第14話 夏休みスペシャル 読者投稿企画「実体験!私のちょい不可思議」三選

 今回は、読者から寄せられた不可思議投稿を三つご紹介!

 スキマがのぞく時間に、ふらっと読んでみては?


 ①○○谷バス停のぺス(P.N.やろうべぇ)

 うちの近くにあるバス停には、「ぺス」と呼ばれる犬のロボット?が置いてありました。

 あの創業者夫婦が怪しいCMやってる通販会社の充電式ロボットの柴犬モデルなんですが、いつから置いてあるのか、白い毛並みはすでに雨土で汚れ、口の開閉機能は錆びついて動かなくなってます。

 でも内部基盤はまだ生きているようで、撫でたり呼び掛けたりすると、ガッサガサの声で「ワン」と鳴いたり、創業者夫婦の下手くそなデュエットをブツブツ途切れながら垂れ流したりしています。

 私は普段利用しない路線なのであまり知らないのですが、バス待ちのお客さんからは人気があるらしく。学生さんやお年寄りが面白がって遊んでいたようです。


 でもそのぺス、その後バス会社さんが「運航の妨げになる」と、撤去したそうなんです。

 しかも乗客から乗降の邪魔にならない案だの管理維持の案が多数寄せられていたのにもかかわらず、です。

 理由が気になって、そのバス会社に勤めている運転手(夫の友達)に聞いてみたところ、こんな答えが返ってきたそうです。


「いやぁ。あれ地域振興のためにも残しといてくれって町内会からも要請あったんだけどねぇ。流石にあれ見たら元の位置にとはならんよ。」


「こないだここら辺、台風通って暴風雨だったろ?その時にうちの社長が、こっそりぺス事務所に持ち帰ってさ。メンテナンスも兼ねて、社員何人かと中身開けてみたらしいんだよ」


「そしたら、中どうなってたと思う?」


「なんと中身バッテリーどころか電子?ってか電力いりそうなもの一切入ってなくてさ。」


「代わりに胴体部分一杯に人の毛が丸まったボールみたいなのが入ってて」


「そのボール解いたら人の爪がボロボロ、しかも中には血や肉が付いてたやつもあって」


「その時点で女性社員は逃げ出すわ、言い出しっぺの社長も急に用思い出して逃げるわで、おおわらわ。」


「でもそこにいた総務の課長さん?かなんかが『こういうのは途中でやめたらそっちのが危ない』とか言い出して最後まで解体しきってさ。」


「そしたら中心部から出てきたのが、折りたたまれた和紙。」


「広げてみると60センチぐらいの人型になってさ。表は全身びっしり。裏も肩口?ぐらいまでびっしり人の名前が書いてあってさ。」


「それ見たバイト経理の女の子が、あっと声上げて慌てて定期購入者の名簿調べたら、何人かヒットするのがあったらしい。」


「で、ここでこれ以上の詮索はやめようって話になって、ぺス一式近くの神社でお焚き上げしてもらった。これが真相らしいぜ。」


 ちなみに現在、通販会社の公式サイトからは例の犬ロボットは削除されています。


 編集部後記

 例の通販会社に関しては「新手のカルト宗教ではないか」と前々から編集部にタレコミが寄せられていたが、売り方が怪しいだけで商品自体はそこら辺の雑貨屋でも購入できるシロモノという事もあり、調査が後手に回っていた。

 今回の投稿を機に調査してみたところ、例の犬ロボットの説明書を入手したので、ここに編集部で怪しいと思った文章をいくつか紹介しておく。


「警告:ワンちゃんのおなかは『絶対に開けないで!』二度どお喋りできなくなる上、重大な事故につながる危険があります。ワンちゃんに不具合が起きた場合は、有償治療にて対応いたしますので、『絶対に中身を開けないでください』」


「携帯電話を使って充電いたしますと、機種によっては着信がある場合がございますが、異常ではありません。そのまま通話をお切りいただくと解決します(通信費は発生いたしません)」


