アマチャヅル(甘茶蔓); Gynostemma pentaphyllum

 甘茶蔓アマチャヅルはウリ科アマチャヅル属に属する多年生のツル性の植物。日本全国に自生する他、朝鮮半島や中国、インド、マレーシアなどに広く分布しています。名前の由来は、全草に甘茶アマチャのような甘みがあることからこの名が付けられました。お茶にするとほんのり甘みがあり、飲みやすいのが特徴です。


 アマチャヅルは雌雄異株しゆういしゅで、茎は他の植物などに絡み付くようにして成長し、茎の長さは約5mにもなります。葉は互生し、通常は5枚の小葉からなり、夏から初秋にかけて円錐状の黄緑色の小花を多数つけます。果実は直径6~8㎜の球形の液果で、熟すと黒緑色になり、環状の模様があります。


 生薬としても古くから使われていました。中国では絞股藍こうこらんと呼ばれ、七葉胆しちようたんという生薬として、みんの時代に気管支炎、肝炎、消化性潰瘍などの民間治療薬として利用されていたようです。当時の「中国漢方」という書物に、薬用としての利用が記載されていました。日本においても、アマチャヅルの甘味成分に関する研究が進められ、アマチャヅルの葉や茎には薬用人参と同様の有効成分であるサポニンが70種類以上含まれていることが1977年に行われた研究発表により明らかになりました。サポニンは中枢神経に働きかけて精神を安定させ、ストレス解消、疲労回復、老化防止、糖尿病、高血圧、胃潰瘍、内臓器官の働きを高めるなど、様々な効果・効能が期待できます。アマチャヅルは葉を乾燥させ、健康茶としてもよく飲まれています。平成の初め頃には「アマチャヅル茶」が大ブレイクし、いわば、健康茶ブームの先駆けとなった薬草ともいえます。


 アマチャヅルのことをアマヅラとも呼び、枕草子「あてなるもの(上品でこころひかれるもの)」で記述されているあまづらはアマチャヅルのことではないかという説があります。


枕草子「あてなるもの」


薄色うすいろに、白襲しろがさね汗衫かざみかり。削りにあまづら入れて、新しきかなまりに入れたる。

水晶すゐさう数珠すず。藤の花。梅の花に雪の降りかかりたる。

いみじううつくしきちごのいちごなど食ひたる.



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