第45話
ドルチアーノ殿下が私の頬を見る視線が痛いわ。
「だ、大丈夫かい?」
「ッはい」
怒りに闘志を燃やしているからね多少の痛みは大丈夫なんだよ!
そんな事よりも!
許すまじ!許すまじ!アレクシス許すまじ!
念仏のように唱える今の私はきっと般若のような顔になっているはずだ。
どうしてやろうか?
平手一発で終わらせるつもりは無い!
2倍?3倍?・・・いや!10倍返しだ!
当然でしょう?
女に手をあげるなんて最低だ!
向かいに座るドルチアーノ殿下の方が痛みに耐えているような顔になっている。
「王宮に着いたらすぐに冷やしてあげるからね」
ん~馬車に乗る前にアリスが濡れたハンカチを渡してくれたし今はそれほど痛くはない。
「そッ・・・んなに痛くないのッで大丈夫ですよ」
痛かった・・・
それもこれもアイツのせい!
アレクシス許すまじ!
ブツブツ恨みごとを言う私が余程不気味なのかドルチアーノ殿下はもう何も言わなくなった。
それよりもなぜ私まで王宮に行かなければならないのか・・・
彼のことはお父様に任せればいいと思うんだけどな。
公衆の面前での暴力だもんな~
慰謝料とか請求する事になるだろうし、以前水をかけた子も肩を押した子も・・・あの時の子達は全員貴族籍を抜けさせられたと聞いた。
侯爵家嫡男の彼もそうなるのかな?
ひとり息子なのに跡継ぎ問題とか出てきそうだけど・・・。
そんなことは私には関係ないよね。
まあ、その辺もお父様にお任せしよう。
マーガレット王女も彼と一緒に連れて行かれたってことは・・・
もしかしたら彼女はすでに王女では無いのかもしれない・・・
「・・・リア嬢、・・・クトリア嬢」
ん?気付けば目の前のドルチアーノ殿下が私の名を呼んでいた。
考えごとをしている間にもう王宮に着いたのね。
「早く冷やそう?腫れが酷くなってるよ」
そうなんだ・・・だからそんなに心配そうな顔をしているのか。
「っ、ありがとうございます」
突然ドアが勢いよく開いたと思ったら「ヴィー!」私の顔を見て一瞬泣きそうな顔になったルイス兄様が馬車に乗り込んできたかと思えば、スっと私を抱き上げ歩き出した。
何がなんだか分からない・・・
「っ、兄様、ルっイス兄様!」
「うちの可愛いヴィーによくも!許さない!絶対にアイツは許さない!」
ルイス兄様のこんなに怒った顔なんて見たことがない・・・
「・・・兄様」
「ヴィー大丈夫だよ。ちゃんと元の可愛い顔に戻るからね安心しなさい」
優しく微笑んで言ってくれるけれど、ルイス兄様が怒りを耐えていることが分かってしまう。
私ってそんなに酷い顔になっているの?
怖いんですけど!
ちょっと心配になってきた。
「だいぶ腫れていますが、外傷もありませんし綺麗に治りますよ」
「「はぁ~~」」後ろからルイス兄様とドルチアーノ殿下が安心したように大きく息を吐いたのが聞こえた。
よかったよ~、本当によかったよ~。
医務室の入口にあった鏡を見た時はマジ気を失いかけたわ。
「今は赤く腫れているけれど、明日には青アザになっているでしょう」
そう言って前世でいう湿布を頬に貼ってもらった。
「ヴィー、あとは兄様に任せて今日は帰りなさい」
ルイス兄様が気づかってくれているのは分かるんだけどね、彼には自分が何をしたのか分からせたくて、無理を言って彼に会わせてもらえるように頼んだ。
私がお願いポーズをすると渋々、本当に渋々ルイス兄様は「少しだけだぞ」となんとか聞き入れてくれた。
なぜかドルチアーノ殿下も着いてきて、ルイス兄様が案内してくれた部屋は、前回通された王太子殿下の執務室でもなく、スカーレット王女が忠告してくれた時に使用した部屋でもなく、ソファセットがあるだけの簡素な部屋だった。
部屋には王太子殿下と、俯いたハイアー様と、ハイアー様に似た男性がいた・・・きっとあの方が彼のお父様ね。
私の顔を見た王太子殿下は驚いた後に彼を睨みつけた。
そして男性の方は「私はハイアー侯爵家当主カルロと申します。誠に申し訳ございませんでした。ディハルト嬢。」と悲痛な顔で頭を下げられた。
その言葉に反応して彼が顔を上げて私を見るなり言ったのが・・・
「ヴィー!お、俺はマーガレット王女が帰国するまでの相手をしていただけなんだ!」
この顔を見て最初の言葉が言い訳とはね。
ルイス兄様、恐ろしいお顔になっているよ。
「・・・」
「マーガレット王女が帰国したらヴィーを大切にするつもりだったんだ」
なんだそれ。
呆れたのは私だけではなく彼以外の全員だろう。
「・・・」
「だってヴィーは俺の婚約者だろ?」
この人頭おかしいの?
婚約していないって教えてから、まだ二時間も経っていないんだけど・・・
自分に都合の悪いことは頭に入らないの?
それとも、思い込みが激しいだけ?
「さっきから言っているだろ!お前とディハルト嬢は婚約関係ではない!何度言えば分かるんだ!」
「父上!」
「・・・お前は本当に母親にそっくりだな」
そう言って、ハイアー侯爵は疲れなようにため息を吐いた。
「はあ?俺は父上に似ているとよく言われますよ」
「父と呼ぶな・・・お前は私の子ではないのだからな」
ハイアー侯爵のその言葉に部屋の中は静まり返った・・・
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