時計虫
bbキャンセル君
体験エピソード
時計虫。
それは、時計の針を歪ませる力を持った虫。
彼らが来たら、周りの時間が歪む。
例えば、現代の部屋に時計虫をが現れるとその部屋は
過去か未来の部屋になる現象が発生する。
姿は普通のテントウ虫と変わらない。
でも強いて違うところをあげるなら、
背中が時計の盤面を背負っているみたいな、不思議で不気味な虫。
それは比喩だけど、実際は時計の盤面模様を描いている。
それは虫それぞれ違う。
人間で言うと、ファッションみたいだろう。
個性を表す、シンプルな様で面白い文化。
カッチカッチ
自室の時計の針が、反時計回りに回り出す。
噂をすれば・・・・時計虫だ。
カッチカッチ
時計の刻む音と共に、部屋の世界が懐かしいものへと変わる。
今とは嘘みたいに、生きている自然に囲まれた田舎。
外の景色、中の景色も過去のもの。
どうやら、過去に戻す時計虫に当たったようだ。
扉にもたれかけ、どうしたものかと、頭を押さえる。
「京子ちゃん。お昼の時間よ」
懐かしいおばあちゃんの声が聞こえてくる。
私が出てこない事に、不信に思ったのか
階段を上ってくる。
やめてくれ・・・・・。
コンコン!
「京子ちゃん。どうしたんだい?お腹減ってないのかい?」
返事をしなかった。
「・・・・・そう。なら無理には言わないわ。何か悩みごとでもあるの?」
優しい声が私の耳を貫く。
痛い・・・溢れ出る後悔をえぐる様だ。
「言えないのね。一人で抱え込んではだめよ?」
知るか。
そんな事・・・・。
トンッ。
扉の向こうでおばあちゃんがもたれかけて、言った。
「京子ちゃんあのね私・・・ずっと側にいれなくてごめんなさい」
「でもね・・・・貴方が側にいてくれなかった時考えたの、きっと私離れして
楽しく青春しているって」
クスクスと笑う・・・・ババアが!
ポロリと涙を落とす。
「だから、早く忘れて笑いなさい。きっとその後悔はすぐに消えるはずよ」
「おばあちゃん・・・・ごめんね。側にいれなくて」
「ふふっ、今こうして会えてるじゃない!それはきっと・・・・」
「ッ!!。おばあちゃん!」
ドアを開けると、誰もいない。
景色も・・・・懐かしいからなじみ深いのに変化した。
いや・・・元に戻ったと言うべきかな。
「・・・・・・・」
時計虫がこの場から去った。
そよ風が吹き、カーテンが揺れる。
たとえそれが時計虫が生み出したものでも構わない。
良いデータが取れた。
二重の意味で満足感の笑みを浮かべる。
早速ノートを広げペンを走らせた。
時計虫・・・・その場の時を歪める虫。
一つ謎めいた事があり、それは実際に時を戻したり進めたりしているのか
それとも再現なのか。
不明。
まだ過去の現象にしか会っていないため、断定はできない。
未来への針を動かす時計虫にも会ってみたい。
異生物学者
――――おまけ・彼女の過去――――
おばあちゃんっ子の私が不在の時
おばあちゃんは病院でひっそりと亡くなった。
私が、友達と遊んでいた間に、死んだ事が悔しくて。
最後にありがとうさえ伝えられなかった。
本当にガキみたいな発想と自分で笑いながらも
心の中では、消えない傷となった。
時計虫 bbキャンセル君 @aiumi
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