アブラナ(油菜);Brassica cruciferous plants

 油菜アブラナは、アブラナ科のアブラナ属の越年生草本で、春に黄色い花を咲かせる菜の花はアブラナ科アブラナ属の花の総称で、西洋アブラナの種子から採取する油を菜種ナタネ油といいます。


 属名のBrassicaは、キャベツの意味を持つラテン語で、日常的に食卓でお目にかかるハクサイ、カブ、コマツナ、ノザワナ、キャベツ、ブロッコリーなどは、アブラナを改良した雑種です。それぞれ形態的な変化も見られますが、主に茎は直立して、高さは60~80㎝、葉は互生し、下部の葉の多くは羽裂します。花はいずれも四枚の花弁と六本の雄しべを持ち、その中心部に雌しべを配置する総状花序を作るのがアブラナ科の特徴で、黄色の他に白い花を咲かせることもあります。


 北ヨーロッパ、中央アジア、地中海沿岸にかけて広く自生し、日本には、弥生時代に中国大陸経由で渡来しました。古事記にスズナと記載されているカブや万葉集で茎立ククタチと詠まれるとうが立った菜はアブラナのことです。平安時代に編纂された『延喜式えんぎしき』には、漢名「蕓薹うんだい」の名で記載されています。


 アブラナの名は、この植物の種子から油をしぼったことに由来し、搾油さくゆ法は、室町時代の後半に考案され、主に行火あんどん灯明とうみょうなどの燈火用に使われたといわれています。また、江戸時代には揚げ物などの調理用にも使われるようになり、人口の増大とともにその需要は増大し、アブラナの栽培面積は広がっていきました。アブラナ栽培の最盛期は明治十年代頃で、当時の菜種油の年間需要量は百七十万石(一石は約180ℓ)を記録します。ところが、この頃、高品質、多収穫のうたい文句でヨーロッパからセイヨウアブラナ(Brassica napus)が導入されます。アブラナとキャベツの雑種とされるこの外来種は、日本の風土に良く合っていたようで、たちまち在来のアブラナに変わってしまいます。現在菜の花畑に見られるのは、ほとんどがこの外来種であるといわれています。


 春の到来を告げる菜の花は多くの歌人、俳人に詠まれ、親しまれています。


菜の花や月は東に日は西に 与謝蕪村

菜の花の中を浅間のけぶり哉 小林一茶

菜の花や渡しに近き草野球 三好達治


はてもなく菜の花つづく宵月夜 母が生まれし国美しき 与謝野晶子

振りむけばなくなりさうな追憶の ゆふやみに咲くいちめんの菜の花  河野裕子

 

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