第41話
あれ以来、彼が私に何か言ってきたことはない。
だけど、なんだかな~
相変わらず彼とマーガレット王女は人目もはばからすイチャイチャしてるのはいいんだけど、最近では彼の方がマーガレット王女にべったりのように見える。
別に気になって見ていた訳ではなく、マーガレット王女と校舎も階も同じだと結構2人に出くわしちゃうんだよね。
授業と授業の間の休憩も20分もあるから、休憩の度にマーガレット王女に会いに来ているようだし、移動教室のときに見たくなくても目に入ってしまう。
それはいいんだよ。
二人の世界に浸りだしてから結構長いからね。
ただ、この間見ちゃったんだよね。
それまでベダベタしていたのに、予鈴が鳴って自分の教室に戻る時のマーガレット王女の顔を・・・
あれは呆れている顔?
それともうんざりしている顔?
もう彼のことなど、どうでもよさそうな・・・
まるで彼のことを面倒だと思っているような・・・
とてもじゃないが好きな人と会ったあとの顔ではなかった。
多分、マーガレット王女は彼に飽きてきているのだろう。
でも、私と目が合ったと思ったら『ふふん』って聞こえそうな、自慢げな顔に変わったんだよね。
私に嫉妬して欲しかったのかな?
だからね、"応援してるよ!頑張って!"の気持ちを込めて笑顔で親指を立ててサムズアップしたらその途端、怖い顔で睨まれた。
いつまでマーガレット王女の遊びは続くのだろう?
彼が婚約者もいないフリーだと知ればどうなるのだろう?
今は王女だというのに、彼が一緒に居なければ1人でいる方が多い。
今のマーガレット王女の言葉に惑わされるとしたら彼だけしかいないと思う。
あの怒鳴ってきた時もマーガレット王女の言葉を信じていたのだろう。
思い出したらムカついてきた!
人を阿婆擦れ呼ばわりするなんて!
何が『素直に認めれば許してやる』だ!
何が『あとで後悔するなよ』だ!
私に言わせれば、お前がな!だ!
でも、あの時ドルチアーノ殿下を含めた子息達にも暴言を吐いのに彼にお咎めはなかった。
これも、王家の意向なのかな?
我が家なんて報告するなりお父様は憤怒の顔で何かを耐えているようだったし、リアム兄様とお母様は冷たく微笑んでいた。
そして、ルイス兄様は・・・殺人予告を呟いていた。
・・・彼、終わったわね。
もうすぐ冬季休暇に入る。
休暇が明けたら2ヶ月もしないうちに3年生は卒業するし、マーガレット王女の留学期間も終わる。
この学院にも卒業パーティーがある。
卒業生は強制参加だけれど、在校生は自由参加だ。
毎年、卒業生の婚約者だとか、身内だとか、憧れの人がいる在校生とかが参加しているらしい。
だから、別にエスコートがなくても参加はできるし、友達同士での参加の方が多いと聞いた。
私も去年はリアム兄様のエスコートで参加するつもりだったのに、お父様とルイス兄様に反対されて出られなかったんだよね。
まてまて!
卒業パーティー!!
またまた閃いてしまった!
乙女ゲームでは卒業パーティー=断罪!が鉄板だった。
・・・いやいや、まさかね。
ここは乙女ゲームの世界じゃないもの。
兄様たちはマーガレット王女を"危険人物として陰からこっそり見たことはあるが、直接会ったことはない"と言っていた。
いくらマーガレット王女が婚約者がいる人や、恋人がいる人ばかりをターゲットにすると言われていても、うちの兄様達を見たら・・・
うん、想像もしたくない。
そう思っていたのに、会ってしまったんだよね・・・
偶然でもなく、必然でもなく、彼がやらかしたせいで・・・
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