#15 エルフの傲慢② [マイ]


 ガイルから事情を聞き私は冒険者ギルドの外に出る。


 すると腕を掴まれ、抵抗しているセカイ君の姿が目に入った。


 私は咄嗟にその相手を殴りつけようとしたが、体が動かない。

 本能が恐れていた。


「や、やめてください」

「だから、私はあんたを保護しに来たのよ。なんで抵抗するのよ」


 その女はエルフだった。

 しかもただのエルフではない。


 圧倒的強者だ。


 私は目に魔力を集める。


 すると、あり得ない光景が広がっていた。


 見たこともない数の精霊がセカイ君の周辺を漂っている。

 セカイ君だけじゃない。エルフの周囲にも多くの精霊がいる。


 セカイ君の周りを8人。

 エルフの周りを5人。


 それにエルフの方の精霊はセカイ君の周りにいる精霊に比べて魔力量が段違いで多い。


 精霊一人だけ見てもB級以上の実力があるだろう。

 彼女自身は言わずもがなだ。


 私は冷静になり、エルフに向かって話しかける。


「申し訳ございません。セカイ君が困っています。その手をおはなしください」


 エルフは私の方を見て目を細める。


「ハーフエルフは黙っていなさい。私は彼と話しているの」


 エルフの女は私を睨みつけ威圧してくる。

 威圧してきた魔力だけでもわかる。私は彼女に絶対に勝てない。

 しかし、ここで逃げるわけにはいかない。


 私はエルフとセカイ君の間に割って入る。

 エルフは警戒したのか、セカイ君の手をはなし後ろに下がった。


「は?混血のお前が純血の私にたてつく気?本気で殺すわよ」

「ただ殺される気はありません」


 エルフの周りにいる精霊からも敵意が向けられる。


 すると、セカイ君の周りにいた精霊が一人彼女の方へと飛んでいく。

 エルフは精霊から何かを聞いているようだった。


「はっ、なるほどね。あんたそのヒューマンに気があるんだ」


 私は何も言わなかった。

 セカイ君の表情には困惑が浮かんでいた。


 エルフはセカイ君に話しかける。


「セカイ、気をつけなさい。この女は屑よ」


 私は拳を握る。


「何も知らないあんたに教えてあげる。ハーフエルフがいかに卑しい存在かを」


 私はつばを飲み込む。

 やめろ。


 彼に何も言うな。


「ハーフエルフは、エルフと別の種族から生まれた子。

 その中でもエルフとヒューマンから生まれた子が最も多いわ」


 エルフは話を続ける。

 私は呼吸が荒くなっていく。


「見分けるのは簡単。エルフに比べて魔力の質が劣っているから。

 単純にエルフに比べて弱いのよ。でもね、ただそれだけで同じ血が通う者を見下したりしないわ。

 私達純血のエルフが混血を嫌うのはもっと別の理由があるの」


 やめて。


「ヒューマンに恋をしたエルフが何をするか知ってる?」


 これ以上しゃべるな。


「ヒューマンに恋をしたエルフは、性欲が異常なまでに強くなるの。ヒューマンは短命種でエルフに比べて寿命が短い。だから生きているうちに子を成そうと生殖本能が強くなるらしいわ」


 私は違う。


「効率的に営みを行うため彼らはヒューマンを拉致して森の奥に監禁。そして毎夜相手を犯し続ける。だけどエルフはただでさえ子を成しにくい種族、ましてや種族違いなんてなかなか子はできないわ。だから、寿命でなくならないようエルフは霊薬を相手に飲ませる」


 私はクソ親父とは違う。


「エルフにしか作れない秘密の霊薬は、老化を止め寿命を伸ばす効果がある。しかしその霊薬は依存性があり、定期的に飲まないと死よりも苦しい症状に死ぬまで悩まされると言われているわ。つまり愛する人を拉致し監禁し薬漬けにして犯す。まさしく狂人の諸行よ」


 クソ親父みたいにはならない。


「狂ったエルフは毎夜相手を犯し続ける。何日、何十日、何百日、何年、何十年、何百年も。いつしか手段は目的となり、子を成しても欲望は治まることはない。こうして高潔なエルフはただの獣と成り下がるの」


 うるさい。


「果たしてそんな子がまともな教養を持ち合わせていると思う?私は到底思わないわ。当然ヒューマンの血も混じり、エルフの力は従前に扱えない。弱くて狂った穢らわしい存在。それがハーフエルフよ。そしてハーフエルフが存在する事こそ彼女達が背負う原罪」


 うるさい、うるさい。


「だからハーフエルフはエルフから嫌われているの。だって私たちの恥そのものだもの。そうして迫害された彼女達は、劣等種のヒューマンに混じり生活をする。全く穢らわしい。これ以上エルフの恥を増やさないで。森の奥で誰にも愛されず孤独に死ぬべき存在なのよ。お前は誰にも愛されないし誰も愛するな」


 私はクソ親父みたいにならない。


「このハーフエルフはそんな狂人の血が混じっているの。そして、彼女があんたに何をしたか知ってる?」


 違う。


「たった今、精霊から聞いたわ。相談されたいがためにあんたを苦しませていたのよ」


 私は彼を愛している。


「あんたをひいきして周囲から孤立させ、わざと仲が悪くなりそうなパーティにいれたの。全ては相談されて仲良くなり、あんたを自分のものにするためにね。

 こいつを屑と言わず何というの?やはりハーフエルフは頭がおかしい。好意を寄せている相手をわざと苦しませるなんて」


 ダマレ。


「お前もお前の親も全員汚らわしい獣よ。魔獣と違って駆除する価値もない。全員、自殺してくれないかしら」


 コロス。


「黙れ」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【ステータス】


名前:ヤヨイ・キサラギ

種族:エルフ

レベル:99


印象:興味


体力:5094

攻撃:7070

防御:4530

俊敏:4821

魔力:7005

聖力:4510

気力:7089


備考:十二英傑キサラギ家とヤヨイ家が結ばれてできた子。5人の精霊を使役している天才。

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