scene 03
白斗君から突然の告白、ワタシは……
それは、まるで荒れ狂う嵐の中に急に投げ込まれたかのような時間だった。
「俺、楓のことが好きだ!!」
もう一度、そう言う白斗君。白斗君からの急の告白。ワタシは驚き過ぎて声が出ない。
「急にびっくりさせてごめん。でも、俺、楓が好きなんだ!!」
再度そう言う白斗君に、ほんの少しだけ落ち着いてきたワタシは、ワタシも白斗君に想いを寄せていたことを言ってしまおうと思った。
「わ、ワタシも……」
そうワタシが話を切り出し終える前に、間髪入れずに白斗君が話し始めた。
「でも、俺、このままじゃ楓と付き合う資格なんてない!! 独りよがりで悪いけど、俺、楓を引っ張って行ける様な男に為りたい。その為に、今度の庫野町イメージキャラクターコンペで楓を越えて、俺が採用される!! そうしたら、付き合おう!!」
「えっ……」
「俺が言いたいのはそれだけ……楓……」
そうして、また抱き寄せられた。
「……………………」
何分間そうしていたか判らない。白斗君はゆっくりとワタシを引き離し、顔を見つめる。ワタシは恥ずかしくなり、顔を背ける。
「俺、こんな告白しか出来ないけどさ……」
「……………………」
「楓には、俺のこの“想い”を受け入れて欲しい!!」
「……………………」
「……じゃあな。返事、後で良いから。待ってる。」
そう言って、白斗君は帰って行った。
◇◇◇
「はぁ……」
あ〜びっくりした。びっくりもびっくり、大びっくりだよ!!
互いに想い合っていたワタシたち……。白斗君が言いたい事は多分、ワタシに伝わった。つまり、今度のコンペで採用されたら、付き合おう、って事か。ワタシとしては直ぐにでも付き合いたい気持ちがあった。でも、白斗君、有言実行するまで付き合えないとか言いそう……。
白斗君、それほどまでにワタシのことを想ってくれていたのか……。びっくりするくらい白斗君とワタシでは、恋の"重み"が全然違うよ……。
例えるなら、ワタシの恋は、綿の様に柔らかくふわふわした淡い恋。
例えるなら、白斗君のは、鋼鉄の様に硬くゴツゴツした重い恋。
今回の白斗君の告白で、ワタシの淡い恋は吹き飛んじゃったよ。ワタシ、どんな顔して白斗君と向き合えばいいの? 全然わからないよ。
次の日、ワタシは白斗君に会わす顔がなくて風邪を引いたことにして、学校を休んだ。その次の日も、学校を休んだ。お母さんには、頭痛が酷くて無理と言った。その日の夜、明日も学校を休もうかと思っていたら、お母さんの声がした。
「菜穂、お友達来てくれたわよ。」
誰だろ? まさか、白斗君な訳ないよね? 訳ないよね? 日向かなぁ? 日向だよね? だよね?
少しどきどきしながらゆっくりと階段を下りていく。
そこに居たのは、
「よう、大丈夫か……」
やっぱり、日向だった。
「これ、休んでた間に配られたプリントな」
「ありがとう……」
業務連絡をする様に、鞄からプリントを取り出し、ワタシに渡す日向。
「しっかし、オマエが風邪を引くなんて珍しいな。なんか変なもんでも食ったか?」
いつものようにそんな事を言う日向。
「そ、そんなことない……。か、風邪が長引いてるだけだよ」
「ふーん。ま、明日は元気に学校に来いよ!! それじゃ!!」
日向はいつもの調子で家を後にした。日向が来てくれたことで、ぐちゃぐちゃだったワタシの心は幾分か落ち着きはじめた。
「ワタシは……」
ワタシは、確かに白斗君が好きだった。でも……白斗君はワタシの気持ち、全然理解してない!!
それは怒りにも、哀しみにも似たよく判らない、ぐちゃぐちゃした感情だった。それが身体の中をぐるぐると渦巻いていた。でも、日向が言って来たことで整理がつき始めた。
白斗君の告白は断ろう!! そして、ワタシの気持ちを伝えよう!! 明日は学校に行く!!
ワタシはそう心に決めた。
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