思ったのも束の間、保留音が切り変わった。
「もしもし、楓?」
白斗君だ!! どうしよう……、凄くドキドキする。
「うん、そうだよ……」
「電話番号、誰に聞いたの?」
「先生」
「そっか……」
一瞬の沈黙。
「あの……白斗君」
「ん……何?」
「この間は、告白……ありがとう……」
「ん……」
「あのね……ワタシ……今日は白斗君にどうしても伝えたいことがあって、電話掛けたんだ……。」
「ん……」
「あのね……ワタシも白斗君のこと、好きだったんだ。でも……ワタシの好きは白斗君の好きと、ちょっと違うなぁって。」
「…………」
「ワタシは……白斗君が思ってるほど、白斗君のことを考えてる訳でもないし、まして、白斗君にこうなって欲しいとかもない。只、一緒に居たら、楽しそうだな、そう思ったの……でも……」
「待って楓!! その先はお願いだから言わないで!!」
「でも……白斗君とワタシは、多分合わないよ……だから……ごめんなさい……」
「………………っ!!」
電話越しに聞こえる、白斗君の押し殺した声。白斗君、泣いてる?
「あのね、白斗君……ワタシ、白斗君のおかげで楽しくなかった部活動も楽しくなったよ!! 白斗君、白斗君が居ないとワタシも凄く寂しい。でも、白斗君には、ワタシより……」
「ダメなんだ!!」
電話越しから、突然、白斗君の大声が聞こえてきた。
「君じゃないと、ダメなんだよ!! 楓!!」
白斗君、何で?
「白斗君、何で? 何でワタシなの? 白斗君なら、ワタシより良い人が沢山居ると思うよ!!」
「君じゃないと、ダメなんだ……楓……」
白斗君は、さっきとは一転、消え入りそうな声でそう言った。
「っ!! そんなこと言ってもわからないよっ!! だからっ!! 何でっ!! 何でなのっ!! なんでワタシなのっ!!」
いも知れぬ苛立ちを覚えたワタシは、白斗君に声を強めてそう言った。
「楓……君はもう覚えてないかも知れない……初めて会った時のこと、覚えてる?」
ん、いつの話……。
「初めて会った時は、小学校の入学式だった。俺は、楓、君の隣だった。俺より少し背の高かった君は、席に着いた後、突然泣き出した。びっくりした俺は、ただおろおろとするばかりだった」
覚えてる。確か、その後……。
「その後、泣き止んだ君は、俺に向かってこう言ったんだ。『ありがとう!!』と」
確かに、言った。「ありがとう!!」と、でも、あれは……。
「俺は、何も出来ずにただおろおろするだけだったのに、いきなり感謝されて、疑問を感じた。だから、楓に聞いた。『どうして?』と」
そういや、聞かれた。「どうして?」って……。
「それに、君はこう答えたよね。『何で? やさしくしてくれたじゃん!!』」
確かに、言った気がする。でも、それが……。
「確かに俺は楓にやさしくしようとはした。でも、俺の中では、結局、やさしく出来ていないと思っていた」
うん、わかる。でも……。
「楓は『やさしくしてくれたじゃん!!』と言った。おろおろしているだけで、何も出来なかった俺に……」
そんなの、当然じゃ……。
「そんなささいなことを感じて、当然のように感謝の言葉を贈る。楓、そんなお前のことが好きになったよ。大事にしたいと思ったよ!!」
そんな。
「そんなことで……」
そんなことで、白斗君は何年間もワタシに優しくしてくれたの? その一言のお返しになると思って……。
「楓……俺の……楓に対する想いは本物だよ!! この世の誰にも負けない!! だから、楓……俺と付き合ってくれ!!」
白斗君は、ワタシの一番聞きたかった言葉を言ってくれた。
凄く嬉しい!! でも、ダメ……。
「……白斗君、この間告白した時に、『キャラクターコンペでワタシに勝って俺が採用されたら、付き合おう』と言ってくれたよね」
「!!!!、あぁ……言った……」
「じゃあ、ワタシにホントに勝ってみせてよ!! 採用されてよ!! でも、ワタシも本気で頑張ったよ!!」
「……結果が出るの、1ヶ月後だったよな?」
「うん、そうだよ」
「……ダメだ、俺は君には勝てないかも知れない」
何で……。
「何で……!!」
「俺は、この前楓に告白した後、楓の反応見て悔やんだよ。次の日、楓に会ったら勢いで言った未熟な告白を取り下げて、もう一度改めて告白しようと思っていたんだ。でも、楓は来なかった。俺、情けない。楓にかっこつけてあんなこと言っておいて、本当にコンペで採用されるほどのものが出来るとは思ってなかった。引っ越しをする前に、どうにか楓に想いを伝えないとと思っていたら、あんな風に言ってしまったんだ。俺、コンペなんて、本当はどうでもよかったんだ。……絵にはその人の心が写るんだ……だから、多分ダメだ!!」
涙声でそう語る、白斗君。
「俺、楓にコンペで頑張って欲しくて……そしたら、楓の生き生きしたところが見れるって……部活動中の姿見てたらそう思って……」
そう、そうなんだ。いつでも白斗君は、ワタシのことを一番に考えてくれるんだ!! そして、そんな白斗君がワタシは……。
あれ、ワタシも泣いてる? 気が付くと、ワタシの頬にも涙が伝っていた。
「白斗君……ワタシは……白斗君……っ!!」
「楓、なんでお前が泣くの? やっぱりお前は優しいな……っ!! そんな……そんなお前だからっ!! そんなお前だからっ!! 好きだっ!! お願いだっ!! 俺と付き合ってくれ!!」
白斗君はもう一度改めてそう言った。
「ダメ……ワタシは……自分の発言を撤回出来ない……白斗君……ごめんなさい……」
ワタシはそう言って泣き崩れた。
「……そうか、わかった」
「ばぐどぐん……ごめんなさい!!」
「何でっ……何でまた楓が謝るんだよ!! やっぱり、楓は優しいな。俺が好きなのは、楓のそういうところだよ……っ!! わかったよ。それでも、俺、楓のこと想い続けるから、諦めないから、それだけは忘れないでくれ、楓……」
「…………」
「楓、じゃあな!! 電話、ありがとう!! 楓の言葉、聞けて嬉しかった!!」
プツンッ
白斗君はそう明るく振る舞いながら、電話を切った。
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