scene 04
想いを廻らしながら、学校に登校すると……①
次の日……。
ワタシは心臓をばくばくさせながら、学校へ向かった。
正直、白斗君に会うのが、怖かった。今でも、なんて顔して白斗君に会えばいいのか思いついていない。でも……。行くと決めたんだ、腹をくくれ、菜穂!! と自分に言い聞かせる。そして、ワタシの気持ちを白斗君に伝えるんだ!!
そう自分に言い聞かせていると、学校へ着く頃には、ワタシの白斗君へ告白する気持ちは固まっていた。
「おはよー!」
教室に入るなり、朝の挨拶。いつものように、白斗君が挨拶を返してくれるものと思っていた。でも、挨拶が返ってくる事はなかった。白斗君は、学校へ登校していなかったのだ。
白斗君も風邪?
気になって、先生に白斗君が何故休んでいるか尋ねると、
「白木な、引っ越ししたよ」
先生はワタシにそう言った。
どういうこと?
正に青天の霹靂というのはこういうことだ。
白斗君、引っ越すなんて一言も言ってなかったじゃん……。
あまりに突然のことに、びっくりしすぎて考えがまとまらない。
白斗君、告白してきたよね? でも、引っ越すなんて言ってなかったよね?
一体どういうことよ? 白斗の大バカ野郎!!
突然のことにワタシの中をぐるぐると渦巻いていた言葉にならない感情は、全て白斗君への怒りへと変わっていった。
俺の“想い”を受け入れて欲しい、だって!! そう言ってたじゃん!! それが、転校? 白斗君、何がしたかったの? 全然判らん!! もっと詳しく説明してよ!! ワタシにはわかんないよ……。
その怒りが何なのか、中学生のワタシにはわからなかった。わからなくて、余計に腹が立った。
白斗の大バカ野郎に、山程言いたいこと有るのに……転校……あいつほんっとバカ!! なんで告白なんてしてきたの? 庫野町のイメージキャラクターコンペに採用されるんじゃなかったの?
ワタシと付き合うんじゃなかったの?
『……じゃあな。返事、後で良いから。待ってる。』
白斗君……なんで?
次の日から、ワタシは猛烈に絵の勉強に打ち込んだ。
もちろん、コンペの為だ。
気が付けば、庫野町イメージキャラクターコンペの応募締め切りまで、残り後10日を切っていた。白斗君が応募したのかは判らない。でも、白斗君を全力で拒否する為に打ち込んだ。白斗の大バカ野郎なんかに負けないんだから!!
後、9日……。
画力アップの為に先生にコーチを頼んだ。先生も快く了承してくれ、色々とアドバイスを受けた。
後、8日……。
先生の出す課題に全力で取り組んだ。
後、7日……。
ワタシの創ったイメージキャラクターの改善点を探った。
後、6日……。
ラクロスチームの試合を観に行き、その服装をカメラに収めた。
また、眼鏡の個性を出すために、眼鏡屋で取材した。
締め切りまで、後、5日……。
先生に聞いて、ワタシのキャラクターを評価して貰った。アイディアをもっと纏める工夫をしなさいと言われた。
後、4日……。
一匹一匹の個性を全面に出すような描き方にした。
後、3日……。
とにかく、画力アップの為に、絵を描きまくった。
後、2日……。
日が経つにつれて、自分が絵が上手くなっていると実感出来た。そして感じる、白斗君のスゴさ……。白斗君って、こんなに考えて絵を描いてたんだ……!!
後、1日……。
提出期限ギリギリまでキャラクターづくりに没頭した。
「あれ? 菜穂まだやってんの? 頑張るねー。俺、もう出したぜ。」
外野の日向が、何か言ってるが無視した。
そして、締め切りまで、0日……。
ワタシの気持ちをありったけ込めたキャラクターデザインを役所に提出しに行った。
そして。ふと気が付くと、白斗君の居ない生活。
今まですぐ傍に居た彼は……もう居ない。
日が経つにつれて、それまでワタシを覆っていた巨大な怒りは影を潜め、代わりに風船の様に大きく広がる喪失感。
「菜穂~、元気ねえぞ? 燃え尽きちまったか……!? 白斗が居なくなっちまったのが、そんなに堪えてるのか?」
日向からもそんなことを言われる。
ああ、もう、ワタシには白斗君が必要だ!!
でも、ここにはもう居ない……。
そうだ、先生に聞こう!!
白斗君の居場所を聞きに、ワタシは先生の所に駆け出して行った。
「白木が、どこに行ったか知りたい?」
「はい、先生。教えて下さい」
「うーん、個人情報だからなぁ……」
そう言って、難しい顔をする先生。それはそうだ。簡単に教えて良いようなものではない。
「そこをなんとか。お願いします……」
ダメ元で、もう一度先生に必死で頼んだ。
「うーん、楓は白木と仲良かったしな。今回は特別だぞ。白木はな、
「小沼吾乃市……」
小沼吾乃市、ワタシの住む町からそれほど遠くはなかった。
「ほら。電話番号教えてやるから、後は自分で白木に聞け。」
先生はそう言って、ワタシに白斗君の引っ越し先の電話番号が書かれたメモを渡してくれた。
「ありがとうございます!!」
ワタシは先生にお礼を言って、一目散に家に帰った。
自宅に帰って来た。この番号に掛ければ、白斗君が……。そう思うと、嬉しい反面、ワタシはまた、急に恐くなり始めた。
ワタシがいきなり電話を掛けたら、白斗君は一体どんな反応をするだろう? きっと白斗君のことだ。
『やぁ、楓。よく電話掛けて来てくれたね!! 嬉しいよ!!』
なんて、反応してくれるだろうか?
でも……。
あの時、『じゃあな』と言った白斗君は少しだけ悲しそうな感じをしていた気がする。思えば、白斗君もワタシに対して話しにくい雰囲気を作ってしまったかもしれない。
……まぁ考えていても仕方がない。行動あるのみだ。ワタシは感情的になって、ホントに話したいことを忘れないようにメモを書いた。そして、電話の置いてある場所に向かった。
先生に教えてもらった白斗君の電話番号はもう暗記している。ワタシは息を大きく吸い込んで吐いてを何度か繰り返してから、電話のボタンを押した。
プルルルル、プルルルル、プルルルル、プルルルル、プルルルル、ガチャ!!
「はい、白木でございますが……」
「あの……わたくし、白木白斗君の友達の楓という者ですが、白斗君いらっしゃいますか?」
「白斗のお友達の、楓? あぁ、菜穂ちゃんね!! ちょっと待ってて。すぐに白斗呼んでくるわ!!」
保留音に変わった。
白斗君のお母さん、ワタシのこと知ってるんだ。
ワタシは少し驚いたが、少しホッとした。白斗君本人でなく、ワタシを知ってる人が出てくれてよかった。ワタシは待っている間に、予め書いて置いたメモを確認した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます