67 独り占め

 通学路をひとり歩きながら、桜並木を見上げた。


 春の訪れを感じさせる変化はまだない。一年前、受験で百合ヶ峰を訪れたときと変わらぬ姿がそこにはあった。


 一月経たぬ内に、これが満開に咲くなんてどこか信じられない自分がいた。それは同時に、この満開の桜並木を何度も行き来できる、百合ヶ峰生徒の特権を行使できる未来への楽しみでもあった。


 辺りに人通りはない。


 なにせまだ七時半。多くの生徒が、ようやく家を出る時間だ。徒歩圏内の御影にいたっては、布団から出てすらいないかもしれない。


 いつもはこんなに早い登校ではない。なにか特別なことがあるわけではないが、特別なことをしたくなった。胸を満たす充実感が、この背中を押したのだ。


 急ぐことはない。


 ゆっくりと歩を進めながら、澄んだ朝の空気を取り入れている。後ろから近づいてくる足音に、心の手でお先にどうぞと指し示した。


 ふいに視界が暗闇に覆われた。


「だーれだ?」


 耳元をくすぐる可愛い声音。人の手で目隠しをされたのを察した。


 女の子にされたい悪戯ランキング、第三位を仕掛けられたのだ。


 まさにこんな青春を送りたかっただけの人生だった。一度目の人生はそんなことをしてくれる相手どころか、誰にも相手にされてこなかったので、この可愛い悪戯が嬉しくてたまらなかった。


