第52話



結局、彼と元王女は人知れず幽閉されたと聞かされた。


結果、思い合う2人が一緒なら幽閉でもよかったんじゃないかな?

今までのような生活は出来ないかも知れないけれど、身分を捨ててまでお互いを選んだんだもんね。

それに、ある意味2人はお似合いだったと思うよ。




私の頬の腫れが引いた頃、驚くべき報告をルイス兄様からされた。


「つい最近私は婚約したんだよ」


なんですって!


「・・・お相手の方はどちらのご令嬢ですか?」


なんだかヤキモチを妬いてしまう。

だって、ルイス兄様は私を一番に優先してくれていたのに、それがこれからは婚約者様になるのでしょう?


寂しいような・・・

嬉しいような・・・複雑な気持ちになってしまう。


「ヴィーも知っているトライガスのスカーレット王女だ」


え?王女?

マーガレット元王女のお姉様?


「驚いたか?」


ええ!ええ!あの絶世の美女!

あの方が私のお義姉様になるの?


赤い髪に赤い瞳。

白い肌に知性のある瞳、スッキリとした鼻梁、真っ赤な口紅もよく似合っていたわ。

・・・それに魅惑的なスタイル。


マーガレット元王女の忠告をしてくれた時も、背筋を伸ばし口調は柔らかいけれど女王のような貫禄があった。


でも・・・最後に寂しそうに、諦めたように呟いたスカーレット王女は妹の幽閉なんて本当は望んでいないと思ったんだよね。

表情に出さなくてもスカーレット王女は妹の心配をする優しいお姉様なのだと・・・





この婚約も、カサンドリア王家とトライガス王家との思惑や政治的絡みも含まれているのだろうけれど、ルイス兄様ならきっとスカーレット王女を大切にするはずだわ。



「あの・・・ルイス兄様とスカーレット王女様は・・・政治が絡んだり本人の意思は関係なく結ばれた婚約でしょうか?」


気になることは今のうちに聞いていた方がいいよね。


「彼女って顔立ちがハッキリしているせいか気が強そうに見えるだろ?」


「・・・はい」


「彼女は幼い頃から王太子のスペアとして厳しい教育を施されてきたんだ。

大切にしてくれていた侍女や、家庭教師をマーガレットに奪われ、父親の国王は彼女に見向きもせずマーガレットだけを大事にしていた。

甘えられる存在は兄の王太子だけだったそうだ。

彼女は王族として弱みを他人に見せないよう無理をして虚勢を張っていただけの・・・不器用でか弱い普通の女の子だよ」


そうだよね。

あの時もスカーレット王女の優しさを私も感じたわ。


「そんな彼女に気づいた時に決めたんだ。私が彼女を彼女らしく生きていけるように自由にしてあげようと、守ってあげようと、これでもかってぐらい甘やかしてやろうとね」


「まあ!ルイス兄様ったら!私もお義姉様と早く仲良くなりたいわ」


「ありがとうヴィー。スカーレットも喜ぶよ」




で、次の日には我が家にスカーレット王女が訪問されたの。


ルイス兄様の隣で緊張した挨拶をされた時も、ルイス兄様と目が合っただけで真っ赤になった顔を見た時も、そこには王女の貫禄どころか可愛らしいとしか表現がしようがない女性がいた。


私たち家族に歓迎されて涙するスカーレット王女をルイス兄様が誰にも見せないように腕の中に閉じ込めて、それに驚きすぎたスカーレット王女が気を失って騒ぎになったりもしたけれどね。


結婚式は半年後に行われるらしい。


それまでは我が家で滞在し、次期公爵夫人としての教育をお母様が授けるとか・・・そう言いながら、教える必要のないほど優秀で可愛いスカーレット王女をルイス兄様が仕事で留守の間は独り占めしたかっただけだと後でわかった。


私もすぐにお義姉様と仲良くなれた。


全然気取ったところのないお義姉様はよくルイス兄様との惚気けを照れながら聞かせてくれる。


それはとっても微笑ましいのよ?

でもね?

実兄との惚気けは聞きたくないわ~




私も新学期が始まって、彼や元王女の噂は多少は聞こえてきたけれど、それもいつの間にか消えていた。


いつものメンバーで楽しい毎日を過ごしている間に、3年生の卒業式が行われた。



この卒業パーティーでもひと騒動があったんだよね~。



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