第26話

「驚かせてごめんね」


ええ!本当に驚かされたわよ!

心臓が止まるかと思ったもの。

だって仕返しを考えている時に、その相手が目の前にいたんだもの、私の思考を読まれ捕らえに来たのかと思ったわよ。


「いえ、こちらこそ申し訳ございません。悲鳴をあげてしまいまして・・・」


一応謝るけど悪いなんて思ってないからね!


「それより何かあったのですか?」


「いや、何もないけれど近くまで来たからね、君の様子を見に来たんだ」


心配してくれたのか・・・やはり優しい人だな。


「毎日思いつくままに自由に楽しく過ごしていますよ。だからご心配なさらなくても構いませんよ」


「うん、本当に大丈夫そうだ」


おお!美形のにっこり頂きました!


・・・だけどね、ドルチアーノ殿下も確かに美形だが、私はそれ以上の超絶美形を知っている。

もちろん私のお兄様たちの事だ。

にっこりを見たぐらいじゃあ、惹かれたりしません!


「ここは涼しくて気持ちがいいね。君がお昼寝場所に選ぶのもわかるよ」


そう、ドルチアーノ殿下は私と一緒に足を伸ばしてお眠りシートに座っている。


お茶菓子も用意されて、まるでピクニックに来ているようだ。


「それで『仕返し』とは?アレクシスにするつもりなのかな?」


!!


「ち、違います!彼のことは本当にどうでもいいので!」


「じゃあ・・・僕に仕返しするのかな?」


なんて勘がいいの!


「ま、まさか!オホホホ・・・」


手元に扇子があれば顔を隠せるのに!


「そうなの?僕は君に仕返しされるぐらいの事はやらかしているからね」


危ない!同意して頷きそうになったわ。


そんなもの悲しげな顔をされても絆されたりしないってば!


このままだとボロが出てしまうかもしれない、ここは話題を変えよう。


「次の視察はどこの領地なのですか?」


「ここが最後なんだ。それで日程に余裕が出来たから、ディハルト領をゆっくり観光しようかと思ってね」


「君はいつ王都に帰るんだい?」


「あと10日程はこちらにいますわ」


「そっか、本当にギリギリまで帰らないんだね」


帰れば彼が訪問してきそうだからよ。


「じゃあさ、君に案内を頼んでもいいかい?」


面倒くさいな~・・・

でも、王族の頼みは断れないわよね。

内心でため息を吐く。


「構いませんよ」


「では明日迎えに来るよ」


ん?


「ドルチアーノ殿下はどちらにお泊まりになっておりますの?」


「宿を取ろうと思っているよ」


え、でも王族の視察の時は、その土地の領主がお世話をするんじゃなかった?


「それなら我が邸に滞在されますか?」


「え??」


何で驚いてるのよ!

他の領地では歓迎をうけていたんでしょう?


「ジョナサン部屋の用意はできる?」


念の為、執事に確認してみる。


「はい、今すぐにでもお供の方も含めご案内させていただけます」


さすがディハルト公爵家!

この本宅がある敷地は無駄にだだっ広くて、離れも大小様々あるんだよね。

殿下たちにはその内の1つに滞在してもらうつもりだ。


「いいのかな?」


「もちろん構いませんよ」


「ではお言葉に甘えさせてもらうよ」


この機会にドルチアーノ殿下の弱みを握るのもいいかもしれない。

仕返しへの第一歩よ!

でも・・・やっぱり大人気ないかな?


聞けばディハルト領に到着して、そのまま訪ねて来たと言う・・・


ドルチアーノ殿下もお供の方もお疲れだろうと、今日は離れの一つに案内し身体を休めてもらうことにした。


もちろん離れでも十分なお料理の提供はできるが、朝食はともかく夕食は一緒に取る事になった。


まあ、2、3日滞在すれば帰るでしょう。


と、思っていたがドルチアーノ殿下は街で領民に聞いた穴場や領地のオススメ場所を全て堪能してから帰った。

私が帰る2日前にね!


でもドルチアーノ殿下と色んな所を回るのは結構楽しかったんだよね。

領民とも積極的に会話もするし、振る舞いも領民に馴染むように心掛けていた。

迷子の子を見つければ、肩車をして親を一緒に探してくれたのよ。

それに孤児院では子供たちに懐かれとても人気者だった・・・。



弱み?何それ?

お供の護衛たちにも、うちの使用人にも我儘や無茶なことも言わないし・・・

欠点なんてどこにあるの?


まあ、気取らない人だったから一緒にいても、変に気を使わなくてよかったし、なんなら友達か?ってぐらい口調を崩した会話もするようになったんだよね。


あれ?仕返しは?打倒は?

どこにいったんだろう・・・??


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