「こういうときは:ワンちゃんの電源が切れない・電源を切っても勝手に動く→ワンちゃんの喉仏付近に、内部リセット用のボタンがございますので、そこを30秒~5分間、強く押さえてください。自動的に電源が切れます。再起動する際は、いつものように頭頂部をぽんぽんと二度軽く撫でてください。」


「※ただしこの方法で電源を止めますと、ワンちゃんが今まで学習してきたデータがリセットされる恐れがあります。それを避けたい場合は、バッテリー切れまでワンちゃんを動かすか、有償治療窓口へご相談ください。」


 なお、現在この通販会社は、組み立て式金属パズルキューブを「長年かけて遂に完成!話題の手のひらサイズキューブ!」として売り出している。(記者の心当たり的には、なんかの被害が出ないことを祈るばかりである)


 ②住民名簿事件(P.N.牛のみっちゃんおやつ時)

 これは不可思議というよりは笑い話の類なんですが……。


 うちの村役場にも、いわゆるDX化の波が来まして、それに伴って住民台帳の電子移行作業を「手打ちで」()行っていました。


 すると住民名簿の中に、一つ不可解なページがありまして。


 連番は前や次のページと繋がってるのに、内容が何も書かれていないんです。


 おやっと思って前や次のページに記載されている名前を確認しても、異常なくて。


 実はこの村、昔っから「かみそめ」と言って「神様に気に入られた人がいなくなる」という伝承がありまして。実際神隠しみたいな行方不明事件も多発してるんです。

 この役場に勤めて長い上司に相談しても、「ここじゃそんなこともある」と死んだ目で返されるばかり。

 でも空白のページほおっておくわけにも……。と私が途方に暮れてたところに、他県から来た新人たちが助け舟を出してくれました。


「もしかしたら、凍らせたら元に戻るかもですよ。ほら、この台帳ができた頃って、『消しゴムで消せるボールペン』みたいなの、流行ってましたし。」


「文書庫もエアコン無くてあっちーし、多分熱で消えてるのかもです。」


 私は藁にも縋る思いで台帳を冷凍庫にぶち込み、金曜の業務を終了。


 するとどうでしょう。週明けに出勤すると名簿欄の空白に、住民の名前が浮き出てるじゃありませんか。


 私は安堵半分ともし気づかずにスルーしてたらの恐怖半分で残りの入力作業を終えました。


 ただこの話はここからです。


 後日、他の仕事で例の空白に記載があったおばあちゃんが一人暮らしの家に高齢者安全確認訪問で行ったんです。そしたら。


「暑い中ご苦労さん。これ、使うかどうかわかりませんけどどうぞ。」


「こないだ手紙来たばっかりなのに、間違えて二本送ってきたんですよ。」


「うちは鉛筆派なんで使わんし、良かったら二本とも持って帰り。」


 と、ボールペン二本貰ったんですよ。

 そのボールペンのデザインが、全く一緒。


「祝!百歳おめでとうございます。 ○○TV株式会社。 平成○○年」


「祝!百歳おめでとうございます。 ○○TV株式会社。 令和○年」


 ちなみに平成の方は、こすって消せるタイプのボールペンでしたね。


 ⓷お盆の出来事(P.N.みゅ~こまま)

