第63話
まあ、あれから色々あった。
卒業パーティーの会場に2人で戻った時は、私たちの様子にニヤニヤするジュリアにアリスにマーリン。
それと、号泣するチェルシー・・・
後で聞いたが、リアム兄様の地獄のようなシゴキに根を上げずに必死に食らいつくドルチアーノ殿下を密かに応援していたとか。
(チェルシーはドルチアーノ殿下の気持ちに気づいていたらしい)
「殿下、次はないですからね?」
と、リアム兄様の言葉に顔が青くしたドルが何度も頷いたり。
我が家に送ってもらったついでに挨拶をして行くと言うドルがお父様を泣かせたり(まだ先のことは分からないのに・・・)
ルイス兄様は納得のいかない顔をしてドルを睨んでいたけれど、そこはスカーレットお義姉様が宥めてくれたり。(ルイス兄様!ドルは一応王子だからね!)
お母様は相手が誰だろうが娘を幸せにしてくれる人ならいいと。
ただ、家族が共通してドルに言ったのは、脅しも入っていたようだが・・・
『ヴィーを裏切ったら問答無用で終了』だった。
ドルは忙しい仕事の合間に、時間さえ出来れば我が家を訪問してくる。
初めて手を繋いだ時も涙目・・・理由は嬉しすぎてだった。
夜会に出席する時にドルの用意してくれたドレスを見に纏った私を見て涙目・・・この時は感動してだった。
これはドルの贈り物を身につける度になんだけどね。
元々優秀なドルだから、外ではしっかり王子をしている。
だから、誰もすぐに涙目になる男などと思いもしないだろう。
ドルは見た目も良いし、王家とお近付きになりたいからか、王子妃の立場を狙っているからか、擦り寄ってくる令嬢が後を絶たなかったけれど、ちゃんと断るし、どんなに綺麗な人にも可愛い人にも見向きもしない。
そんなドルはいつも私に気持ちを伝えてくれる。
それは安心も出来るし、正直何度聞いても嬉しい。
ただね、毎回自分の言葉で赤面するのはやめてくれ!
こんなに初心だとは知らなかった。
私の前ではすぐに涙目になるヘタレ王子。
『言葉って大事だよ。使い方一つで人を傷つけることも出来るし、幸せにもできる。
・・・だから僕はヴィーへの気持ちを偽らず伝え続けるよ。
僕は二度とヴィーを傷つけない。
僕がヴィーを幸せにしたい。いや、必ず幸せにする。
・・・ヴィーだけを愛しているんだ。僕のお嫁さんになって下さい』
本当に愛しい人。
付き合って一年。
ドルの優秀なところも、誠実なところも、優しいところも知っている。
ドルの優しい口調が好き。
今だに額へのキスしか出来ないヘタレなところも好き。
泣き虫なところも好き。
一番はドルの笑顔が好き。
「私もドルを愛しているわ」
ああ、また目に涙が浮かんできたわよ。
「二人で一緒に幸せになりましょう?」
「ヴィー!ありがとう!!」
ギュッと抱きしめて・・・額にキス。
おい!
ここは唇にキスするところだろ!
まあいっか・・・
いつもの様にポケットからハンカチを出さないと。
ドルの涙を拭くのは私だけの特権だもんね!
このウブな彼は結婚式までキスをしてこないのでは・・・
いやいや、まさかね?
~ドルチアーノ殿下視点~
君は信じないだろうけれど、僕はこんなに泣き虫じゃなかったんだよ。
人前で泣くなど王族としても、成人した男としても、みっともないのは分かっているんだ。
ただ、幸せを感じると涙が自然と出てくるんだ。
君といる時だけだから許して欲しいんだ。
いつも困った顔で優しく僕の涙を拭いてくれる君の手も好きだよ。
あの卒業パーティーの日に気持ちを伝えて本当によかった。
言わないままだったら、この幸せを知ることもなかったんだね。
それどころか、人気のあった君は誰かのものになっていたかも知れない。
そんな事になっていたら、後悔してもしきれなかったはずだ。
あの日、気持ちを伝えた僕を褒めてあげたい。
君に会えない日は寂しい。
君に会えた日は嬉しくて舞い上がってしまう。
僕は君に会う度に額にキスをする。
お返しに君から頬にキスを送られる。
これだけで心が満たされるんだよ。
でも、僕だって男だからね。
手を繋ぐだけでも幸せだけど、もっと君に触れたくなるんだよ。
君が捻挫した時に抱き上げた君は折れるかと思うほど細くて軽かった。
それに、柔らかくていい匂いがした。
もっと君の傍にいたい。
もっと君に触れたい。
もっと、もっと君の笑顔が見たい。
大切にすると約束する。
必ず幸せにする。
だから、僕のお嫁さんになって。
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