「百合だな」


「え、なんでわかったんですか?」


 後頭部から驚きの声が上がった。


 視界が開かれたので振り返ると、きょとんとしながら胸元で手を重ねている百合と、ポカンとしながら両手に鞄を持っている里梨がいた。


 どうやら里梨が鞄を持つことで、百合の両手をフリーにしたようだ。


「マナヒー、私たちのこと気づいてたの?」


「いや、まったく気づいてなかった」


「でも百合だってすぐに答えたじゃん」


「わざと外して、里梨のふくれっ面を見るつもりだったんだ」


 あえて違う女の子と間違えることで、リスの頬袋のように膨らんだ顔が見たかったのだ。当ててしまったことで、アテが外れて残念だ。


「おはようございます、愛彦くん」


「おはよう、マナヒー」


 でも朝から仲睦まじい推しふたりを見られたことは、それを上回る喜びだった。


「おはよう、ふたりとも」


 そうして百合を挟むような形で、俺たちは横並びになった。通行の邪魔でしかないが、周りは誰もいないから許してもらおう。


「いつもこんなに朝早いの?」


 前のめりになりながら、里梨はこちらの顔を覗いてきた。


「いや、いつもはこんなに早くない」


「なにか今日はあるんですか?」


「そういう気分だったってだけさ」


 百合の問いにそう返す。普通なら訝しまれるところだが、ふたりは納得した顔をする。そういう気分になった理由が、なんとなく通じたのだろう。


「ふたりはどうしたんだ? 百合はともかく、いくらなんでも早くないか?」


「百合はともかくって、どういうことかなマナヒー?」


「朝は弱いって、自分で言ってただろ?」


「それはそうだけどさ」


 悔しそうに里梨は眉根を寄せた。


 そんな里梨をおかしそうに百合は一度笑う。


「たしかに起こしてあげても、布団から出るまで十分はかかりましたもんね」


「年寄りじゃないんだから、五時半起きなんて早すぎるんだよ」


 バツの悪そうにしながら、里梨は唇を尖らせた。


「なんだ、昨日は百合の家に泊まったのか?」


「うん」


 はにかみながら里梨は頷いた。


「今日はさ、一緒に登校しようって決めてたから。百合に起こしてもらえば、寝過ごすこともないしさ」


「お弁当と朝ごはんを一緒に作ったんですよ」


 宝物を見せびらかすように百合は語った。


 そんなふたりを見て微笑ましさを覚えながら、同時に羨ましい気持ちが湧いてきた。


「朝から彼女に起こされて、一緒にお弁当作って、朝ご飯を食べてとか。ほんと羨ましい青春だな。早く俺も、そんな彼女が欲しいもんだ」


「惜しいことしたね、マナヒー」


 からかうようでありながら、里梨の口調は気遣うものだった。


「後悔してないの?」


 なんのだ、とは聞き返さない。


 百合を彼女にできる機会を自分から手放した。そのチャンスを自分でふいにした。


「そうだな。里梨が今まで百合としてきたここと、これからするであろうすべてのことをしたいだけの人生だった」


 一度は自分でその役目を託しながらも、自分のためにそれを返してきた。期待だけを一度持たせてしまったと、後ろめたさがもしかしたら里梨にはあるのかもしれない。


「でも、後悔はない」


 だからその後ろめたさは必要ないと、ハッキリと告げた。


「里梨が後ろめたさを抱えながら百合と付き合ってきたように、あのまま百合を受け入れたら、俺も同じものを抱えていたと思うから」


「なんでマナヒーが後ろめたさを感じるの?」


「百合がちゃんと里梨と向き合えば、こうなるって信じてたからな。その道を示さないで欲望のまま百合を自分のものにしたら、きっと悪いことが起こる」


 その雷を落とすであろう主を見上げるように空を仰ぎ見た。


「悪い行いには悪い結果がついてまわる。それが最近、痛いほどわかったからな」


「どんな痛い思いをしたんですか?」


「百合の彼女は、本当は俺の彼女になるはずだった。悪魔の囁きに耳を傾けたばかりに……はぁ」


 心からの悔恨を吐き出すと、ふたりは堪えきれずに笑い出した。


「惜しいことしましたね、愛彦くん」


「お互い残念だったねー、マナヒー」


「本当に、本当に惜しいことをした……マジで残念だ」


 顔を覆い隠しながら、ただただ自分の罪を悔いた。


 できることであれば、あの日に戻ってやり直したい……とは思わない。それはこのふたりを見て、心から思ったことだ。


 幸せそうに笑うふたりを見て、これでよかったんだと。


「なにより約束しただろ?」


「約束?」


 里梨が首を傾げた。


「次もまた三人で遊びに行こうってさ」


「あ……」


 小さな息を漏らすように、里梨は口を開いた。


 あの楽しい一日をもう一度。いや、これから何度だって繰り返したい。


「元鞘に戻って貰わんと、それが叶わんからな」


「そう……だった。約束したもんね」


 約束の尊さを噛み締めながら、潤んだ里梨の目元が綻んだ。


「そもそも俺がキッカケで起きたすれ違いだ。俺が男としてしっかりしてたら、こんなことにならなかったのにな」


 後悔はない。あるのは反省だけだ。


 ヒィたんの家に男が上がり込んで、死の苦しみを味わった。なのに浮かれた俺は、百合の家に上がり込んだ。


 里梨がどれだけ許してくれても、そんな自分を許せなかった。


 自分の至らなさでふたりに辛い思いをさせたと思うと、二度許せない。


「わたしは、今回こうなってよかったです」


 すると百合が、満足そうな微笑みを向けてきた。ただ励ますためのものではなく、心からそう思っているように。


「今まで言葉にしなかったもの、見えないように隠してきたもの、お互いの気持ちが全部わかったから」


「うん。ちゃんと伝えて、教えてもらった。だから後ろめたさはもうない。大手を振れないのは変わらないけど、この気持ちに胸を張って百合と一緒にいられるようになったから。――だから、ありがとう、マナヒー」


「ありがとうございます、愛彦くん」


 俺の反省へ、差し出されたのは感謝だった。


 たしかにふたりの関係は、なにかの拍子で崩れ落ちる歪さを孕んでいた。今回のようなことがなかったとしても、いつか違う形で崩れていたかもしれない。だから一度その歪みごと崩したことは、ふたりにとってよかったようだ。


 今度は歪むことなく、関係を築き直せたのだから。前よりもっと美しい花が咲いたのだ。


「そしてわたしたちのことに巻き込んじゃって、ごめんなさい」


「マナヒーには大変な思いだけさせちゃったから、申し訳ないなって思ってる」


 ふたりは言葉にした通りの顔をする。


「気にしないでくれ。むしろ関われてよかったと思ってる」


 そんな謝罪は必要ないとかぶりを振った。彼女たちに似合うのは笑顔だけだ……なんてカッコつけたいわけじゃない。


「俺も今回の件を通して、自分が抱えてた問題がよくわかったからさ」


「愛彦くんが抱えてた問題?」


「母ちゃんには、心の闇って言われちまった」


「心の闇って……マナヒーは、なにを抱えてたのさ」


 そんなものが俺にはあるのかと、ふたりは目を見開いた。


「俺はずっとさ、トロフィーが欲しかったんだ」


「トロフィー、ですか?」


 繰り返した百合に、俺は頷いた。


「このままじゃいけないってわかってるのに、どうせ頑張っても無駄だ。自分に期待ができないから、なにかを得ようと戦うちょうせんすることができなくなった。そんな負け犬になる土俵にすら立てない、弱者根性をずっと俺は引きずってたんだ」


 事実陳列罪で明らかになった俺の人間性。たしかに心の闇といっても差し支えない、自分ひとりでは気づくことすらできなかった弱さ。気づけたところで、それと向き合う力は俺にはなかった。


