第3話 京子さん
俺には凄く好きな人が子供の頃から居たんだ。
名前は京子さん…俺にとっては遠縁でお姉さんみたいな人。
名前が日本名なのは大昔の転生者から名前をとったようだ。
髪が白くて神秘的で…色白で、線が細くて、凄く儚げな美人。
姉の様に思っていた。
あれがこの世界での初恋だと言える…
だが、子供の頃から憧れていて…両親に京姉と結婚したいと幼い時に言ったら…
いつも優しい母さんが鬼の剣幕で怒った。
「あんな薄汚れた女、相手にしたら駄目!ちゃんとした人にしなさい!」
生まれて初めて怒られた…
逆に父さんの方は微妙な顔をして…
「お前、京子ちゃんが悪くないのは知っているだろう…」
「だけど、貴方…」
「それにリヒトも子供だから言っているんだ…大人気ないぞ…」
「そうね…リヒト母さんが悪かったわ」
京姉の親は死んでいて…親類をたらいまわしにされていた。
この世界は昔の日本に近い…だから片親が居ないだけでも非難される。
多分、そのせいなんだろうな…そう思っていた。
いつも寂しそうな京姉…おどおどしていて、人の顔色を見ながら話すし...本当に薄幸の美人に見えた。
何時しか…俺は彼女を幸せにしたい…そう思っていた。
俺が8歳の時だ…
この世界の成人は15歳…
8歳はまだ子供だが、そろそろ親たちはあたりをつける。
勿論、婚約なんてまだ先だが…家柄や畑…将来はどっちの家に入るのか…子供とは関係なく勝手に親が考える。
父さんにお前は誰か好きな人はいるのか…そう聞かれて…
「年上だけど京姉が好きだ…」
そう伝えた…
傍に居た母さんは何も言わなかった。
「少し、外で話そうか…」
父さんに連れられ…近くの川まできた。
「あの子は諦めろ…」
「何故、そんなに反対するんだよ! 京姉は凄く良い子だよ」
「それは俺も知っている…これはお前を傷つけたく無いから…話す気は無かったんだ、仕方がない」
そう言うと父さんは口を開いた。
「彼女の両親が早くに亡くなったのは知っているな?」
俺は頷いた。
「彼女はな…親戚中の男に抱かれている…だから諦めてくれ」
子供でも『抱かれている』その意味も解った。
「何故…そんな」
「彼女が悪い訳じゃない」
そう言うと父さんは話し始めた。
「京子ちゃんが親戚中をたらい回しにされていたのは知っているだろう…このご時世、子供1人育てるのは大変な事だ…子供のお前にはまだ解らないだろうがな…普通なら孤児になっても可笑しく無い…だが京子ちゃんには美貌があったから…下心がある男が養女に引き取ったんだ…」
「それじゃ京姉は悪くないだろう…」
「その通りだ…これが表に出なければな…まず、親類の男は抱くだけ抱いて飽きると次の家に養女にだした…だから届けを見るだけで、彼女がどう言う素性か想像がつく…それにまだ若い彼女を抱く夫が許せなくて、その妻が『養女にしてやったのに夫を寝取られた』そういう騒動が何回も起こった…誰が考えても解る、養女として引き取られた立場の弱い彼女に、その関係を断る事なんて出来ない。だが、男だってただ、おもちゃにしたいから引き取っただけだから一切庇わず『誘惑された』『関係を迫られた』そういって彼女に責任を押し付けていたんだ、家族で揉めたくないからな…彼女が体が弱いのは、何回も堕胎したせいもある…なぁ…京子ちゃんは…俺は気の毒だから…それには加わらなかったが…お前の叔父さん…更に言うならお爺ちゃんにも抱かれている…そしてそれが親戚全員に知られていて女衆からは汚い女…男衆からは…使い古し…そう言われているんだ…彼女は悪くない…だが諦めてくれ」
京姉…
「うわぁぁぁぁぁーーー」
「今は好きなだけ泣いて良い…父さんは先に帰っているからな…」
頭の中が真っ白になった。
◆◆◆
それから、暫くしてだ…
ようやく京姉の事を忘れて生活していたのに…よりによってカイトの父親セクトールの後添いとして嫁いできた…
「京姉…」
寂しげな笑顔をまた見てしまった…
「リヒトくん…また近くにきたから宜しくね」
今度もまた京姉は…酷い扱いを受けていた…
今の俺には助けられない…何時か必ず助けるからね…
泣きながら…俺はそう決意した。
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