第42話 マーガレット王女視点

~マーガレット王女視点~


わたくしはトライガス王国の第2王女。


物心ついた時からわたくしは周りから大切に、大切にされてきたわ。

その筆頭はお父様。

亡くなったお母様にソックリだと言われるわたくしに甘いお父様は、欲しいものは何でも与えてくれたの。

それが人だろうが、とても高価な物だろうが。


お母様はわたくしを産んですぐに亡くなったと聞かされた。

ご自分の命をかけるほどお母様に愛されていたと思えば顔も声も知らないけれど、この世に生み出してくれたことに感謝したわ。


ふわふわとした淡いピンクの髪に、まるでルビーのように輝く赤い大きな瞳。

顔も小さく、少し垂れ気味の目も愛らしい。

か弱く儚く庇護欲をそそる見ためにも満足しているの。


それにね、困った顔をするだけで誰も彼もが、わたくしの願いを叶えようとしてくれるわ。


それなのに、お兄様だけはわたくしに厳しい。


わたくしには年の離れた王太子のお兄様と、2つ年上のお姉様がおります。


お兄様だけは、皆と同じようにわたくしを特別扱いしてくれなかった。


いつも王女としての振舞いや、礼儀作法、勉学を怠るなと口煩く言ってくるの。


お姉様は・・・王太子であるお兄様にもしもの事があった時のスペア。

お父様も優秀なお兄様には目をかけていらっしゃるけれど、お姉様にはそれ程でもない。


お父様に甘えているわたくしを羨ましそうに見ているだけのお姉様。

勉強や作法やマナーの授業で遊ぶ暇も与えられていないお姉様。


お父様に相手にされないお姉様を、お兄様やお姉様の専属侍女たちがとても大切に慈しんでいることが腹ただしかったの。


『スカーレット王女様は優秀で素晴らしい』


『スカーレット王女様は慈悲深く優しい方だ』


『スカーレット王女様は淑女の鏡ですわ』


聞こえてくるお姉様の評価はとても良い。

だから、少し意地悪したくなってお姉様の傍にいる専属侍女や家庭教師をお父様にお願いしてわたくしに付けてもらったの。


『お父様、わたくしから侍女を取り上げないで下さい。お願いします。お父様お願いします』


何度もお父様に頭を下げるお姉様を見ていたら今までにない愉悦を感じたわ。


その時からお姉様はわたくしの前では笑わなくなった。


もう、お姉様の傍には甘えを許さない侍女と厳しい家庭教師だけ。


でもお兄様だけは忙しい執務の間に、わたくしには会いに来ないのにお姉様には会いに行き優しい声で甘やかしているのを見てしまった。

お姉様もお兄様だけには笑顔を見せていた。


わたくしには厳しいクセに!

お姉様なんて少しも可愛くないのに!


わたくしに優しくないお兄様も、感情を見せなくなったお姉様も嫌い。


だからね。

お姉様の婚約者を奪ったの。

面白かったわ。

いつも澄ましたお姉様の顔が歪むのが。

その顔を見た瞬間、凄い快感が襲ったの。


お姉様の婚約者なんて、わたくしがちょっと甘えただけで婚約者解消するって言い出すんだもの。

まあ、その為に純潔を散らしちゃったけれど、お姉様のあの顔が見られたんだもの安いものよね。

すぐに捨ててやったけれどね。


でも、あの時の快感が忘れられなくて次々と婚約者のいる人や、恋人のいる人を落としていったわ。

その度に奪われた令嬢たちの泣き顔や、悔しそうな顔がわたくしにあの快感を与えてくれるから、やめられなかったわ。


そんな時、隣国のカサンドリア王国からの留学生が剣術大会で優勝したアレクシス様を見つけたの。

だからいつものように近づいたわ。

どうせ簡単にわたくしに落ちると思いましたのに・・・


今まで狙って落とせなかった男はいなかったのに彼は見向きもしなかった・・・


許せなくて自国に帰国するという彼を我儘を言って無理やり留学して追いかけたわ。


そして考えたの。

気のないフリして彼からわたくしに近づいて来させようとね。


編入初日にアレクシスが連れていた女には正直驚いたわ。

光を反射する輝くような銀髪に、サファイアブルーの瞳の美しい令嬢だったの。


この美しい令嬢が悔しそうに顔を歪めると想像しただけでゾクゾクしたわ。





そして作戦通り彼は簡単に落ちた。

うふふ・・・また人の婚約者を奪ってしまったわ。


あとはあの美しい令嬢の悔しがる顔を見るだけ。


早く!早く!

わたくしにあの快感を感じさせて・・・





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