第6話 成り上がりの第一歩
「現れよ!上級魔獣!」
ゲイルを取り巻く魔法陣から、3体の上級魔獣が姿を現した。
筋肉隆々で二足歩行。人間の様なフォルムをしているが、全身灰色の体に3メートル以上の背丈。極め付けは目玉が六つ付いており、鋭い牙、3体それぞれ違った歪な形をした
――あれが上級魔獣…… 強そうだな…… 何しろ見た目がおっかねぇー!
「ヨンダノハ……キサマカ?ニンゲン……」
「そうだ!お前達はそこに見える村へ行って暴れて来い!」
「ワカッタ “シングル”サマ ノ メイレイダカラナ」
3体の上級魔獣は背中から灰色の翼を発現させ、瞬く間に村へと飛び立った。
「ロアさん!アイツら村へ向かったぞ!」
「分かってる!ルーカス!!」
ゲイルは明らかに戦力を分散させようとしている。
それに気づいた所でロアとルーカスは村人達を見逃しに出来る筈もない。
「チッ!俺が戻るまで無事でいろよ!ロア!少年!」
ルーカスは地面を強く踏み込むと、真空を切り裂く様な衝撃波と共に姿を消した。
ルーカスが単独で上級魔獣達を追った事により、ゲイルの戦力分断作戦は成功した。
「ルーカスは厄介だからな。英雄の娘とガキ1人が残ってくれて助かる。スキル「
ゲイルは掌サイズの爆弾を上空に浮遊させた。
その爆弾には「120」と記されたタイマーが、119……118……117……とカウントを刻んでゆく。
「俺が生成出来る中で最強レベルの威力を誇る爆弾だ!小さいからって油断するなよ!」
「爆破する前に貴方を斬ります!」
剣を抜いたロアはゲイルへと剣先を向けて言い放った。
「出来るかな?結界魔法!エンジェル・カーテン!」
ゲイルは自身が生成した爆弾と、ロアを囲う様に結界を張った。
「なんのつもり?こんな結界なんて一瞬で!」
金色の魔力が剣に集まっていく。ロアは結界を破るつもりだ。
「いいのか!?その結界を破って俺を仕留め切れなかったら、お前は無事だろうが、そこにいるガキは木っ端微塵だぞ?」
「成程……考えたわね……」
ロアは剣に集めた魔力を解いた。
「何やってんだ!ロアさん!俺なんかいいから!その結界破って!」
「出来ない……私が万が一にも仕留め切れなかったらヤスト君が……」
ロアは涙ぐんだ顔で悔しさを滲ませる。
彼女は水晶を取り返す事よりも仲間の命を優先した。
「大丈夫!!!ロアさんはアイツを倒す事に集中して!」
「ヤスト君……?なにするつもり?」
ヤストはロアに作戦を説明する。ゲイルの爆弾が起爆するまで残り「45」と表示されている。悩んでいる時間は無い。
「分かった!やるわ!けど約束して?必ず生きて帰ってくる事!」
――ウホッ!不安顔のロアさんも美しい……ってそんな場合じゃねぇ!やってやるぜ!
「イエッサー!作戦開始だ!」
ヤストは自分を奮い立たせる為、父親のエドワードが渡してくれた泥棒柄の風呂敷を首元に巻いた。
「諦めた様だな?なら俺は逃げるとしよう」
ゲイルはこの場を立ち去ろうと馬に乗り込んだ。
「待ちやがれ!泥棒野郎!」
「……お前1人で何が出来る?殺しはしないから消えろ」
「舐めんな!三流が!ホンモノの泥棒見してやる!」
「ルバリ!!!」
ヤストは「泥棒」スキルを発動した。右手に持っているのは結界内にある爆弾。
そして左手に持っているのは――封印の水晶。
ヤストはこの二つを握りしめ全力で森の茂みへと逃げ込んだ。
「クソガキがぁぁぁ!ボンバーラッシュ!!!」
「させない!
「ぐぁぁぁぉッッ」
ロアは結界を破り金色の魔力を纏った剣でゲイルを斬った。
一方、ヤストは森の茂みを掻き分け泉に向かって走る。爆弾のカウントは残り「10」
――ワイバーンに乗ってた時にデカい泉があった!あそこでコイツを爆発させる!
「見えた!!!あそこだ!!!」
茂みを掻き分けた先に巨大な泉が目に入った。ヤストは泉に向かって爆弾を投げる。
「いけぇぇぇぇぇ!!!!」
ドポン!
カウント僅か「2」の所で爆弾は泉へと沈んだ。
ズドォォォォン!!!!!
爆弾は泉の中で爆発したようだ。凄まじい水飛沫が作戦の成功を祝福するようにヤストに降り注いだ。
「やりました!!ロアさん!!ウォォォォォ!!!!」
ヤストは勝利の雄叫びをあげた。
成り上がり伝説の第一歩を、彼は進んだのであった。
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スキドロ 〜与えられたスキルは泥棒でした。平民から泥棒スキルで成り上りを誓った少年の物語〜 Asa @Asaneet
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