第5話 初陣
「少年……顔にビンタの跡ついてんぞ……大丈夫か?」
「う、うん……大丈夫……昨日は俺が悪い……」
無自覚にロアのブラジャーを盗んでしまったヤストは左頬に強烈な一撃をもらい朝方まで気を失っていた。
「ごめんね……ヤスト君。少し力入れすぎちゃった……」
ロアは申し訳なさそうに呟くと治癒魔法でヤストの顔の腫れを消し去った。
――え?あれで少し?全力でビンタされたら俺の顔が消し飛んでんじゃん……
山に囲まれた地形の上空で、ワイバーンを操獣していたルーカスが何かに気づいた。
「さぁて……水晶の魔力が強まってきたぞ。そろそろ追いつく。少年よ……「初陣」だな。ビビってないよな?」
朝からヤストの心臓は高まっていた。指先を見ると微かに震えている。
「いや全く!俺が活躍するの想像すると武者震いが止まらないだけだよ!」
ルーカスは僅かに微笑み「流石だな!」と返答した。
「……奴だな。ヨシ!降りるぞ!」
ルーカスは、山の獣道を馬に乗り駆け抜ける、ローブに身を包んだ敵を発見した。
「分かったわ。じゃあ行くわよ」
「え?降りるって?ここから?」
「それ以外に何があるの?大丈夫だよ。ヤスト君はルーカスが抱えていってくれるから」
――え?落ちるってこっから?何メートルあると思ってんだよ!頭沸いてんのか?オイ!オッサン!離せ!ちょ!ちょ!ちょ!
ロアは当たり前の事の様にワイバーンの背から飛んだ。その後、すぐにルーカスはヤストを抱えて地上へと飛び降りた。風を切り裂く音がヤストの耳に響く。
「ぶ”ぉろろろろろ!死ぬゥゥゥゥ。ジヌゥゥゥゥ」
ドン!
三人はローブを纏った敵の目の前に着地に成功。
「死ぬかと……思った……オプッッッ!吐きそ……」
ヤストはフラつきながらも敵に向かって発言した。
「オ、おぃ……おみゃえ……水晶返しやがれ……ロイド様が作った平和を脅かす奴は……俺がゆる……しゃな……オロロロロロロロ!!!」
ヤストは決め台詞をキメ切れずにリバースした。
「ちょ!大丈夫?ヤスト君!そ、その通りよ!観念しなさい!」
「チッ!王都からの追手か!」
ローブを纏った敵の右手には黒色の袋が握られている。
「それを使って結界ごと覆って持ち出したって訳か…… “ゲイル”よ」
「バレていたか……ルーカス」
水晶を盗んだ犯人の名は“ゲイル”ルーカスとは顔馴染みのようだ。
彼は頭に被っていたローブを取り顔を晒した。見た目はルーカスと同い年位の中年だ。
「お前のスキルは「花火師」だろ?よく王都の警備を潜り抜けたな?城の荒れ具合から見てお前がやったとは思えない」
「舐めやがって…… それを今から教えてやる!」
ゲイルの雰囲気の変化をルーカスは見逃さなかった。
「ロアァァ!少年を連れて離れろ!!!」
「スキル「
ゲイルは両手から爆弾を生成し投げつけた。
ドォォォン!
右手で投げた爆弾はルーカスに直撃し爆発した。
左手で投げた爆弾は――ヤストの目の前に飛来している。戦闘経験の無いヤストに避ける術は無い。
「
ヤストに爆弾が直撃する瞬間――ロアの抜刀術によって爆弾は真っ二つに割れた。
爆弾は斬られた事に気付かなかったかの様にヤストの遥か後ろに転がり不発に終わった。
――す、すげぇ……速すぎて何が起きたか分かんなかった!これが『聖剣』
「ク、クソ……まだだ……スキル発動!」
ゲイルは更に爆弾を両手に生成した。
「やめとけ。お前の豆鉄砲じゃ俺達には勝てねぇよ」
「ルーカス!俺の爆弾をモロに喰らった筈……」
爆弾が直撃した筈のルーカスは無傷だった。
「ゲイルさん。貴方は“スキル不正申告“をしましたね?これは重罪です」
“スキル不正申告”これは犯罪スキルを付与された者が、教会に多額の賄賂などを積む事などで偽りのスキルを王都に報告する事。
この行為は王都条例違反として重罪に値する。
「貴方は拘束して王都に連れて帰ります。手荒な真似はしたくない。大人しく投降しなさい」
「まだだ……まだ終わってない……」
ゲイルは古びた
「協力者はやはり魔族か!」
ルーカスの疑惑は確信に変わったようだ。詠唱を唱え終えたゲイルの周りに三つの魔法陣が出現した。
「現れよ!上級魔獣!」
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