第13話 車旅

「さあ、出かけるわよ」

「どこに行くにゃ?」

「旅よ」

「にゃ?」

「車を借りて旅に出るの」

「なんでにゃ?」

「それが流行りなのよ」

 ユーチューブを見ていたら、車旅の動画がけっこう人気になっていた。

「気分転換にもなるでしょ」

「にゃあ?」

 小丸は気分転換が分からないらしかった。猫は気分が移り気で、気分転換ばかりだから、その必要がないらしい。

「今まで引きこもっていた分を取り戻すのよ」

 私は力を込めて言った。

「さあ、どこに行く?」

 借りてきた真っ赤なフィアット5000に乗り込むと、私は助手席の小丸を見た。

「あったかいところがいいにゃ。猫は寒いのが苦手だにゃ」

「じゃあ、南ね」

 私たちは南に向かって走り出した。

「気持ちいい」

 車の窓を開けると、心地いい風が吹き抜けていく。

「にゃ~」

 小丸も窓から顔を出し、その風に気持ちよさそうに吹かれている。

「あんた車初めてだもんね」

「にゃあ」

 小丸はうなずく。空も真っ青に晴れ渡り、気温も温かく気持ちいい。

「気持ちいいにゃぁ」

「うん」

 走り始めてすぐ、私はもうすでに旅にでてよかったと思った。

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