スキドロ 〜与えられたスキルは泥棒でした。平民から泥棒スキルで成り上りを誓った少年の物語〜
Asa
第1話 スキル付与式
人類と魔族の存亡をかけた聖戦。“魔境進行”から10年。
世界に甚大な被害と恐怖を植え付けたこの聖戦は、「聖剣」エルド・アルテッツァの命と引き換えに魔族と上級魔獣を封印する事で終結した。
―― エルド様!今日で俺も“スキル”を与えられます!授かった能力を活かして、いつか俺も貴方みたいに……
世界を救ったエルド・アルテッツァの銅像を眺めながら、目を輝かせる少年が1人。
彼の名は“ヤスト”
ここは「アルテッツァ王国」に位置する、とある小さな村。その名も「コバルト村」
この村の教会にてヤストのスキル付与式が行われようとしていた。
「ヤスト。誕生日おめでとう。これから貴方にスキルを付与するわ。準備はいい?」
「はい!シスター!準備万端です!」
――今日は15歳の誕生日。遂に俺にもスキルが!
この世界で15歳を迎えた者は、教会にて「スキル」を与えられる。
「賢者」「錬金術師」「剣士」など様々なスキルの中から一つ。
昨日からヤストは胸の高まりが抑える事が出来ず寝不足だった。
――ついに来た!俺のスキル付与の瞬間が!成り上がってやる。田舎から抜け出して王都へ。活躍して名を挙げて、綺麗な嫁さん見つけて…… おっと!それはまだ気が早いな。
「では読み上げます。貴方のスキルは……」
シスターは少し戸惑いの表情を見せた。
「どうしたの?シスター?早く俺のスキルを言ってくれよ!」
――もしかして、過去の英雄が持ってたスキルなのか!?神よ!俺は選ばれた人間って事ですか!そうなんでしょ!
「ヤスト…… 大変申し上げずらいんですけど……」
――ん?何かシスター、様子おかしくない?まさかゴミスキルなの?「羊飼い」とか「執事」とかなの?あ、別に掛けてる訳じゃないよ…… ってか何なの?早く言ってよ!
「じゃあ読み上げるわ。貴方のスキルは……」
「俺のスキルは……」
――キタ!キタ!キター!ついに始まるぜ!ヤスト様の伝説が!
「“泥棒”です!」
「へ?ド・ロ・ボ・ウ?」
「はい…… ド・ロ・ボ・ウ。です」
「あの窃盗とか空き巣とかの……」
「はい。その通りです…… 以上でスキル付与式を終わります…… 神のご加護があらんことを」
シスターは気まずそうに教会を去っていった。
――この瞬間から俺の成り上がりライフが幕を開けたのだった。
「って!言いたい所だけど!このスキルでどうやって成り上がるんだよー!!!」
彼の名は“ヤスト”
この物語は泥棒スキルを駆使し、王都で成り上がりを目指す少年の物語。
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