第2話 夜桜沙耶華には婚約者がいる

今週で既に10人の男子から告白された。全部フった。

私の腐女子フィルターに当てはまらない締まらない男ばかりだし、月城くんの相手の攻めに相応しくない!!

と言うかイケメンが少ない。


まあ、そもそもイケメンと言うのは女子から告白されるのを待つタイプだから自分から告白しに来る奴は余程のキザかナルシストだろうけど。

そう言うタイプは変にプライドが高いのよね。


あの男もそうだったわね。そう言えば。


と、お昼休みに屋上で私と月城くんはお昼をこの所友達として食べていた。

月城くんは最初隣に座るのに抵抗があり離れてた。


私が攻めなら距離を詰め


『何で離れるんだよ。こっちに来い!てめーぶっ倒すぞ?』


『で、でも僕、は、恥ずかしくて…』


『昇…いいから、ここに座れよ』

とあの男は自分の膝をポンポンと……。

と考え、ハッとした!


「わ、私無意識に…」

と独り言に現実の月城くんが


「?ど、どうしたの?夜桜さん」

と不思議そうにしている。因みに彼はいつもパンを食べている。

私は世話係の作った、栄養満点のお弁当だ。


「何でもないわ。それよりあなた毎日パンね。栄養が偏るわよ?」

と言うと


「あ、そ、その…僕のうちは…共働きだから……」

とモゴモゴ言っている。

仕方ないので私はお弁当の蓋に少しおかずを乗せて差し出した。


「えっ!!?い、いいの!?」

と月城くんは赤くなっている。

はあ、全く、そう言う反応は攻めにしてもらいたい…。


でも何故あの男がさっき私の脳内の月城くんの相手の攻めに……しかし考えてみるとあの男が何となく似合うかもと思い始めた。私が大嫌いな男…一応イケメンだけど、プライドが高く、ナルシストで上から目線のバカ男で…。


と考えているとバンと屋上の扉が開き、腕を組み仁王立ちで偉そうにこちらを睨みつけるイケメン…いや、一応の私の婚約者


【白藤玲一郎】

が立っていた。顔立ちはスッとしていて髪は少し茶髪だが、一応財閥の御曹司だからチャラチャラしているわけでもない、気品をかね揃えている。だが…


「………沙耶華。これは、どういうことなんだ!?」

となんか怒りを滲み合わせにっこりしている。


「どういうこととは?」


「だから、俺と言う者がありながら…君は…何故、他の男とお昼を食べているんだ!?というかその男誰なんだ?というか、妙に女みたいな顔をしているな?


どうでもいいが、この入学してからの1週間、君が俺に挨拶に来ないと言うのもおかしいだろ?婚約者だぞ!?何日経っても来ないからこちらから来てやったし!」

と威張っている。頭おかしいのかしら?


「え…こ、ここ、婚約者!?夜桜さん…、この人と婚約者なの?どういうこと!?」


「それは…」

と月城くんに説明しようとしたら、玲一郎が月城くんに詰め寄り

ネクタイを引っ張り、素晴らしい構図ができあがった!!



「うっ!?」

苦しそうな月城くんに対し、


「君こそ、人の婚約者に随分と馴れ馴れしいな?なんなんだ?一体?


まさか彼氏とか言わないよな?」


はあっ!!!

な、なんてことなの!?マッチしてしまったわ!!

尊い、エモい!!な、なんなのかしら?この感覚は!!まさか、月城くんと玲一郎の組み合わせがクルなんて!!


感動で泣きそうよ。


「こーたーえーろー」

と首を絞める玲一郎にハッとして私はチョップした。


「玲一郎、やめなさい。彼は月城昇くんです。私のお友達、第一号くんよ」

と言うと


「は?友達!?男の?」


「そうよ?何か文句でも?」


「いやあるわ!!沙耶華!男と友達とかお前無いぞ!!女子は女子と友達になるべきというか、君、そもそも中学まで女子校だろ!!?女友達の1人くらいいるだろ!?」


「いないわ」

とキッパリ言うと


「えっ!??本当に!?」

と言う意外な顔をしてきた。


「本当にいないけど」

と言うと、なんか可哀想な顔をされた。


「……だからって何で男なんだ?」

と月城くんを睨む玲一郎…。攻めのギラついた目にゾクゾクして私の心は燃え上がる!いいわ、もっとやれ!



「隣の席だからよ」

と簡潔に私が言うと


「は?と、隣の席て?」


「そのままの意味よ。隣の席だから仲良くして何が悪いの?バカなの?」

と言うと玲一郎は震え出し


「君…沙耶華のこと、まさか友達以上に思ってないよね?」

と問いただすと赤くなったり青くなったりする月城くん。


「あ、あの…婚約者様がいるとは知らず…。夜桜さんが友達だからお昼を一緒に食べるのは普通とか言うので」

と弁明した。


「沙耶華!!」

とこちらを睨み出した玲一郎。


「玲一郎、何を怒っているの?婚約者と言っても、親が勝手に決めた政略結婚相手として決められているだけで私達の間に恋愛感情は無いはずでしよう?


あなたも昔言っていたじゃ無い?

『仕方ないから君と婚約している。勘違いしないでくれ』とか」

と言うと月城くんはちょっと嬉しそうに


「ええー?そうなんですかあ??へえー?」

とニヤリとしたので玲一郎が


「は?ただの友達如きがでしゃばるなよ?」

と顔を寄せた。はうあっ!!いいっ!このまま押し倒して事故チューしちゃえばいいのに!と私は脳内で悶えまくった!


「玲一郎…月城くんに迷惑だから座りなさいよ。お腹が空いて怒っているのかしら?」

と言うと


「そんなわけないだろ?お、俺は他の女子からたくさん弁当をもらうから昼食には困っていない!」

とドヤ顔で言う。


「あら、そうなの?それは良かったわね」

と月城くんにオカズを分けてあげると


「おいーー!!なんでその男にオカズを分けるんだ!!?」

とキレかけている。ハッ!嫉妬!?月城くんを取られそうで?と脳内変換で楽しむ私。


「何って友達だし、月城くんはいつもパンなの。両親が共働きでお弁当を作ってもらえないのよ」

と言うと玲一郎は


「いやいやいやいやいや!!ありえない!婚約者がいる前で…!!」

とさっきからうるさいな。


「それなら明日から玲一郎もお昼を一緒に食べたら?」


「えっ!!?」

と急に赤くなる玲一郎。


「ええー!?」

と残念そうな月城くん。

いいわね。私のオカズも増えそうね、もちろん脳内の!

と私はニヤリと脳内で笑った。

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