三限目(3-1)体育文化祭にも、お兄ちゃんがいっぱい!?

 木々の葉が、濃い緑色から黄色や赤に変化する秋の頃。

 この時期は、各地で赤や黄色など、色とりどりの世界が広がるが、ここ篠花学園にも秋の名所が一つある。校舎入り口から校門まで、長く一直線に伸びた道に沿って植えられたけやき並木だ。

 色とりどりのけやき並木が、学園生徒を向かい入れるようにアーチ状に組み込まれている。


 そんな景色を眺めながら、私は明日開催される体育文化祭の流れについて、頭の中で一つ一つ確認をしていた。

 今年は特に猛暑、いや、溺愛極暑と言うべきか、例年に比べていろんな意味での暑さをもろに感じる。

 そんな夏も終わったかと思うと、すぐに期末テストが始まり、それもあっという間に過ぎ去っていった。

 今回は中間テストの騒動の二の舞いにならぬよう、以下の三点をあらかじめお兄ちゃんs'にはキツーく言い含めておいた。



 一、妹への個別指導は一人一回のみの三時間まで。期末テスト二週間前から各自曜日を割り振り、それ以外の時間は妹の集中力保持のため部屋に入らないこと。


 二、妹の主体性と自主性を高めるため、テスト期間中は兄から不必要な声かけはしないこと。


 三、上記二点が守られなかった場合、妹手作り弁当は金輪際、永久的に食べられないこと。



 中間テストが散々な結果だったため、今回の期間テストは前回よりも得点アップを目指す必要があった私は、特に三点目を強調して伝え、自室の扉にもデカデカと貼り付けておいた。

 それを見た九人の溺愛集団は阿鼻叫喚となっていたが、『妹手作り弁当屋、閉店危機!』にさらされたため、大人しく提案をのみこんでくれた。


 篠花学園内には大食堂が設置されており、安くて栄養価の高いメニューが取り揃えられている。

 しかし、お兄ちゃんたちは昔から食に無頓着だったり、偏食が多かったりと、食べ物への優先順位がかなり低かったらしい。

 そんな時に、私が休日の暇つぶしに作っていた料理を口にしたところいたく気に入ってしまい、弁当作りにまで依頼されたというわけだ。

 私の負担を気づかい、最初は週三日の弁当作りだった。

 しかし、そうすると残りの二日はお兄ちゃんたちはまったく食べようとしない、学食にも興味を示さず栄養ドリンクのみで過ごそうする、ということがわかったので、結局毎日作ることにしたのだった。


 とまあ、このようなお達しを出したおかげもあり、期末テストは全教科学年平均より三ポイントほど上の結果を取ることが出来た。

 どれも高い点数というわけではなかったが、前回の中間テストは学年平均を越すことができなかったので、今回の結果には個人的には満足している。



 そして、期末テストが終わった後にやってくるのが、この篠花学園の中でも大きな行事、『体育文化祭』だ。

 以前は、体育祭と文化祭を二つに分けて実施していたようだが、昨今の教育事情のことも絡み、行事を一体化して行うことになったとのこと。


 午前中は体育祭、午後は文化祭という構成だ。


 体育祭では、クラス対抗ものと部活対抗もので得点を競う形式となっている。活躍する中心メンバーは、主に運動部だ。

 文化祭での主役は、もちろん文化部。これまでの活動成果を存分に発表でき、なおかつ観客から直接感想を聞けるなど貴重な場となっている。

 生徒の主体性を学びの中心に据えるという学園目標から、体育文化祭で行う種目や運営はほぼ全て生徒自ら企画することになっているが、今年は特にその色合いが強い。

 さらに、の影響かどうかは知らないが、外部から運動部と文化部の各分野の専門家も篠花学園の学生の活動を視察するとの情報が入り、アピールしたい部は現在必死に準備を行っている今日このごろだ。


 そんな中で、私の所属する家庭科部は特に大きなウェーブにのまれず、平常運転。

 何故か、夏休み明けから調理関係の活動はできなくなってしまったが、今は大食堂のスタッフさんと一緒に新しい学食メニューの考案に向けて話し合いをしている。

 調理はできないけれど、新しいレシビを考えるのはとてもやりがいがあって、楽しい。


 とは言っても、私もせっかくの中学校での行事は存分に楽しみたい。邪魔されずに。

 そんなわけで、文化祭では家庭科部から特に発表ブースは設けないけれど、思いっきり楽しめるように秘策を練ることにしたのだった。

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