アオギリ(青桐、梧桐):Firmiana simplex

鳳凰ほうおう梧桐アオギリにあらざればまず 竹実にあらざれば食わず」


 古代中国の伝承で聖王の出現と同時に現れるといわれる鳳凰が、梧桐の木に住み、竹の実を食べることについて、『韓詩外伝かんしがいでん(韓嬰かんえい/前漢)に記述があり、今に伝わる天皇のほうの文様「桐竹鳳凰きりたけほうおうが平安中期、一条天皇の時代に創案されました。


 しかし、日本で古くから天皇の象徴で晩春に紫色の特徴的な花を咲かせる桐と、青桐は生物分類学的に科が違う植物であり、古書などでは多く混同され、清少納言の『枕草子』や紋章などでも間違えていることが散見されています。


 このように古書には混同が多く見られるため、かつては、アオギリを「青桐」、キリを「白桐しろぎり」と呼び分けたり、現在ではアオギリを「梧桐」、キリを「泡桐ここのえきり」と呼び分けたりします。他にも、「飯桐イイギリ」や、「針桐ハリギリ」など、「桐」と名の付く樹木はありますが、こちらも本種の青桐とは全く別種の樹木です。


 青桐という名は葉が「桐」に似ていて、幹が青々とした緑色になることから付けられました。中国南部、東南アジアの原産で、日本には奈良時代に渡来し、東日本の各地に野生化して分布しています。現在は、庭木や街路樹、公園樹など広く植栽されています。


 樹高10〜20m程になるアオイ科アオギリ属の落葉高木で、花は五月〜七月頃に枝先に大きな円錐花序を出して、花弁のない黄緑色の小さい雄花と雌花を混生して咲く雌雄同株です。葉は互生し、長さ10~30㎝程の長い葉柄をもち、掌状に浅く三〜五裂し、裏面には毛が生えます。果実は袋状の蒴果で、熟す前に五つに分かれ、長さ7〜10㎝程の舟形をした果皮の縁に、球形の種子が一〜五個程付いて独特な形になります。球形の種子は径5㎜程で、表面に皺があり硬く、時間が経つと黄褐色から茶色に変化します。


 青桐材は建具、家具、楽器などに用いられ、種子は、炒って食べることもでき、太平洋戦争中にはコーヒーの代用品にも利用されていました。樹皮は強靭な繊維を含むので縄などに利用され、粘液は和紙の糊料とされます。また、種子は「梧桐子ごどうし」と呼ばれる生薬として用いられ、胃痛、下痢の薬効作用があります。葉は浮腫、高血圧、コレステロールの低下などの民間薬として用いられます。


 本種の青桐は、「白樺シラカバ」、「姫沙羅ヒメシャラ」とともに、その幹や樹皮の美しさから日本三大美幹と呼ばれています。


アオギリの葉が色づくのは秋の代表的な景色であり、漢詩の中でも詠まれています。


金井梧桐秋葉黃

珠簾不捲夜來霜 

熏籠玉枕無顏色 

臥聽南宮清漏長


金の井戸の傍の青桐秋に黄葉す

珠簾捲かず夜来霜がおりる

熏籠玉枕顔色無く 

臥して聽く南宮の清漏を長く


(唐・王昌齢おうしょうれい長信秋詞ちょうしんしゅうし五首・其の一」より抜粋)


「秋雨梧桐葉落時」

秋雨の中、梧桐の葉が落ちる時


(唐・白居易はくきょい長恨歌ちょうごんか六行目」)


梧桐一葉落、

天下尽知秋、

梧桐一叶生、

天下新春再


梧桐一葉落ちて

天下の秋を知る

梧桐一葉生えて

天下新たに春再び


(明・王象晋おうしょうしん群芳譜ぐんほうふ」より抜粋)


少年易老学難成 

一寸光陰不可軽

末覚池塘春草夢 

階前梧葉已秋声


少年老い易く 学成り難し

一寸の光陰 軽んず可からず

いまだ覚めず池塘ちとう春草しゅんそうの夢

階前がいぜん梧葉ごようすで秋声しゅうせい


(南宋・朱憙しゅき偶成詩ぐうせいし」より抜粋)


 また、原爆で被爆して生き残り、平和記念公園に植えられている「被爆した青桐」が知られています。




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