 ひとりだったら俺はいつまでも、弱者根性を引きずっていただろう。


 でも、俺はひとりじゃなかった。母ちゃんかぞくがいる。葉那ともだちがいる。情けない弱みを見せた上で、どうすればいいかと縋れる相手がいた。


 母ちゃんが厳しい指摘をしてくれたおかげで自分の弱さを知った。


 葉那がいるから、思う結果にならなくてもなんとかなると動き出せた。


 そんな人達が側にいてくれることが、どれだけ恵まれていることか。心から感謝を捧げられる相手がいる自分が、どれだけ幸せものであるかを知った。


 俺にとって特別たいせつ推しふたりのために、そんな役割を果たしたいと思ったのだ。


 このままじゃいけないと思って動き出した結果はこの通り。ハッピーエンドだ。


「だから特別な人間になった気でいられるものを、降ってくるのを待ってたんだが……なにもやってこなかった人間に、そんなものが与えられるわけないよな」


「そうだね。マナヒーに百合を託そうと思ったのは、私たちのためを思って頑張ってくれる人だったからだもん」


「愛彦くんがそんな人だから、わたしは友達になりたいって思ったんです」


 里梨と百合は感慨深そうに頷いた。


 なにもやってこなかった人間に特別なものなんて降ってこない。


 このふたりの隣にこうして並べているのは、俺が社会的に見て特別な存在だからじゃない。今日まで彼女たちのために積み重ねてきたから、俺は彼女たちにとっての特別な存在になれたのだ。


「うん。だからこそ特別な人を、自分の人生を特別にするためのトロフィーになんてしたくない。やってこなかった後悔だけはもう、したくないって動き出せたんだ」


 そろそろ人生三十九年目。ようやく俺は、大人になるための成長をひとつ果たせた。


「だからもう、トロフィーを欲しがるような生き方はもう止めだ。自分にとって特別な人たちの特別であり続ける。そうやってこれからの人生、頑張って行きたいんだ」


「あの重病が完治したなら、うん、よかった」


「まさに大団円ですね」


 ただ迷惑をかけたわけではない。自分たちを通じて人生の問題を解決できたことを、嬉しそうに祝福してくれた。


「ちなみに今までのマナヒーって、どんなトロフィーが欲しかったの?」


「そうだな……」


 里梨に聞かれて悩んだ。


 異世界転生でチート能力を得る。


 都合のいいお人形さん(JK美少女)ヒロインに好かれる。


 イヴと戯れることか、はたまたリリスとおねショタを育むことか。


 色々と悩んだ先に出た答えは、自分が今ここにいられる本質。


「俺はずっと……百合の間に挟まりたかった。そんな特別な人間になりたかったんだ」


 ヒィたんへのガチ恋である。


 ガチ恋営業をずっとかけ続けてきたヒィたん。よりにもよってユリアとの間に男が挟まるという、最悪な形の悲劇が起きた。それは死に至る苦痛であり、同時にあの人気ゲーム配信者、リンへの羨望と嫉妬が混ざっていた。


 一体どんな徳を重ねれば、ヒィたんたちの間に挟まるといううらやまけしからん関係になれるのか。それに妬み嫉みを覚えていたが、今になって答えがわかった。


 リンが重ねていたのは徳ではない。ヒィたんたちの特別になれるほどの積み重ね。最初から特別な存在だったのではなく、気づけばヒィたんたちの特別な人になっていたのだ。


 一体どんな物語がヒィたんたちの裏にあったのか、今は思い馳せることしかできない。


 ――まさかリンがヒィたんのリアル弟であり、新生児取り違えでふたりは血が繋がっておらず、リンの血縁上の姉はユリアである。それを発表し炎上が落ち着くと思ったら、ヒィたんが最後の最後で爆弾発言をポロっと漏らした。


