05
「張り込みといえば中華でしょ!」
そんな言葉、今初めて聞いたよ……とよしのは思った。中華屋さんのテイクアウトを取ろうと言い出したのは真美である。
「ここの麻婆豆腐すっごく美味しいんだよ!」
「あーでも私、辛いのはあまり得意じゃないのよね……どうしようかな」
「じゃあさ、この中華焼きそばとかどう? これも美味しいよ!」
「うん。私はそれにしようかな」
「よし、決まりだね!」
真美は「中華料理定定軒」と書かれた赤いのれんをくぐり、テイクアウトの注文をする。
「大将、テイクアウトで麻婆丼と中華焼きそばを一つずつ!」
「はいよ! って、真美ちゃん!? 久しぶりだね! 元気にしてたかい?」
「うん、すっごい元気ですよ」
「最近は生徒会とかも頑張ってるんだってねぇ」
「はい! まあのんびりですけどね!!」
きっぷの良いこの店のご主人は、どうやら真美と顔見知りのようだった。
「お二人はお知り合いですか?」
「うん。実は大将、中学の時の友達のお父さんで……」
「え、そうなんですか」
「うちの娘が真美ちゃんと中学が一緒で、その時から仲良くよくしてもらってて。本当に感謝してるんだよ」
「いえいえー、こちらこそです!」
真美も色々なところに人脈を持っているものだな、とよしのは思った。店内を見渡すと、手書きのメニューやビールの広告が所せましと貼ってあり、街の中華屋さんらしい風情が感じられる。そうこうしているうちに、店の奥から、胡麻油の焦げる良い匂いが漂ってきた。
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