アシタバ(明日葉); Angelica keiskei

 明日葉アシタバはセリ科シシウド属の多年草で、わが国の房総半島から紀伊半島、伊豆七島、小笠原諸島に分布しています。名は葉を摘んでも次の日には芽生えているくらい成長が早いことから由来し、学名の由来は、Angelica(アンジェリカ) は、ラテン語の「angelus(天使)」が語源、Keiskei(ケイスケイ) は、明治初期の植物学者「伊藤圭介」に由来します。


 茎は太くて、上部はよく枝を分け、高さ1mほどになります。葉は三出羽状腹葉さんしゅつうじょうふくようをなし、小葉は広卵形で、粗い鋸歯があります。葉柄の下部または全部が淡色で、袋状にふくらみます。茎や葉に濃い黄色の汁液を含み複散形花序は総苞片がなく、小総苞片は数個あります。八月〜十月にかけて白色〜淡黄色の小さな花をつけ、花の後には長楕円形の果実をつけます。


 野生のアシタバは、山や路肩、海岸線の少し陰の所にいます。島の人たちは、山のものが美味しいといって、採りに行くこともあります。野生種は、畑のものと違い、軸の部分が緑色や赤色だったり、葉が尖っていたり丸みがあったり、様々な個性を見せています。


 畑のアシタバは、播いた翌年から数えて二年ほど収穫されます。最初,晩秋の十一月ころに畑に播かれて六週間くらいで発芽します。春が近づき、暖かくなってくると急に成長します。そして梅雨ころには立派な形となります。初夏と秋が収穫の最も多い季節となり、収穫できます。まだ開ききらない若葉を、お浸しや酢の物、天ぷら、油炒めなどに、根茎は、焼酎に漬けて「あしたば酒」に利用されます。また乾燥した葉は「あしたば茶」にもなります。古くから食用にされてきており、青汁の原料としても有名です。野菜の中でもビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富な上、それらがとてもバランスよく含まれ、良質のタンパク質を含有しています。


 古くは江戸時代に本草学者の貝原益軒かいばらえきけんにより著された『大和本草やまとほんそう』にも、八丈島で栽培されている滋養強壮によい薬草として紹介されています。もっと古くには「不老長寿の妙草」として、秦の始皇帝や漢の武帝が日本までこの妙草を求めて家来を遣わしたという伝説があります。


 アシタバの葉や茎を切ったときににじみ出る黄色い汁はカルコン類という植物ではアシタバにしか含まれないポリフェノール類の成分です。カルコン類は、抗菌、抗酸化、抗炎症性作用があるといわれているだけでなく、血栓ができるのを抑えたり、内臓脂肪を解消する作用があるとも考えられ、健康維持に寄与するさまざまな効果が確認されています。


 明日葉は晩春、夏の季語として俳句歳時記でも詠われている植物です。


 明日葉や終りのなきものはなし 足柄史子

 明日葉やいのちといふはまつ青な 笹本千賀子

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