第一幕 第五章「入国」

門の中には広々とした街が拡がっていた。

 建物はレンガのようなもので作られたものが多く

 地面も石のタイルのようなものになっている。

奥には城のようなものが見え、あれが王宮だということがわかった。

 そしてたくさんの人が街を歩いていた。

 

翔太「おぉぉぉ!町だぁ!」

雹美「はぁ、そんなに驚くことじゃないでしょうに…」

翔太「いやいやこんな風景外国でもあんま見ねえよ!やっぱファンタジーって感じがするな!」

雹美「さっきから何を言ってるのやら…そんな感心してる暇があるなら王宮の事務室に行くわよ。」

 と、呆れた口調で言った。

翔太「うす」


 城に向かっている最中には様々な店があった。

 飲食店だけではなく洋服屋や宝石屋もチラホラあり、武具屋なども多数あった。


翔太「なぁ、後で町探索してもいいか?」

雹美「別にいいわよ。でもあんたミルは持ってるの?」

翔太「ミル?なんだそりゃ」

雹美「あ~そういえば説明してなかったわね。ミルっていうのはこの世界の共通通貨よ。」

翔太「お金ってことか確かにそりゃ持ってねえわ」

雹美「でしょうね。なにか買い物をしたいならクエストをクリアしていくことね。」

翔太「そうだな。そうすれば金もたんまり手に入るだろ。」

 

 そう言い、10分ほど歩いて王宮の前まで来た。

翔太「うっひょ〜!こりゃデケエな!某ランドの城よりもデカイな!」

雹美「早く行くわよ。感想な後で語ってちょうだい。全くいちいちうるさいんだから」

 ちぇ、冷てえヤツだな。

 

 そして俺たちは王宮の中に入っていった。中に入るととてもきらびやかな光景があった。やはり思っていた通り、金色の壁や天井には巨大なシャンデリアが吊るされており「The castle」 という感じが

した。感じたのもつかの間雹美はそのまま事務室がある2階へと向かっていったので俺も着いて行った。


雹美「事務室はここよ。」

翔太「じゃ、入るか。」

 そう言いドアを開けた。するとカウンターには清らかな女性が立っていた。この人が事務員だろう。

事務員「ようこそお越しくださいました。こちらはカーマッカ王国 王宮事務室でございます。ご要件を承ります。」

雹美「こいつの身分証発行をお願いするわ。」

事務員「畏まりました。それではまずお名前を聞いてもよろしいでしょうか?」

翔太「高橋翔太です。」

事務員「タカハシ ショウタ様ですね。ご年齢は?」

翔太「17歳です。」

事務員「17歳でございますね。出身地をお聞かせください。」

翔太「あ、出身地ですか…えぇっと…」

雹美「素直にあなたの世界のことを言いなさい。」

 と、ボソッと言った。

翔太「に、日本です。」

事務員「…ニホン?でございますか?えぇっと…少々お待ちください。」

 と言うと事務室の奥の方へと駆け足で行ってしまった。

翔太「おいほんとに大丈夫かよ」

雹美「大丈夫よ。これで転生者って分かってくれるわ。」

翔太「そ、そうなのか」

 すると先程の事務員が帰ってきた。

事務員「えぇっと翔太様は「転生者」ということで宜しいでしょうか?」

翔太「転生者と言うよりは「召喚者」です。この人に召喚させられました。」

事務員「召喚者? それは聞いたことがないですね…」

翔太「召喚者を知らないのか?」

事務員「いえ、召喚者という言葉の意味は分かります。ですがこの世界に召喚者として生存した記録が一切ないのです。転生者は稀にですが何度かお会いしたことがあり、ライフカードの発行もさせていただきました。」

翔太「でも会ったこともないんだろ?でもどうしてその言葉の意味は知ってるんだ?」

事務員「実はこの世界には逸話がありまして…定かでは無いのですが、ロックフィールドという土地はご存知かと思います。そこのどこかに召喚者としてこの世界を救ったと言われる英雄の剣が刺さっているのです。そこから召喚者と言う言葉を認知されていると言われています 。」

