第31話
これはちょっと騒ぎすぎではないか?
リアム兄様が在籍していた時よりも、凄いことになっている。
!!ああ、リアム兄様を知らない一年生がいるからか・・・
後ろから目をハートにしてフラフラとついてくる子もいるし、リアム兄様から女性を引き寄せるフェロモンでも出てるのかしら?
「おはようございますリアム殿」
ハキハキとした声でリアム兄様に挨拶をする声がしたと思ったらストレートの紫色の髪を高い位置でポニーテールにした赤い瞳の背の高い見知らぬ令嬢が立っていた。
「ああ、おはよう今日からかい?ホフマン嬢」
リアム兄様のお知り合い?
「はい。そちらのご令嬢は?」
「僕の可愛い妹だよ」
「失礼しました。私はチェルシー・ホフマンと申します。よろしくお願い致します」
ホフマンといえば辺境伯だ。
「ヴィクトリア・ディハルトと申します。こちらこそよろしくお願い致します」
「ヴィー、ホフマン嬢は休暇の間、騎士団の練習に参加していたんだよ」
まあ!女性騎士になるのね!!
騎士服!絶対似合うわ!
「それで、今日から2年Aクラスに編入してきました」
「では同じクラスですね。仲良くしてくださいね」
「ホフマン嬢は真っ直ぐで素直ないい子なんだよ。僕からもヴィーをよろしく頼むよ」
「はい!お任せ下さい」
真面目そうだけど、リアム兄様が薦める人なら本当にいい人なんだろう。
「もっと固い言葉ではなく気さくに話せるお友達になってくれたら嬉しいわ。」
「リアム殿が言っていた通りだわ、私もヴィーと呼んでもいい?もちろん私のこともチェルシーと呼んで」
切り替え早っ!
すっごく付き合いやすそう!
「もちろん!仲良くしましょう?」
「じゃあ僕は行くね。ヴィー何かあったら帰ってくるんだよ」
「もう!リアム兄様は心配性ね」
教室まで送ってくれたあと、リアム兄様は王宮に向かった。
が、その後姿を追うように令嬢たちの悲鳴もあっちこっちで上がっていた。
私はそのままチェルシーをジュリア、アリス、マーリンに紹介した。
ついでにチェルシーの様にお互いを呼び捨てにし、堅苦しい言葉使いも止める事になった。
それだけで、ずっと距離が近くなったようで嬉しくなった。
きっかけを作ってくれたチェルシーには感謝だ。
今日から新学期とはいえ、ホームルームが終われば解散だ。
「皆んなで街で何か食べて帰らない?」
「いいわね」
「チェルシーとお友達になった事だし、もっと本音で話しましょう」
ジュリア、アリス、マーリンの順に私とチェルシーを誘ってくれた。
返事なんて決まっている。
チェルシーと一緒に頷いた。
5人で向かった先は、軽食も食べられるケーキ屋さんだ。
前世でいう"喫茶店"みたいな店だ。
ちなみに学院に各自乗ってきた馬車は街の入口にある馬車止めで待機してもらっている。
私たちは個室に通してもらい、各々好きな物を頼んで料理が運ばれてくると、人気の小説だとか、可愛い小物の店の話だとか、休暇中の話だとか、話が尽きることはなかった。
チェルシーが騎士団の練習に参加していた話になった。
「父上が王都に来るついでに、私も連れてこられたんだ。父上の目的は私の婚約者探しも含まれていたようなんだが、興味がなくてね騎士団の鍛錬の見学をさせてもらったんだ」
なるほど!
私たちはチェルシーに続きを促す。
「そこでな、動きに一切の無駄がなく、鋭く研ぎ澄まされた剣を振るうリアム殿を見て、私の理想の型だと、少しでもリアム殿の型に近づけるように無理を言って参加させてもらったんだ。」
型?
珍しい!リアム兄様を見て剣の腕の方に興味を持つ令嬢なんて初めてかも。
「それを王都に滞在中に身につけようだなんて考えが甘かったよ。だから父上に無理を言って編入してきたってワケ。ウチの3人の兄も化け物じみた強さだと思っていたけどね、リアム殿はその上をいく強さだった」
リアム兄様ってそんなに強いの?
「あの強さに憧れたんだ」
チェルシーの話によれば、週末は騎士団の練習に参加する許可をもらっているようだ。
それからもチェルシーがリアム兄様の騎士団での様子をジュリア達が興奮気味に質問攻めにしていた。
私も普段のリアム兄様とは違う、知らない兄様を知る事ができ、ますますブラコン度が上がった。
その練習中に力の差も弁えず何度もリアム兄様に挑んではボコボコにされた人の話しも出たが、それが彼だとは知らなかった。
食事の後は、街を案内がてらいろいろな店を回り解散になった。
その日から5人で行動を共にするようになり、充実した毎日を送っていた。
ドルチアーノ殿下とは、学院で会えば休暇前とは違い軽い口調で会話するようになった。
そう言えば、ドルチアーノ殿下が以前言っていた『あとは任せて』は、どうなったのだろう?
時折、彼が話しかけてくる事もあるが、すべて作り笑顔で聞き流した。
その彼を見てチェルシーが『あれがリアム殿がボコボコにしていた相手だ』と教えてくれた。
う~ん・・・どうでもいいわ。
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