アオキ(青木):Aucuba japonica

 和名の青木アオキの由来は、四季を通じて常緑で、葉のほか枝も常に緑色で青々としていることから名付けられています。ガリア科アオキ属の常緑低木。日本原産。北海道から沖縄に至る各地の森林に自生し、暑さ寒さに強く、日陰でも育つため、庭園にもよく植えられています。江戸時代、出島のオランダ商館医であったスウェーデンの医学者で植物学者カール・ツンベルクが、一七八四年に「日本植物誌」にアオキの図版を掲載し、学名がつけられ、イギリスを経由してヨーロッパに紹介され、観葉植物として、白や黄色の斑入りの葉の園芸品種が外国で人気があり、欧米の公園には広く植えられています。


 花は紫褐色で枝先の円錐花序に穂のように小花を多数つけます。果実は楕円形で赤く熟すと映えて目立つようになり、ヒヨドリなどの小鳥によく食べられます。葉にオークピンなどの苦味配糖体があり、民間薬の陀羅尼助ダラニスケの原料の一つとして配合されています。陀羅尼助は天武天皇の時代から受け継がれてきた千三百年の歴史を持つ胃腸薬で大峰山 の開祖「役行者」がその製法を教え伝え、江戸時代には、和漢胃腸薬の妙薬として民衆の中にも広まったと言われています。文楽人形浄瑠璃ぶんらくにんぎょうじょうるりの名作の一つ「義経千本桜よしつねせんぼんざくら」にも、その時代すでに陀羅尼助を売る商人がいたことが語られています。また、生葉のオークピンには膿を出させる排膿作用、消炎作用、抗菌作用があり、火であぶって、トロトロに軟らかく黒変したものを冷まして、患部に包帯や絆創膏で止めて貼るなどして用います。


 青木の花は晩春、青木の実は冬の季語として、俳句歳時記でも愛でられている植物です。


 蔵町の蔵の奥なる青木咲く   蓑谷皐一

 雪降りし日も幾度よ青木の実  中村汀女




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