アッシュと言う男

アッシュは帰宅した。


「おや、 もう帰って来たのか」


父親のバイオレット伯爵がアッシュを見やる。


「朝帰り、 なんて事出来ませんよ・・・」

「む、 デートは失敗したのか?」

「・・・微妙な所です」


ロータスが答える。


「少し休みます」

「そうした方が良いな」


アッシュは自室に戻った。


「ふぅ・・・」


アッシュは物思いに馳せていた。


「・・・・・」


アッシュはハルコと共に過ごしてやはり一番印象に残ったのは

背が小さいと言う事だ。


「・・・・・」


ハルコの歳は13歳、 自分が13歳の頃にハルコと同じ力を持ってハルコと

同じ事が出来るだろうか? 恐らくは無理だろう

今でも無理だろう。


「・・・随分重い物背負わせてしまったのだな・・・」


アッシュはそう思い立つとペンを取っていた。







後日、 ニグレドの宮にてハルコは物思いに馳せていた。


「先日のアッシュ様とのデート、 逢瀬は如何でした?」


メイド長のジェットが尋ねる。


「聊か不満な所が有りましたよ」

「そうですか・・・ではお気に召さないと?」

「・・・・・えぇ・・・ふふ・・・」

「如何しました?」

「女子の身で殿方を選り好みするとは

なよ竹のかぐや姫になった気分ですわ」

「かぐや姫?」

「噂に聞けば大臣すら袖にする程の絶世の美女だとか」

「それは・・・もう暴挙では? 大臣を袖にすると言うのは

狂気に片足が漬かっているかと」

「最終的に月に登ったとか何とか」

「創作の類に思えます」

「如何だろうか・・・大臣を袖にする程の女ならば

月の民が迎えに来ても可笑しくないと思います」

「左様ですか」


そんな話をしているとシオンが手紙を持って来た。


「アッシュ様からお手紙です」

「手紙?」

「えぇ」

「ふむ・・・」


アッシュからの手紙を読むハルコ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

前略、 ハルコ様へ。

過日のデートに関しましては

不手際が多々あった事をお詫びします。

折角お時間を取らせてしまいこんな事になってしまい

申し訳有りません。


こんな男が妻を娶ろうと言うのは聊か早計でした。

己を磨く為に日々精進する心構えです。

過日送った手紙の事は忘れて下さい。


しかし、 もしも宜しければこれから友人としての

お付き合いをさせて頂きたく存じ上げます。


敬具

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「・・・・・」


ハルコは少し考えた。


「これは・・・如何言う意味なのかしら?」

「お友達になって下さい、 と言う意味では?」


シオンの答えに最後考えるハルコ。


「男女間でも友情は有るのかしら?」

「難しい質問ですが、 アッシュ様は考えてこの手紙を出したと思います

それならば答えるのが筋かと」

「・・・・・」


ハルコはまた考えて。


「ならば『こちらこそよろしくと』返事を書いてみるか、 添削を頼む」

「了解しました!!」

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侍ガールは今週も逢瀬を重ねる @asashinjam

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