美術部のワタシと白斗君②

「おっ!! 良いねぇ!! 俺の才能溢れる作品を応募するぜ!! オマエらには負けね~!!」


 えっ、予想外!!


「はん!! 白斗君には負けても、あんたに負けることは天と地がひっくり返っても無いわ!!」


 ワタシは負けずにバカにしたように、そう言い返した。


「出たな、自信過剰女!! よし、そうと決まれば、俺もキャラクター考えないとな!!」


 そう言って、日向は私の席を離れて行った。

 絶対に、日向なんかには負けないんだから!!

 そう闘志を燃やすワタシなのであった。



 ◇◇◇



 後日、日向とそんなことがあったと白斗君に言ってみた。


「日向も描くの? それは面白いね! 楓も楽しくなってきたでしょ?」


 嬉しそうにそう尋ねてくる白斗君に、ワタシは苦笑い。


「俺も燃えてきた。日向は勿論だけど、楓にも負けないよ! 楓も、誰にも負けないつもりで来てね!」


「本気の白斗君に、ワタシが勝てないよ」


 そう言うワタシに、白斗君は真面目な顔で言った。


じゃない。楓はどこかで本気にストッパーをかけてるんだよ。本当は、楓だって誰にも負けたくないんじゃない?」


 ワタシは、また苦笑い。そうかも知れない、そうかも知れないけど。


「わかった。ワタシも本気でやってみる。白斗君にも負けないよ!」


「そうだよ! そんな楓が見たかった! よし、勝負だ!」


 白斗君の言葉に半ば強引に庫野町のイメージキャラクター争奪戦? を繰り広げることとなったワタシたち……。

 白斗君には絵の実力は敵わないかもだけど……アイディアで勝負だ!!


 やる気になったワタシは、寝る間も惜しんでキャラクター作りに励んだ。お母さんやお父さんに、「また何かに夢中になってるの?」と聞かれ、「部活動」とだけ答えた。庫野町は昔からメガネが有名だったはず……最近はここいらでは珍しい動物が見られる動物園も出来たっけ? スポーツではラクロス!! 強かったよね!!


「…………出来た!!」


 そんなこんなで考え出されたのが、ラクロスの格好をするメガネを掛けた10匹のジャッカルの集団……その名も《コノマチメーサンズ》!!


「よし、目指すぞ本採用!!」



 ◇◇◇



 次の日の放課後……。

 美術室で作品作りに打ち込んでいる白斗君に、ワタシは嬉しそうに近づいていった。


「白斗君、イメージキャラクター出来たよ!!」


 ワタシのかけ声に白斗君は作業を止めて、嬉しそうな顔つきで、

「俺も描いた。見せ合いっこしよっか!」

と言って、自分の鞄からスケッチブックを取り出した。


 勝負とは言ったものの、流石に白斗君に敵う訳はないのだけれど、ワタシも頑張った。


「いいよー!!」


 白斗君、どんな反応するだろう?


「先ずは、俺から!」


 そう言って、白斗君はスケッチブックを開いた。


「わぁ……」


 ワタシは驚愕した。

 スケッチブックには、いくつもの個性豊かなキャラクターイラストが丁寧に細かく描かれていた。流石は全国コンクールで入賞する実力者だ。


「まだどれにするかは正直迷ってる。じゃあ次、楓のも見せて!」


 どうしよう……、こんなの見せて笑われないかな……。

 白斗君の絵にすっかり自信を失ったワタシは、恐る恐る、白斗君に自分が描いたキャラクターを見せた。


「……………………」


「どうかな……白斗君から見たらショボい絵だけど……」


「……そんなことない!!」


 白斗君はワタシに満面の笑顔を見せた。


「この作品、絶対良い所まで行くよ! 俺が保障する!」


 白斗君は嬉しそうに、ワタシにそう言った。


「やっぱり、楓のアイディアは凄いなぁ……。俺なんて、只凝ってるだけでアイディアは2番煎じみたいな作品ばっかりだ」


「そう、かな……?」


 そう褒めてくれる白斗君の言葉に、ワタシは照れながら自分の髪を撫でた。


「そうだよ! 俺も庫野町の名産品とか考えたけど、こんなに沢山、上手く掛け合わせられなかった。楓のこのアイディアは絶対面白いよ!」


 さらに褒められ、ワタシはさらに照れた。


「白斗君のキャラクターもやっぱり凄いよ!! ワタシが審査員なら、白斗君の絵を選びたいもん!!」


 白斗君の絵をもう一度眺めながら、白斗君の方を向いた。すると突然、


「楓!」


 急に白斗君が、ワタシを抱き寄せた。


「わっ!! ど、どうしたの!!  白斗君?」


「……!!  ごめん、急に」


 白斗君は抱き寄せた腕をパッと離して、少し黙った後、静かに、でも力強く、こう言った。


「俺……楓のことが好きだっ!!」

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