第4話 京姉を取り戻した日
俺の両親は、今のパーティーに加わって暫くして死んだ。
薄情な奴…そう思うかも知れないが、まだ旅立ったばかりで帰る事は出来なかった。
悲しい…そう思った反面、これで京姉の事を反対する人間が居なくなる…そう思い安心してしまった。
俺は汚い人間だ。
大好きな人で頭が一杯で…親の事なんて考えて無かった。
親が死んで村長が畑や家を処分してお金を送ってくれた。
だが…足りなかった。
レベルが欲しかった…もっとお金が貰えるように力が欲しかった。
だから『気にならない』
確かに幼馴染の3人は美人だけど…俺の好きな人じゃない。
勝手に勘違いしてカイトはマウントをとっていたけど…
3人は俺の好きな人じゃない…
幾らでも馬鹿にして良い…だから強さをくれ…
強い奴を狩れる力をくれ…
見せつけられても『どうとも思わない』
お前の親父に…俺は一生のトラウマを植え付けられた。
いや…親戚中にだ…
好きでも無い女との情事なんて幾ら見せられても堪えない…
馬鹿にして良い…蔑めよ…だから力をくれ…
『悔しくないから』
勇者パーティを離れてからも狩りを続け…故郷を目指した。
あの日した、あの約束...京姉とじゃない…
セクトールとの約束…今なら果たせる。
◆◆◆
ようやく村についた…
「リヒトくん…お帰り」
泥だらけで京姉が微笑んでくれた。
「京姉…後でね」
「リヒトくん…」
愛しい、抱きしめたい…
だが、それは後だ。
先にしないといけない事がある。
「セクトールおじさん…ハァハァ…溜まった」
「なんじゃ、リヒト…そう言えば今月の仕送り銀貨3枚がまだだが、どうしたんだ?」
「溜まった…約束の金貨30枚溜めてきた…だからハァハァ京姉を俺に譲ってくれ…」
「お前…あのクズ女に…本気だったのか…俺以外引き取り手が居なかったクズなのに…毎月金を送らせていれば諦める…高額な金を吹っ掛ければ諦める…そう思ったのに…俺はお前の親に頼まれて、彼奴を後添いにしたんだ...諦めさせるために」
「ハァハァ~、そんなのはどうでも良い…金は溜めたんだ…寄越せ…姦淫にならない様に、奴隷契約書も用意した…早く寄越せ…」
「参ったな…仕方がない…ほら書類にサインしてやるよ…あと金は30枚は要らない、全部要らないと言えればカッコ良いが…カイトの持参金も底をついて貧乏なんだ…半分の15枚で良いぞ…ほら書いた…これで良いか?」
「ああっ構わない…そら約束のお金だ金貨15枚と銀貨3枚だ…」
「ああっありがとうな…」
用事は済んだ…
俺は急ぎ京姉の元に向かった。
◆◆◆
「ああっ左肩が痛い…なにこれ…そんな」
「京姉…俺頑張って京姉の事買ったんだよ…さぁこの村を出ていこう」
「そう…」
「うん、さぁ行こうか」
「うん…」
『今度はリヒトくんが…するんだ』
「どうしたの?」
「ううん、何でもない」
『知られたくなかったな…』
「さぁ行こうか…」
「うん」
俺はこの日ようやく好きな人を助け出した。
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