アザミ(薊);Cirsium
なお、アメリカオニアザミのように繁殖力が強く、在来植物の生育に影響を与える可能性があるため、環境省により生態系被害防止外来種に指定され、自治体によって駆除の対象となっている種類もあるので、十分注意が必要です。
和名の由来は、あざむ(傷つける、驚きあきれる意)がもとで、花を折ろうとするととげに刺されて驚くからという説があります。
アザミの草丈は50㎝〜1mで、種類によって草丈が異なります。大きく切れ込みの入った葉を放射状に伸ばし、茎葉にはトゲがたくさんあり、刺さると痛いので注意が必要です。開花期は主に五〜八月ですが、種類によって開花期が四〜十月と幅がありす。花色は、紫、ピンク、白など。花茎を立ち上げた頂部に一輪開花し、花が終わるとタンポポに似た綿毛のある種子がつきます。
アザミは、スコットランドの国花でもあり、大学やお城の紋章などデザインに組み込まれたりして親しまれてきました。中世後期のジェームズ3世の時代にはアザミがスコットランドの象徴として銀貨のモチーフになりました。また、戦争中に敵兵がアザミのトゲに阻まれて域内に攻め入ることができなかったとか、敵兵がアザミのトゲを踏んでとっさに悲鳴を上げたために敵襲に気づき、返り討ちを果たせたといったエピソードもあり、国民を侵略から守ってくれた勝利の花として称えられ、この国の象徴として王家の紋章となったと云われ、この地でアザミを見ることができるのは、庭園や公園、田舎だけとは限りません。世界的ラグビーチームや地元サッカーチームのシャツ、トップクラスの組織や企業のロゴや警察官の制服にまで、アザミの紋章はスコットランド中に溢れています。スコットランドの製品やお土産にも、人気のモチーフとしてよく使われています。
また、スコットランドの国民的詩人ロバート・バーンズが残したロマンティックな愛の賛歌や文学史において屈指の名作とされる美しい詩の中にも、アザミの花がインスピレーションの源となった作品があります。意識の大きな流れに対して詩人はあらゆる物事を回想し、しいては宇宙の神秘に対しても影響を与えて、花の香りがウイスキーと見事に調和しています。特にハイランド地方では広範にわたり群生しているアザミは古代ケルト世界では人柄と生まれの高貴さの象徴でもあります。
日本ではアザミのは棘がある厄介な野草と思われがちですが、日本各地で自生しているノアザミは肝臓に良く、体内を浄化する野草で、下処理に注意しながら、食材としても使えます。肝臓に蓄積した毒素の排出に有効な成分シリビニンを含み、特に肝機能を活性化します。また繊維質がきわめて豊富なため、便秘薬としても使われます。無機塩のビタミン群の他、若々しい体を保つのに役立つ抗酸化物質も含まれています。
詩の中でも歌われている他、俳人、歌人たちにも詠われた作品が残されています。
富士に在る花と思えばあざみかな 高浜虚子
花は賎のめにもみえけり鬼薊 芭蕉
石原やくねりしまゝの花あざみ 白雄
口をもて霧吹くよりもこまかなる雨に薊の花はぬれけり 長塚節
あざみ草その身の針を知らずして花とおもいし今日の今まで
(作者未詳/続鳩翁道話)
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