第48話 ルイス視点

~ルイス視点~



あの日、知らせを聞いて急いで城門までヴィーを迎えに向かった。


ちょうどその時、アレクシスとマーガレット王女の乗った馬車が到着したのが遠目からも見えたのだが・・・


生気を失ったようなアレクシスと、不機嫌さを隠しもしないマーガレット王女が馬車から降りてくるところだった。


そのまま2人は別々に連れて行かれたが、学院でアレクシスがヴィーに何をしたのか報告を聞いていた私は、すぐにでもアレクシスを問い詰め報復をしたい気持ちをおさえるのを我慢した。


それよりも今はヴィーだ。


アレクシスが自分の都合のいい様に思い込んで、何も悪くないヴィーが殴られた・・・

あの小さくて可愛らしい顔を・・・男の手で殴られたんだ!

痛かったはずだ・・・

怖かったことだろう・・・

想像しただけでも怒りで手が震える。


待つ時間をもどかしく思っていると、ヴィーとドルチアーノ殿下を乗せた馬車が到着した。

急いでドアを開けて見たヴィーの頬は、赤く腫れ上がっていた・・・

どれほどの力で殴られればこれほど腫れ上がるのか・・・

急いでヴィーを抱きかかえて医務室に向かった。


診察の結果、あとも残らず綺麗に治ると聞いてやっと安心できた。

だからといって、アレクシスの行為を許せるものではない。


悪意からヴィーに水をかけた娘も、肩を押してヴィーに怪我をさせた娘も廃嫡された。


ヴィーを木刀で殴ろうとした男は廃嫡されて利き腕を切断されてから男娼として鉱山に送られた。

力仕事が出来ないのだから仕方がない。


なら、腫れるほど殴ったアレクシスは?





ヴィーは治療後すぐに邸に帰らせるつもりだった。

だが、ヴィー本人が『彼にこの顔を見せて自分が何をやったのか分からせてやりたい』と腫れてても可愛い顔でお願いされて、願いを聞いてしまった。


結果は・・・


ヴィーの腫れた顔を見ても謝ることもせず、アレクシスは自分の都合のいい言葉ばかりを吐く。


何がマーガレット王女が帰るまでだ!

何がマーガレット王女が帰ったら大切にするつもりだっただ!


アレクシスの言葉に皆が呆気に取られていたところに、ハイアー侯爵の思いがけない言葉に部屋は静まり返った。



話しを聞けば、一番不憫なのはハイアー侯爵だがアレクシスはそれも認めない。


コイツは都合の悪いことはすべて認めない。

それどころか見えてもいない。


だからヴィーの顔が腫れていることを指摘されるまで気付きもしなかった。

それも、なぜ腫れているのかも理解していない。


ここにきてアレクシスの異常性が顕著に現れた。


ヴィーもアレクシスに何も言えないほど呆れたようだ。

もう、帰ると言うヴィーを送って部屋に戻った。


そこではアレクシスに対する処罰を王太子殿下とハイアー侯爵が話し合っていた。

そこへ貴族会議が終わって伝言を聞いた父上とリアムが部屋に入室してきた。


「アレクシスよ、甘い処罰になることは無いと肝に銘じておけ!」


全てを聞いた父上とリアムはヴィーの様子を見に一度帰って行った。






次に戻ってきた父上とリアムはアレクシスを今にも殺してしまいそうな顔だった。

私も2人の気持ちと同じだ。


それから王太子殿下を中心にハイアー侯爵に反対されることもなくコイツに与える罰が決まった・・・。



私たちの話しの間中青い顔でずっとガタガタと震えていたアレクシスは分かっているのだろうか?

この結果を招いたのは誰のせいでも無く自分だということに・・・





すぐにアレクシスの処置をする手配を済ませた。


これでコイツは二度と外の世界に出ることは出来ないだろう。





あとはマーガレット王女だ・・・。


だがそれにはもう少し時間がかかりそうだ・・・

今はまだ放置でいい。


優しいあの子はこんな結果を望んでいなかっただろう。


ヴィーの事がなくても、私は長い間あの子を傷つけ、悲しませてきたマーガレット王女を幽閉だけで済ますつもりは無い。


マーガレット王女はやり過ぎたんだ。

恨まれすぎている。

あのままこの国に留学してこなくても幽閉される事は決まっていたのだ。


幽閉するのはマーガレット王女を守るためでもあったのだが・・・


それなのに、他国に来てまで公爵令嬢を相手に問題を起こした。


今ごろトライガス王国でマーガレット王女を庇っていた男は権力を失っていることだろう・・・



因果応報とはよく言ったものだ。



マーガレット王女が絶望するまであと少し・・・。

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