第2話 「聖剣」ロナ・アルテッツァ


 

 ヤストはスキル付与式から自宅へと戻った。

 「コバルトレストラン」彼の父親が営むレストランだ。その二階がヤストの自宅となっていた。

 

「ガッハッハッハ!!傑作だ!流石俺の息子だ!ガッハッハッハ!!笑いすぎて腹痛い!どうしようか!ワッハッハ!!」

 「笑い事じゃねぇんだよ!」

 「あー。すまん。すまん。だって、よりによって「泥棒」って!ゴリゴリの犯罪スキルじゃねぇか!!アハッハハッハッハ!!」

 

 ――このクソ親父……

  

 「ってか親父も「味付け師」とか訳わかんねぇスキルじゃんかよ!」

 「おー。そうだ。だから村で一番のレストランやってるんだよ!けど良かったじゃねぇか。そのスキルのお陰で念願の王都行きだぞ?」

 

 「詐欺師」「洗脳」「呪術師」など過去の罪人が所持していたものや、悪用される危険性があるスキルを”犯罪スキル“と呼び、それを持った者は監視対象として王都で職務に就く事となる。


 コンコンッ

 「お!噂をすれば王都からのお出迎えじゃねぇのか?」

 

 ガチャッ!

 ヤストの家に2人の男女が訪ねてきた。

 「初めまして。ヤストさんをお迎えに参りました。ロナ・アルテッツァと申します」

 

 ――どストライク…… 控えめに査定しても最上級の美女じゃんかよ!


 白髪のロングヘアに鎧を身に纏った、圧倒的美少女にヤストはハートを撃ち抜かれた。

 

 「あ、えっと…… 初めまし……」

 「そして、俺はルーカスだ!ロナお嬢様の側近を務めてる!宜しくな。少年!」


 ――美女との話に割り込んで来んなよ!オッサン!


 「アルテッツァ……?って事は?」

 「そう!彼女は魔境進行から世界を救った英雄、エルド・アルテッツァの娘で「聖剣」スキルを引き継いだお方だ」


 ――だからロナさんと話させてよ!ってかこのオッサン、渋い… 渋すぎる…… 王都で流行りのイケオジってやつだ!側近って事はロナさんの側にずっといるのか?あんな事やこんな事も……? 敵だ!コイツは敵だ!!

 

 ヤストは、高身長で程良く焼けた肌、無精髭が似合うイケオジ。ルーカスに激しい嫉妬を覚えた。


 「少年……?どうした……?まぁいいか。少年には規約通り王都で働いてもらうが、その前に……」

 「ルーカス。そこからは私が話すわ。ヤスト君。犯罪スキルを手に入れた君は王都で働いてもらう。そこは了承してくれるかしら?」

 

 ――了承も何も……断ったら監獄行きだろ?行くしかないよな……


 「あ、はい。行きます。王都で働きたかったし……」

 

 ――にしてもやっぱ綺麗だな。ロナさん。そして何より……おっぱいでっけぇ……


 「思春期め。ショ・ウ・ネ・ン!」

 ルーカスは、ヤストの不純な視線に気付きウインクしながら呟いた。


 「……?? 了承してくれたのなら良かった。これから王都に来てもらう予定だったんだけど、君には緊急任務に同行して欲しいの」


 ――え?いきなり任務?しかも、この求める様な瞳。“漢”ヤスト!やるしかねぇ!


 「もちろん!ロアさんの為なら、どこへでも同行します!」

 「ホント?良かったぁ!ありがとう!ヤスト君!」

 ロアは初めて見せた笑顔で、ヤストの手を取り握りしめた。


 ――ウォォォォォ!!笑顔可愛ぇぇぇ!手ぇぇぇぇ!!柔らけぇぇぇぇ!!しかもメッチャいい匂いするぅぅぅぅ!!


 「思春期め。ショ・ウ・ネ・ン!」

 ルーカス、本日に2度目のウインク。


 「けど緊急任務って?俺なんか行って足手まといじゃ……」

 「いやそんな事ないわ。必ず君のスキルが必要になる」


 ――泥棒スキルが必要になる任務って?


 「私の父、エルド・アルテッツァが魔族と上級魔獣を封印したのは知ってるよね?」

 「はい!それで魔境進行は終結したんですよね?」

 「その通り。そして魔族達が封印されてる「封印の水晶」が見張り役の男によって盗まれたの」


 ――え?重大事件じゃん!


 「だからヤスト君には、封印の水晶を奪い返して欲しいの」


 ――初っ端から、重大なクエストだ!やってやるぜ!ここで活躍して名を挙げてやる!


 「“漢”ヤスト!やります!やらしてください!」


 ――俺はやるぞ!そして願わくば…… 活躍してロアさんとお近づきになりたい!


 ヤストは、下心丸出しの真っ直ぐな瞳を激しく燃やしたのであった。


 

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