翔太「そ、そうなのか……ん?じゃあなんで雹美は俺を召喚できたんだ?」

雹美「ぎ、儀式よ。太古から存在する召喚儀式をずっと私はしてた覚えがあるわ。そしてそれがたまたま成功したのよ。」

翔太「なんか怪しいな…」

雹美「うっさいわね!私は記憶を無くしているって言ったでしょう!?」

翔太「わ、わかったわかった落ち着け落ち着け」

事務員「と、とりあえずそういうことになりますのですが…召喚者として登録をしてもよろしいでしょうか?」

翔太「じゃあそれで頼む。」

事務員「畏まりました。それでは少々お待ちください。」


そう言い、残りの項目を埋めていった。

事務員「これで終了になります。それでは今から発行を致しますのでそちらの席におかけになってお待ちください。」

翔太「分かりました。ありがとうございます。」

 そして席に寄っかかった。

翔太「この世界案外俺の世界と関わりがあるのか?」

雹美「知らないわよ。たまたまその世界と合ってるだけじゃないの。」

翔太「…なあ雹美。お前ほんとに記憶忘れてんのか?」

雹美「…!」

 そう言うと少し黙ってしまった。

翔太「別に無理に話せとは言わねえけどさ。嘘をつくのはいい事じゃねえからな。それで信頼も無くすんだから。」

雹美「ちょっと待って、なにか不穏な感じがするわ」

翔太「おいおい急に話を遮るなよ、なんだよ不穏な感じって」

 

 少しピリピリした空気になってしまった。でも不穏な感じなんて感じないぞ?てかそもそもそうゆう気を感じることができるのか?


雹美「あっちの広場から感じるわ!行くわよ!」

 と、急ぐように駆けて行った。

翔太「ちょ、おいおい!ちっ!自己中な野郎だな!すみません事務員さん!身分証は後で貰いに行きます!」

事務員「畏まりました!後私の名前はエトラス・エイデンです!」

 俺はエトラスさんに向けて親指を立て、バンッという音を立てドアを閉めた。


翔太「はぁ、はぁ、はえぇよぉ~!もうちょっとスピードを落としてくれぇ~」

 その言葉は気にせずにどんどん雹美は駆けて行く。そして広場に着いた。


ゴホゴホと咳をして俺は気を取り直した。

翔太「はぁ、ほんとに感じたのか?不穏な気ってやつをよ」

雹美「え、えぇ確かに感じたのだけれど。」

翔太「おいおいしっかりしてくれよ。ここに来た意味が無くなるだろ。」

雹美「感じたから来たって言ったでしょ!感じただけなんだからほんとにいるかなんて分かるわけないじゃない!」

翔太「またキレんのかよ!いい加減にしろよお前!自分が始めたことなのになんで俺にキレんだよ!」

雹美「うるさいわね!不穏な空気を感じたのはほんとなの!不穏な空気を感じて行かないよりかは行った方がタメになるでしょ?!そんなのもわかんないの?このタコ!」

翔太「て、てめぇ!毎回毎回一言多いんだよ!このクソビッチが!」

雹美「は、はぁ?!く、クソビッチですって?!生意気な口を……!!」

???「あの大丈夫ですか?」

雹美&翔太「なんだよ!」

 振り返ると少し小柄な男子が立っていて、俺たちの言葉に少し驚いてしまったようだ。

???「い、いやこんな広場の真ん中で大声で喧嘩してるもんですからさすがにやばいなと…」

 言われてみれば確かにやってることはえぐかった。現代でやったらTwitterやらに拡散されて炎上される所だった。

翔太「それは悪かったな。声掛けてくれなかったら……え?」

???「あなたは…!」

翔太「か、海斗?!」

海斗「しょ、翔太?!」

 まさかのこの世界に知り合いがいるとは一切思っていなかったので過去1驚いた。

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