アボカド(鰐梨);Persea americana
緑色の葉は大きな卵形で、互生してつきます。五月頃に枝の葉腋近くから総状花序鵜を伸ばし沢山の薄黄緑色をした小さくて目立たない花が咲きます。花には花弁がなく六枚の綿毛状の花被片と、九本の雄蕊、基部に二つの橙色の蜜腺があります。濃い緑色の果実をつけます。果実の収穫は翌年十一月から十二月頃。果皮は熟すと黒っぽくなり食べごろになりますが、そのまま木の上には置かず収穫して追熟させ軟化し食べ頃になるのを待ちます。果実の成熟に十ヶ月から十五ヶ月要する上、大量の栄養分が必要であるため、アボカドの枝は隔年で実を付けます。木全体で隔年結実する品種と、枝ごとに隔年結実する品種があり、枝ごとに隔年結実する種では、木全体としては毎年実をつけます。輸出商品なので硬いうちに収穫し、船などで輸出するのがあっています。ですから、日本にはまだ緑色で固い状態で輸入され追熟して食べることになります。果実の外皮は薄く手で剥けます。果肉の中央に大きな固い球状の種子が一個あるので包丁で取り除き、残った薄黄色の果肉部を生食します。果実は脂肪分が豊富で「森のバター」と呼ばれ、野菜のような用途をもつ果実として利用されています。
バターのように栄養価が高いのは、果肉の約20%が脂肪分でそのほとんどは不飽和脂肪酸であるオレイン酸やリノール酸、リノレン酸で必須脂肪酸です。また、各種ビタミン、ミネラルを含み、特に抗酸化作用があるビタミンEが豊富です。
アボカドは原産地の中南米にとても古い歴史を持つ果実で、メキシコ、プエブラ州のコスカトラン洞窟遺跡で、アボカドの種の痕跡が発見されているそうです。そして諸説ありますが、五千年前には栽培されるようになったと言われています。その後大航海時代にスペイン人がアステカ人よりアボカドを知ったのは十六世紀に入ってからの事。スペイン語でアボカドを意味する「アグアカテ」さらにその語源はエルサルバドルの先住民である、ナワ族が話すナワト(ナワトル)語で「睾丸」を意味する「ahuacatl」から名をつけられたとされています。形がに似ているからという説もあるようですが、媚薬効果のある果実として信じられていたということもあり、アボカドは愛と生殖能力の象徴であったようです。古代の人々は既にアボカドの亜種について知識がありました。フィレンツェの絵文書には3種のアボカドについて書かれています。それによるとアボカドにはメキシコ系、グアテマラ系、西インド諸島系があります。それら3品種はすべて学術名Persea americana、つまりアボカドです。
日本に最初にアボカドの苗が届いたのは一九一五年で、アメリカ農務省のW.J.Swingle博士から贈られたそうですが、日本の寒さに耐えられず枯れてしまったそうです。アボカドには三千種類以上の品種が存在し、その中でも日本のアボカド市場で一番流通しているのが、「Hass種」のアボカドで、一九二六年にカリフォルニアでRudolf Hassという人物が開発した品種です。世界で最も流通しているアボカドであり、日本で流通しているもののほぼ全てにあたります。ハス種は未熟状態では皮が硬く害虫による食害を受けず、長期保存可能で衝撃にも強く輸送に適しているためです。1本の木から100~400個の実が取れるそうです。
アボガドを詠った俵万智さんのこまやかな趣きの短歌をご紹介します。
言葉から言葉つむがずテーブルにアボカドの種芽吹くのを待つ 俵万智
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