第14話 海
「やった、思った通りだわ」
小丸との車旅を動画にして、ネットにアップすると、さらに動画の再生数が伸びた。
「やった」
これで、旅を続ける資金も問題ない。
私たちを乗せたフィアット5000は軽快に旅の道行を走って行った。
「わあ、海だ」
海に出た。
「海ってなんだにゃ?」
「あれよ」
私は山の上から見える膨大な水の広がりを指さす。
「あれが海かにゃ」
「そうよ。すごいでしょ」
「すごいにゃ」
「あそこにお魚がたくさんいるのよ」
「そうなのかにゃ」
小丸は目を輝かせる。
「行ってみましょ」
「うんにゃ」
私たちはまっすぐ海に向かって、フィアット5000を走らせて行った。
「いいとこだね」
「うんにゃ」
そこは入り江に面した小さな漁村だった。小高い山に囲まれたその村は、昭和初期で時が止まってしまったみたいに古い木造の家々が並ぶ。
私はフィアット5000を海の近くに止め、海に突き出すように伸びる堤防の先まで小丸を連れて歩いて行った。
「いいね。海」
「うんにゃ」
私たちは、堤防の最先端に足を投げ出して座り込み、足をぶらぶらさせながら広大な目の前に広がる海を見つめた。
「こんなに大きいと悩みなんか全部ふっとんじゃうね」
「うんにゃ。猫に悩みはないけどにゃ」
空はどこまでも青く、真っ白い綿菓子みたいな雲がほわほわと浮かぶ。私たちは、時間も忘れ、飽きることなく果てしなく広がる海を見つめ続けた。
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