第51話 マーガレット視点
~マーガレット視点~
目が覚めたのに頭がぼーとする・・・
ここは何処?
こんな古びた天井は知らない。
起き上がろうとしても身体が固まったように動かない・・・
誰かを呼ぼうにも声が掠れて上手く出せない・・・
今動かせるのは目だけ・・・なぜ?
不安が押し寄せてくる。
「やっと目が覚めたか」
突然眠る前に聞いたアレクシスの低い声がした。
「傷は綺麗に塞がっている。もう薬は必要ない」
傷・・・眠る前にも言っていたわ。
わたくしはどこか怪我をしたのかしら?
アレクシスが傍に来た気配がして唯一動く目を向けようとして"ヒッ"と声にならない悲鳴が出た。
アレクシスの顔に斜めに犯罪者に入れると言われている黒い刺青が入っていたから・・・それも太い線が三本も。
三本・・・聞いたことがある。
人殺しなど重い犯罪を犯した者に与える印だと。
でもそれは腕だとか手首だと聞いていたわ。
アレクシスは一体どんな犯罪を犯したの?
これじゃあ外にも出られない・・・
「まずは水を飲め。説明はそれからだ」
そっとわたくしの体を起こしてアレクシスの手で水を飲ませてくれた。
冷たい水が喉を潤していく。
『も、もう一杯』
まだ掠れているけれど声は出せるようになって安心する。
「もう水はいいか?」
「ええ」
声も出せるようになった。
「はじめに言っておく。俺とお前は夫婦になった」
「え?」
いつの間に?
「お前が望んだと聞いている。そもそもお前は俺のことが好きで留学までして追いかけてきたのだったな」
それは建て前よ!
「平民になった俺に身を任せるとも言ったそうだな?」
平民?
アレクシスは侯爵家の跡継ぎでしょう?
「まあ、お前も平民になった事だし早くこの生活にも慣れてくれ」
わたくしが平民・・・?
アンドリュー様の言っていた事は本当だったの?
「アレクシスの・・・その顔は?」
「・・・平民が公爵令嬢に手をあげたんだ。当然罪人になる。本来なら鉱山送りか牢獄入りだっただろうが、俺に身を任せたお前が死ぬまで世話をする事でそれは免れたが・・・俺とお前がこの敷地から出ないことが条件だ」
アレクシスが罪人・・・
死ぬまで?
外には出られないですって?
「俺にはお前が、お前にはもう俺しかいない」
「い、いやよ!」
だって目に入る部屋は壁紙もない、家具だって古びたタンスがあるだけだわ。
それに小さくて固いベットにシーツだってゴワゴワ。
わたくしは王女なのよ!
こんな所で一生暮らすなんて無理だわ!
「・・・なら出て行くか?ここは見張りがついている出たと同時に殺されるぞ?」
見張られているですって!!
「それと、通いで手伝いが2人いるが家の掃除と食事の用意だけだ。お前の世話はすべて俺がする」
通い?
わたくしの専属侍女は?
着替えや入浴は誰がしてくれるの?
「もちろん平民の俺たちだ。豪華な食事やドレスは期待するな」
・・・
「スープが用意されているが先に風呂に入れる」
そう言って、アレクシスが服を脱がせようとしてきた。
「何するの!ま、待って!」
「何を恥ずかしがる?俺たちは夫婦だ」
恥ずかしがる?
そんな訳ないでしょう?
わたくしの自慢のこの身体は誰に見られても恥ずかしくなんかないわ!
でも・・・夫婦だと言うなら仕方がないわね。
それでも丁寧に扱いなさいよ。
ふふん!
わたくしの裸は童貞のアレクシスには目の毒じゃないかしら?
入浴する前に我慢ができなくても許してあげるわよ?
・・・・・・。
「なぜお姫様抱っこじゃないの?」
なぜ子供を抱くように縦に抱きかかえられているの?
「仕方がないだろ?腕を通す膝がお前にはないんだから」
膝がないって何を馬鹿なことを言っているの?
そこにあるじゃない!
まあいいわ、この抱き方がアレクシスは好きなのね。
浴室も古ぼけたものだったけれどサイズは普通ね。
そっと湯に降ろされて浸かってれば温かくて気持ちがいい。
!!!!!
「@/#&/#&///#,?!"」
ない!ない!ない!・・・
ありえない!
こんな事ありえない!
「黙れ・・・お前が眠っている間は俺が下の世話もやっていた。髪も面倒だから切らせてもらったがな」
『今夜は初夜だな』と笑って言ったアレクシスの言葉を最後に意識が途絶えた・・・
ギシギシと耳障りな音と、身体が揺れる不快感で目を覚ました。
はぁはぁと荒い呼吸でわたくしに倒れ込むアレクシスの汗が気持ち悪い。
「・・・安心しろ。俺もお前も子を作れないよう処置をされている」
わたくしに、こ、こんなこと・・・許さないわ!
「お前が満足するまで明日からも毎日抱いてやる」
アレクシスは昼間はわたくしの世話が仕事だと、丁寧に世話をしてくれている。
『罪深いお前を自由にするわけがないだろう?残りの人生後悔しながら生きていきな』
これが、わたくしの罰なのね・・・
もう逃げられない・・・。
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