第23話 植物
「植物が好きなんですね」
「うん」
彼の部屋には、たくさんの観葉植物の鉢が、きれいに部屋の中を彩るように並んでいた。縁側にはさらに大小のたくさんの鉢が並んでいる。上からは吊り鉢もぶら下がり、そこから蔓性の観葉植物が蔓を伸ばしている。
「僕は植物を大きくするのが趣味なんだ」
「それが趣味なんですか・・💧 」
獏さんはちょっと変わった人だった。
「うん、百均なんかで売っている小さい観葉植物なんかを買って来てさ、それを大きくするんだ」
獏さんはうれしそうに話をする。見るとかなり大きな観葉植物もある。
「これはみんな元はこんなにちっちゃかったんだ」
獏さんはそう言って、人差し指と親指を逆Cの形にする。
「えっ、そうなんですか」
私は驚く。私の背丈を超えているものもある。
「・・・」
それはなかなかすごいことだと、私は思った。
「すごい、いっぱいあるんですね」
あらためて見ると、相当な数の鉢があった。
「うん、よかったらあげるよ。増えすぎて困っているんだ。大きくなった枝なんかを挿し木するとどんどん増えちゃってね」
「うっ」
私はそこで固まる。私はサボテンすら枯らす女・・。今までもらったり、気まぐれで百均なんかで買った観葉植物を一年以上枯らさずに育てた実績がない。
「君の引っ越し祝いもかねて、あげるよ。どれでも好きなの言って」
「いや、でも、あの、私、サボテンを枯らす女なんです・・」
私はおずおずと正直に言った。
「そうなんだ。じゃあ、これなんかどう?ユッカって言うんだ。見たことあるだろう?」
「は、はあ・・」
確かにホームセンターの植物コーナーで見たことがある。
「これはかなり丈夫だから大丈夫だよ。暑さにも寒さにも強いし、乾燥にも根腐れにも強いから」
「・・・」
それだけ強い植物を枯らしたらどうしよう・・。逆に私にはプレッシャーだった。
「これを枯らしたら大したもんだよ」
だが、獏さんは自信満々に言った。
「・・・」
それを枯らす女なんだよなぁ・・。だが、厚意は断れず、私はその鉢をもらうことになった。
「小丸くんも何か欲しいのあるかい?」
獏さんは今度は膝を曲げ、小丸に顔を近づけ訊いた。
「これがほしいにゃ」
小丸は、何やら小さな小鉢をその丸い指で指さす。
「これかぁ・・」
すると、獏さんが悩まし気に首をひねる。
「にゃ?」
小丸が獏さんを見上げる。
「なんなんですか」
私が獏さんに訊いた。
「これはちょっと難しいかも。寒さに弱いんだ。冬の管理が大変だよ」
「じゃあ」
私はこれ幸いにと断ろうとした。
「でも、これはとてもきれいな真っ赤な花を咲かせるんだ。君はいいのを選んだね」
獏さんは小丸の頭をなでる。
「にゃにゃにゃにゃ」
小丸はうれしそうだった。
「・・・」
結局、それももらうことになってしまった。多分、それのお世話をするのは私だろう・・。
「あっ」
「どうしたの」
突然、声を上げる私に獏さんが驚く。
「私の家の庭にいっぱい、果樹が植わってるんですけど、育て方というか管理の仕方が分からなかくて・・」
「ああ、なんだ。なんかあったのかと思った」
獏さんはホッと胸を撫でおろす。
「今度見に行くよ」
「お願いします」
よかった。心強い助っ人が出来た。私もホッと胸をなでおろした。
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