三限目(3-6)合同生誕祭にも、お兄ちゃんたちがいっぱい!?
実は、九人の溺愛兄s’よりも身長が高い花さん。
そのモデルさんのようなそのスラリとした体型からは想像できないくらい物凄い力で大きな体を溺愛兄s’へ割り込ませ、『どいたどいた』と払い除けようとする。
前に夕お兄ちゃんが、『花は、俺たちよりも身長も腕力も態度も、高くて強くてデカい』とこそっと教えてくれたんだけど、その力強い腕っぷしによって溺愛兄s’はあっという間に押し退けられてしまった。
が、すぐに臨戦態勢となり、花さんへ食ってかかっていく。
「おいっ! クソ花っ!
「痛ってーな! 馬鹿力をもうちょっと抑えろってーの! ってか、そのミルクティー置いてさっさと出てけ!」
「今日は、織姫と彦星が会える年に一回の大切な日なんです。お邪魔虫は消えていただけると有り難いですね」
「こ・こ・は、アタシの部屋なんだけどぉ〜? ふんっ! 光ちゃんを置いてったのは、アンタらのくせに。エラそうによく言うわよ」
そう言って花さんは私の側にドカッと座り、さらにお兄ちゃんたちを挑発し続けた。
「ねぇ〜。光ちゃんだって、そう思うでしょ? コイツら、か弱いアタシに対して扱いが酷いと思わない〜?」
「なんだと!」
「……誰が、“か弱い”ですって?」
「こっちは、被害者なんだぞ! 年に一回の光との大事な生誕祭も潰されて、散々な目にあったんだからな!」
「あー、もう。煩いわねぇ。ったく。いつもだったら、こ〜んな小細工すぐに見抜けるくせに、ほんっと、光ちゃんが絡むとポンコツになるわね、アンタたち。さぁ、光ちゃん。こんな奴らは放っておいて、アタシと一緒にベッドルームに行きましょうね♡」
「…………は?」
「てめー、今なんつった?」
「同衾なんかさせるかよ! 俺たちが光から慰めてもらうんだからな!」
「はわわ……。ちょ、ちょっと落ち着いてよ。何で、お兄ちゃんたちは花さんに対してそんなに怒ってるのよ。それに、今日のことは私が全部悪いの。お兄ちゃん、花さん。迷惑かけて、ごめんなさい」
私は涙を引っ込め、ちゃんとした言葉でお兄ちゃんたちに謝る。今度こそ、しっかりと。
甘えているだけじゃ、ダメなんだ。
『知らなかったから、しょうがない』じゃダメなんだ。
頭の中だけでぐるぐるとした思いを抱えるだけじゃなく、何かやらなきゃ。動かなきゃ。
いずれはきっと、お兄ちゃんたちの側を離れなきゃならなくなるんだろうけど、それを『逃げる』という手段だけにしてはいけないんだと思う。
お兄ちゃんたちのために、今の自分が何ができるのか。
今回のことで、私は『知ること』に対して積極的になろうと、そう強く決意した。
そんな、真っ直ぐな瞳を向けて謝罪の言葉を伝えた私に対し、口論を続けていた溺愛兄s’と花さんはピタリと口を閉じ、再び優しい視線で見つめ返してきてくれる。
私の思いを、全て受け止めてくれるかのように。
「うん。光、大丈夫だよ。わかってるから」
「ええ。それにしても、今日は一日大変でしたね。もうこんな時間ですし、ゆっくりと休みましょう」
「だな。まあ、光の生誕祭は潰されなかったから良しとするか。今日の『お礼』は、後でた〜っぷりとさせてもらうけどな」
「ってか、花。お前、あのTwinsをちゃんとコントロールしとけよな」
「マジで。チョロチョロと余計な動きをしてんだぜ?」
「そんなの、アタシの責任じゃないわよ。あの二人には、もう何年も会ってないんだし」
「…………ん? え、えっと、お兄ちゃんたち、ちょっと待って。何で、一央ちゃんと二央くんのことを花さんに言うの? 花さんに、何か関係があるの?」
葵お兄ちゃんの発したワードに引っかかりを覚え、私は皆の会話の中へ疑問を投げかけていく。
すると、その質問に対し、全員がキョトンとした視線を私に向けてきた。
「あれ? 光は知らなかったんだっけ?」
「おい、明。光ちゃんに説明してないのかよ」
「俺たちと光りんとの関係で、必要がないことの説明なんかいる?」
「まあ、そりゃそうか」
「何、納得しているんですか。説明しないままだと、光が混乱してしまうでしょうに。あのですね、光。花の名字は、『梅野俣』なんですよ」
「…………え?」
「で、花とあの二人は
「ええっ!?」
「それと、光は勘違いしているみたいだが、花は現在の生物学的は『男』だ。本名は、『梅野俣
「えええーーーー!?」
『知らなきゃ』と思った直後に出てきた、思ってもみなかった衝撃の事実。
特に、怜お兄ちゃんの口から出てきたその最後の内容に、深夜にも関わらず私はあまり今まで出したことのないような大声を上げてしまい、その後、急激な疲れの症状も影響して、一気に眠気に襲われてしまうのだった。
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