第40話 後半アレクシス視点
それからの彼はまるで私に当て付けるかのように学院内でマーガレット王女と過ごしている。
歩く時は肩を抱いて、座ればピタリと寄り添い合い、校舎の陰では抱き合っている。
最近では生徒たちにも見慣れた光景となり、軽蔑の目から、呆れの目となり、とうとう誰もが素通りし目にもとめなくなった。
が、2人はそんな周りの目が変わったことにも気づいていない様子。
いや~仲良くしてるのはいいんだよ?
でもね?
2人してチラチラとこれ見よがしに私を見るのはなぜ?
自慢したいのか?
それとも嫉妬しろってことか?
!!
閃いてしまった!
乙女ゲームあるあるで2人の仲を婚約者が嫉妬して虐めるってやつ!
それか?それを期待されてるのか?
いやいや、まさかそんな使い古された二番煎じ、三番煎じを?
婚約者でもない私が?
あ~り~え~な~い!
バカなハイアー様。
マーガレット王女の自国でのやらかしも、幽閉の話しも聞いていたのにね。
それも忘れてしまったのか・・・。
忘れてしまうほどマーガレット王女に惹かれたんだね。
本当に2人が思い合っているなら、これから訪れるであろう未来も耐えられるよね?
たとえ、行き着く先が何処だろうと・・・。
既にこの国の下位とはいえ、貴族の子息子女はマーガレット王女の言葉を信じ、行動してしまった。
その結果、貴族と名乗れる子は居なくなった・・・らしい。
だから、謹慎期間が過ぎても学院に戻ってくる子はいない。
お父様がディハルト公爵家当主として、どう動いたのかは知らされていないが、あの子達の実家にも何かしら圧力をかけたであろうことは想像がつく。
厳しいようだけれどそれが貴族社会。
あの子達は貴族としての責任の重さや覚悟を軽く考えていただけ。
それは、ハイアー様にも言える。
彼は侯爵家嫡男としての自覚が無さすぎた。
今はもう、社交界でもマーガレット王女と懇意にしている事が噂になっているそうだ。
沢山の高位貴族が集まった場での公開プロポーズ。
次期侯爵予定の子息から公爵家の令嬢へのプロポーズ。
その場に居た人たちの記憶に鮮明に残された熱烈なプロポーズ。
高位の貴族こそ、マーガレット王女が自国で何をしてきたのか知っている。
情報は財産だからね。
もちろんハイアー侯爵、彼の父親も知っている。
それでも彼を止めないのは・・・
~アレクシス視点~
なぜだ?
なぜなんだ?
どうしてこうなった?
俺は今まで何をしていたんだ?
俺はどこから間違えていたんだ?
俺はずっと、ずっとヴィーを思っていたはずなのに・・・
10年かかってやっと、やっと念願叶ってヴィーに会えたはずなのに・・・
誰よりも大切な女の子だったはずなのに・・・
やっと、やっと手に入れたのに・・・
俺はいつからヴィーとまともに話しをていない?
ヴィーはいつから俺の名を呼んでいない?
いつからヴィーは俺に笑顔を見せなくなった?
俺はいつからヴィーよりもマーガレット王女を優先するようになったんだ?
旧校舎に通うようになって、マーガレット王女の柔らかい身体を抱きしめ、口付けをするようになってからか?
いや!マーガレット王女と旧校舎で会っていたことをヴィーは知らないはずだ。
それに、俺は口付けだけしかしていない。
いつも男女関係なく人気者だったマーガレット王女が一人ぼっちになったのを見て、放っておけなくなった。
毎日のように会っていたら情も湧くだろ?
その原因がヴィーだとマーガレット王女から聞かされた。
ヴィーが取り巻きを使って嫌がらせをしてくると・・・
俺の知るヴィーはそんな卑怯なことはしない。
マーガレット王女に『ディハルト様はいつもたくさんの男性を侍らせて遊んでいるとお聞きしましたわ。そ、その体の関係もあるとか・・・』と、そういう噂が流れていると教えられた。
『裏切られているアレクシスが可哀想』と、マーガレット王女が目に涙を浮かべて俺を抱きしめてきた。
それでも俺はヴィーを信じていたんだ。
ヴィーはそんな下品な女じゃないと・・・
でも見てしまった。
ヴィーが男に囲まれて楽しそうに笑っている姿を・・・
その中には婚約者候補を辞退した、もう何の関係もないドルチアーノ殿下までいた。
俺はずっとヴィーに騙されていたのか?
そう思ったら怒りに任せて怒鳴っていた。
ヴィーがあんなに男好きだったとは思わなかった。
そんな女は俺には相応しくない。
頭に過ぎるのは"婚約解消"の文字・・・
それでも素直に過ちを認め、二度と男遊びをしないと誓うのなら一度は許してやってもいいと思っていたのに・・・
なぜ目の前のヴィーの左頬が赤いんだ?
なぜ俺の右手が痛むんだ?
俺は何をしたんだ?
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