アケビ(通草、木通);Akebia quinata

 通草アケビはアケビ科アケビ属の蔓性落葉低木の一種。日本各地や中国、朝鮮半島の低山地や山野の道端の日向に自生しています。


 名の語源は、熟すに従って自然に果皮が開く様を表す「開け実」が転訛したとする説が有力。アケビの漢字の「通草」は、蔓を切って吹くと空気が通ることからで、蔓を「草」と表現しています。この暗褐色の蔓は長く左巻きに伸長し、他の木に絡みつきながら這い上がって育つので、樹齢を重ねると木のように堅くなり強靭で、籠などの細工物に用いたりしています。


 葉は小葉が五枚一組で蔓から互い違いに生じる掌状複葉が本種で、葉が三枚単位で生じる近縁のミツバアケビに対して本種をゴヨウアケビと呼ぶこともあります。小葉は長楕円形で互生し、長い柄があります。大きさは様々で、地面を這う蔓の葉は小さく、他物に絡みついた蔓の葉は大きくなります。食用にするのは春の若菜や若い蔓先で、御浸しや、お茶に使われます。アケビの若葉で作ったアケビ茶は利尿などの作用がある健康茶として親しまれています。


 アケビの花は四〜五月に新葉と共に花軸を出し、淡い紫色をした花を下向きに咲かせます。雌雄同株で、花軸の先端に数輪の雄花が房状に咲き、基部には一~三輪の雌花が咲きます。花弁はなく、淡紫紅色の萼が三枚あり、九~十月に長さ7~10㎝ほどの楕円形の果実になります。


 果実の表面は紫色で白粉を帯び、甘い香りを放ち、果皮は肉質で分厚いが熟すと縦に裂け、半透明の柔らかな果肉に包まれた黒い種子が現れます。熟すと果皮が割れて、黒い種子がたくさん入っていることが分かります。種子を覆う白いゼリー状の果肉が可食部で種子ごと一緒に食べることになりますが、種子は硬いので吐き出しましょう。可食部はほんのり甘く、滋養強壮にも効果があるといわれています。また果皮も炒め物や揚げ物などに利用できます。ほろ苦い大人の味で、利尿や腎臓炎の予防などにも効果があるとされています。


 また、つる性の茎は秋に収穫したものを輪切りにして乾燥させ、煎じたものに消炎,利尿、清熱、通経作用などがあり、膀胱炎,排尿障害、浮腫、尿道炎、月経不順などに用います。声がれや難聴にも用い、漢方処方では竜胆瀉肝湯りゅうたんしゃかんとう五淋散ごりんさん通導散つうどうさんなどに配合されています。果実は鎮痛,消炎作用などがあり胸脇疼痛,月経痛などのほか,乳汁不足,淋病,目の炎症,特に涙腺の炎症などに用います。


 アケビの暗褐色の蔓は長く左巻きに伸長し、他の木に絡みつきながら這い上がって育つので、樹齢を重ねると木のように堅くなり強靭で、籠などの細工物に用いることができます。


 アケビは秋の季語としても親しまれ、多くの俳人、歌人たちに詠われています。


日おさへの通草あけびの棚やのきのさき 正岡子規

鳥つついて半うつろのあけび哉 夏目漱石

烏飛んでそこに通草あけびのありにけり 高浜虚子


こもごもに郁子むべ通草あけびをとり食みて郁子がよしちふこの子があはれ 北原白秋


あけびのうすむらさきににほへるが山よりはまに運ばれてくる 斎藤茂吉

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