 うちの長男が夏休みの工作した時に起きた出来事です。

「今年の夏休みの工作、精霊馬にするから」

 長男がこう宣言したのは夏休みの初日。

 精霊馬、皆さまお分かりの通りあれです。胡瓜と茄子に割りばし刺しただけ。

 つまり夏休みの工作サボりたい子供たちの、ベタな逃げ道。

 私はそんな手抜きじゃなくてもっと科学実験とかにしなさいと説得していましたが、長男にしては珍しく意固地に「これがいい」の一点張り。

 最終的に夫の「まぁやらせてやりなよ」の一言に折れ、しぶしぶ私も承諾しました。

 しかし、息子が作り始めたのはまさかの代物。


 なんと胡瓜を飛行機の胴体に見立て、そこへ堅い野菜でパーツを成形。


 本格的な航空機型精霊馬だったのです。


 しかも「かっこよくする」とか言って、やっているゲームのアイテムなどをわざわざ小さく作って張り付けたり、終いには乗る人の衣装まで作り出す始末。


 これはそんなおふざけをして作るものじゃないと言い聞かせても、またも長男は一点張り。


「だってこっちのほうが、ひいおじいちゃん好きなんでしょ?夢で言ってた。」


 私はこれを聞いてびっくり。

 実はうちの曾祖父は元海軍パイロット。しかも勲章いくつか貰っているレベルの凄腕だったそうで。

 でも、そんな話は一度も息子にしたことないんです。(あとで祖父母に聞いたら、二人もそんな話をしたことはないそう。)

 普段からこのサイトの記事を愛読している私。これはもしかしたらと思い、ダメもとで長男にこうお願いしてみました。


「明日からひいおじいちゃんの夢見たら、ママにお話ししてくれる?覚えている範囲でいいから。」


 すると早速翌日、夢の内容を教えてくれました。その内容は……。


「夢にひいおじいちゃんとおばあちゃんが出てきて大喧嘩してた。」


「おばあちゃん。『あんな狭い飛行機に私乗せる気か』『昔っから思ってたけどあんなもんのどこがかっこいいんだ。乗ったら帰ってこないから嫌いだ』とか、散々言ってた。」


「それに対してじいちゃん『めちゃくちゃかっこいいだろ!』とか『これが浪漫だ!』とか『ワシはちゃんと帰ってきただろ!』とか反論してた」


「僕はおじいちゃんがもう一回飛行機乗りたいの知ってたからおばあちゃんに『かぼちゃの馬車とドレス作ってあげる』って言ったの。」


「そしたらおばあちゃん喜んで『それじゃあお願い。ドレスは赤いのがいい』だって。」


「お母さん、この近くに赤いおやさい売ってるスーパーってある?」


 詳しく問いただすと、どうやら一か月前から、曾祖父が夢に出てきて、長男にお願いしてたらしく。

 そして祖父母曰く、曾祖父が曾祖母に黙って何かやらかして怒られる、こんな感じの夫婦だったそう。


 これで確信した私は、ようやく長男の精霊馬作りを全面的に応援することを決意。

 なるべく赤いサニーレタスをスーパー回って探しまくり、カボチャも数種類用意。

 そこから息子に見繕ってもらい、白馬も大根で製作。

 何とかお盆前日、かぼちゃの馬車と飛行機、そして二人の衣装が完成しました。


 そしてお盆終わり、息子がまた夢を見たと言います


「またひいおじいちゃんとひいおばあちゃんが喧嘩してた。今度は作った衣装着て。」


「おじいちゃんは飛行機乗って帰るって言ってるのに、おばあちゃんが『かぼちゃの馬車で二人乗りして帰る』『ゆっくり帰らなきゃいけんって知らんのか』って言い合ってた。」


「今度はひいおじいちゃんが負けて二人でかぼちゃの馬車乗って帰っていった。」


「おじいちゃんがエスコートしてて、おばあちゃんめちゃくちゃ照れてた。」


「そして乗るとき、ありがとうって僕に言ってくれた。」


「あと、みんなによろしくって。その後おじいちゃんが来年のリクエストしようとしたけど、おばあちゃんに頭はたかれて帰っていった。」


「お母さん。来年の工作も精霊馬にしていい?」


 私は喜んで承諾。祖父母はこの話聞いて少し涙ぐんでいました。

 以上。我が家のお盆で起きた、不可思議でした。


 ※当編集部では、引き続き読者の皆様からの不可思議話を募集しております。採用された方には謝礼と景品プレゼント!どしどしご応募ください!

(基本的に採用連絡は差し上げません。但し内容や真偽、編集部が投稿者への対応が必要と判断した際は、記載連絡先に通知する場合がありますので必ず記述お願いいたします。)

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