 結局リンだけがガチ恋勢に燃やされて、自称兄を騙る大量のリスナーを抱えるハメになるのだが、その釈明配信を見れるのは十六年と数ヶ月先の話である。


「相変わらず、愛彦くんは不思議なたとえをしますね」


「恋人同士の私たちが大好きとか言うくらいだからね」


 困ったように、呆れたように、そしておかしそうにふたりは顔を見合わせた。


「でも、そのくらいの願いなら、叶えてあげたいですね」


「そうだね。叶えてあげよかった」


「え?」


 スルッと視界から姿を消した里梨。気づけば後ろを回って、俺の空いた横を並んでいた。


 そして両腕には、絡まるように柔らかな感触が押し当てられた。


 ふたりがギュッと、俺の腕を組んできたのだ。それこそ恋人を相手にするように。


「これでいいんですか、愛彦くん?」


「夢は叶ったかな、マナヒー?」


 イタズラっぽい口調で、両端から問いかけられた。


 なにが起こっているのか、最初はわからなかった。戸惑うどころか固まった俺を見て、ふたりはクスクスと笑っている。


 時間と共にようやく、なにが起きているのかわかった。


 百合の間に挟まっているのだ。それもふたりの恋人のような距離感で。


 百合の間に挟まりたかった。そんな特別な人間になりなかった――そんな星を掴むような奇跡ゆめを、俺のために叶えてくれたのだ。


 胸の奥底から込み上がってきたものが、目端から溢れてきた。


「ありがどう、ふだりども……」


 むせび泣きそうになるのを堪える声音で、感謝の言葉が自然と漏れ出した。


「ずっとずっと、これからもふたりのこと、一生推し続けるからね」


「マナヒー、サイフ出そうとしないで」


 一万円あかいろが溢れ出しそうになったこの手を、里梨はスッと止めてきた。


 この世界で一番大好きなふたりに、こんな風に挟まれる幸せは何事にも変えられない。あのとき百合の背中を押した結果、こんな対価を与えられるなんて。


 間違いなく今の俺は、この世界で一番の幸せものだ。心からそう思った。


「まさか泣くほど喜ばれるなんて思いませんでしたね」


「こんなのまだ、お礼のつもりでもないんだけどな。もっと凄い、喜んで貰えるお礼をするつもりだったのに」


「……もっと、凄い?」


 里梨の言葉を聞き逃さず、涙が止まるほどに慄いた。


 百合の間にこうして挟まれる以上に、もっと凄いことなんてあるのだろうか。そんなものを考えついた里梨に、畏怖の感情すら覚えてしまった。だってこれ以上ものを与えられてしまったら、今日一日なにも手がつかない自信があるからだ。


「一体……どんな凄いお礼を、してくれるつもりだったんだ?」


「そうだねー……ねえ、百合。マナヒーのためにどこまでしてあげられる?」


「里梨がしてあげたいことは、なんでも一緒にしてあげたいです」


 ニヤニヤしながら問いかける里梨に、百合は楽しそうにそう答えた。


「へー、なんでもかー。よかったねー、マナヒー。私がエッチなことでお礼してあげたいって言ったら、百合も一緒にしてくれるってさ」


「里梨が許せることは、喜んで全部許せちゃいます」


 言葉が出ない。ただただ絶句した。


 エッチなことって……一体どんなエッチなお礼をしてくれるのか。


 まさか、かつて百合がそのくらいと言った、頭の悪いJKユーチューバーがやるようなことを許してくれるのか。同時にふたつの奇跡を、この手に掴めるのか。


 想像を巡らせている俺に、ふたりはおかしそうにクスクスと笑っている。


「まあ、エッチなことは冗談だとして」


「冗談なのか……」


 里梨にそう言われて、残念なような、ホッとしたような、そんな顔をした。


 ふいに、里梨の人差し指が視界に伸びてきた。それは唇を閉じるように押し当てられると、


「ここはさすがにダメだけど」


 触れたまま頬のほうに人差し指は移動した。くりくりと渦を巻くように、優しくなぞられている。


「ここにならいくらでもしてあげたくなっちゃうなー」


「してあげたくなるって……一体、なにを?」


「さあ、なんでしょう?」


 俺の反応を楽しむように、里梨はニマニマとした上目遣いを送ってくる。


 さて、いきなりだが好事家諸君たちと復習しなければならないものがある。


 七つの大罪である。それがなにかを今更問う真似はしない。


 その七つとは、傲慢、強欲、嫉妬、憤怒、暴食、怠惰、百合の間に挟まる。


 そして罪が大罪と呼ばれる条件は、重要な事柄について、それを望み、意図的に行われた、である。


 その重要な事柄とは、神の御心に反する行い。神の戒めである。


 マルコによる福音書の十章に、正しい人の言葉がこのように残されている。


『戒めはあなたの知るとおりである。殺すな、姦淫するな、盗むな、偽証するな、奪い取るな、百合の間に挟まるな』


 百合の間に男が挟まるのは、神の御心に反する行いなのだ。


 大罪を犯せば、神の恵みが失われる。


 神の恵みを失えば、人は生きられない。


 だから百合の間に男が挟まるのは決して許される行いではないのだ。


「行くよ、百合」


「はい、里梨」


 しかしそれは人に与えられた罪であり、神に祀り上げられた存在には関係のない話である。


 だから今この瞬間、


「「いっせーのーで」」


 神の恵みは俺の独り占めである。

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