第12話 報酬

「ありがとう。おかげで早く済んだわ」


「いえ、ぜんぜん……」


俺の言葉に薄く微笑むと、リヴィエッタは鎌を消し、自身も黒い煙になって消えた。


え、ひとりで帰っちゃうの? そう思った直後に彼女は落とし穴のなかに出現した。そして、何かを拾うと再び煙となって地上に再出現した。


「それは……なんですか?」


リヴィエッタは牙のようなものを手にしていた。


「……どういう事情かはわからないけれど、あまり教育を受けられていないようね」


「転生されてきて、すぐに働きに出たんです」


「あなた転生者なの?」


転生者、という言葉を聞いた瞬間にリヴィエッタの表情は険しくなり、鎌を再出現させた。


「えっ、はい……そうです。その、なにかまずかったですか?」


彼女は赤い瞳でじっと俺のことを見た。非常に気まずかったが、目をそらしたら首をハネられそうで動けない。


やがて彼女は目をとじ、鎌をしまった。


「いえ、何でもないわ」


「……」


「転生者といえば、規格外のステータスと強力なスキルを持ってこの世界にやってくる。なかにはその力に溺れ、暴徒化した者たちもいるわ」


「そうなんですか……」


「ええ。暴走して手に負えなくなった転生者を処罰する専門の仕事もあるぐらい、彼らは強力なの」


「なるほど。ってことはつまり、その最強の転生者たちより、さらに強いひとがいるってことですか」


「そうよ。王国軍が最も強かった時代の騎士団長が、今はその仕事に就いていたはずだわ」


「そうなんですか……。そんな強いひとじゃないと止められないぐらい、転生者って強いんですね。それなのに俺は、穴掘りスキルのみか……」


「もっと強い状態で転生されたかった?」


「当たり前じゃないですか」


「そう。でも、力もあったらあったで色々と面倒なものよ」


「そうですかね」


「話が逸れたわね。これを売れば、かなりのお金になるわ。もちろん、あなたと半分に分ける」


「いや、それを受け取ることはできません。俺はただ仕事をしただけですから。むしろこんな貴重な経験もさせてもらえたわけですし、俺のほうこそお礼を言いたいぐらいです」


あんなに強力なボスモンスターを倒したんだ。大量の経験値を入手したことで、チートスキルを取得しているかもしれない! 早く役所へ行きたくてうずうずした。今夜はもう閉まっているだろうから、明日が待ち遠しい。


「わかったわ。じゃあせめて、夕飯をご馳走させて。そこで、ダンジョンとかモンスターについて簡単に説明してあげる」


普段なら、夕飯の誘いは断っていた。夜はひとりでゆったり過ごしたいからだ。しかし今夜は彼女の申し出を受けた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る