scene 02

美術部のワタシと白斗君①

 中学校に進学した。家も近くな二人も当然のように、同じ中学校だ。

 

 この中学校、生徒は全員部活動に所属しなければいけないという、ワタシにとってなんともはた迷惑な校則があり、仕方なく美術部に入部した。


 日向は野球部、白斗君はワタシを心配して同じ美術部に入ってくれた。なんでもできる白斗君は、絵も上手い。小学生時代、全国コンクールで入賞することもあった。ワタシはというと、美術は嫌いではなかったが、下手の横好き程度だった。


 そんな白斗君は、ワタシ以外の他の部員の人とも積極的に会話していた。ワタシはというと、適当にその日の課題の絵を描いてはぼんやりと、窓から日向がやっている野球部の活動を眺める、という時間を過ごしていた。



 そんなある日、白斗君がワタシに話し掛けて来た。


「部活動、そんなに楽しくない?」


「楽しくないよ!! 白斗君みたいに絵も上手い訳でもないし……」


 ワタシは、心配そうに顔色を伺う白斗くんに正直に打ち明けた。


「楓、これ見て!」


 白斗君はそう言って、昔ワタシが休み時間に描いていたキャラクターを描いて見せた。


「これが……、どうしたの?」


 絵を見て、白斗君はやっぱり絵が上手だなぁと思いながら、ワタシは白斗君に尋ねた。


「こんなキャラクター、楓にしか産み出せない! 楓は空想が得意なんだから、それをキャンパスにぶつけると良いよ!」


「そ、そうかな……」


 ワタシは、白斗君にもっと褒めて貰おうと、わざとおどけて見せる。


「絶対にそう! ほら、これ! 今度、庫野町このまちのイメージキャラクターを決めるコンペが行われるらしい」


 そう言って白斗君は、庫野町イメージキャラクターコンペの応募要項を見せてくれた。


 庫野町……ワタシたちが住んでいる町だ。生まれも育ちも庫野町のワタシ、当然町のことは想像しやすい。


「俺も応募するから……楓もキャラクターを応募してみなよ!」


「ワタシなんかが出してもダメだよ……。下手の横好きが絵を描いてるだけだよ? こんな本格的なやつ、出すだけ恥ずかしい……」


「楓、なんでそんなに自信ないかな……。俺にキャラクター見せてくれる時は、楽しそうにしてるのに」


「白斗君はいつも褒めてくれるもん! ワタシの絵を他の人が評価してくれる訳ないよ……」


 そう言って俯くワタシに白斗君は、

「じゃあさ、俺にみせると思ってキャラクター描いてよ! 俺からのお願い! ねっ?」



◇◇◇



 その後も、白斗君からの説得は続けられ、結局、ワタシは庫野町のイメージキャラクターを描いてみることにした。


「庫野町のキャラクターか……」


 そう言って一人、ワタシは考え込む。確かに、こういうコトを考えてる時間、楽しいけど。白斗君の絵と比べると、ワタシのは月にスッポンくらい違うからなぁ。


 すると、遠くからでもよく聞こえる騒がしいアイツの声がした。


「菜穂~、一人で何考え込んでんだよ!!」


 日向だ!!


「日向には全く関係ない!! 別の友達の所に行ってな!!」


「何だよ……人が心配して声を掛けてやればこれだよ……。はいはい、菜穂ちゃんばいばいね〜」


 そう言って、私の前から離れて行ったかと思っていたら、急に手が伸びて来て、ワタシが見ていたものを奪い取った。


「ちょっと!!」


「何々……庫野町のイメージキャラクターを募集します、だって?」


「そうよ!! あんたには全然、興味無いものでしょ!!」


 そう言って、ワタシは日向に奪い取られた応募要項の紙を奪い返した。


「これ、白斗も応募するの?」


「勿論!! 白斗君から紹介されて、ワタシもやることにしたんだから!!」


 日向の質問に対し、ワタシは質問することかというように答える。


「ふーん。オマエら二人、美術部でも、仲良いの?」


「仲良いかって? 部活中はワタシは基本、一人で作品に向かってることが多いからなぁ。白斗君は、よく話し掛けてくれるけど」


 少し考えて、ワタシはそう応える。


「オマエから、話し掛けたりしないの?」


「話し掛けるよ。絵、上手いね、とか……」


「ははっ!! もっと、話題ないの?」


 そうバカにする様に日向が言ってくるので、

「別に、ワタシと白斗君のことはいいでしょ!! そういう訳だから、邪魔しないで!!」

と、日向を突っぱねるように言い返した。


「けっ!! 俺だけ、除け者ですか。」


「じゃあ何、あんたも応募する?」


 ワタシはそう言って拗ねている日向に、冗談半分にそう言った。

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