第24話
やって来ましたディハルト公爵領!
ここは王都から馬車で2日程離れた場所にある我が公爵家の広大な領地で、領民の活気もあり海も山も自然もある自慢の領地だ。
観光地でもあるから街も栄えているし、海があるから新鮮な魚介類が食べられるのだ。
取り敢えず今日は疲れた体を休ませて、明日から自由に過ごすつもりだ。
前世の学生の頃は夏休みは昼夜逆転になって母によく叱られたのも懐かしい思い出だ。
家族の目がないからといって、ここで同じことをしたら、厳しくて優しい侍女長に叱られるんだろうな。
去年はドルチアーノ殿下との婚約者候補の辞退だなんだとバタバタして来られなかったのよね。
だから今回は思う存分楽しむつもりだ。
まずは、市場にある食堂で魚料理を堪能することからね。
次の日から、昔からお世話になっている護衛の方ら侍女を連れてあっちにフラフラ、こっちにフラフラと思いつくままに興味の惹かれるものを、食べて、触って、見学し、雨の日は読書をしたり、仲良しのメイドを含めた使用人と刺繍をしたりと楽しく充実した毎日を送っていたが・・・
それも1ヶ月も続けると、さすがに暇になってきた。
そんな時に、王都にいるドルチアーノ殿下から手紙が届いた。
ちなみに、ルイス兄様とリアム兄様からは3日とあけず手紙が来るんだけどね。
何にせよ、10年も婚約者候補でいた間は誕生日プレゼントのお返しも、手紙の返事もなかったドルチアーノ殿下からの手紙だよ?
それを知っている使用人達も私と一緒に驚いている。
優しい人だとは理解したが、以前が以前だけに新手のイタズラか?とも疑ってしまう。
まあ、その封筒を眺めていても時間が過ぎるだけなので封を切った。
初めて見るドルチアーノ殿下の文字は手本のような綺麗で繊細な文字だった。
そして内容もなんて事なかった。
挨拶から始まり、ご機嫌伺いと近況報告だった。
王太子殿下は自由に王都から出られない為、毎年ジョシュア殿下とドルチアーノ殿下が手分けして各地を視察していること。
我がディハルト領にも視察に来るらしいが、勝手に見て回るので対応は不要とのこと。
なるほど・・・じゃあ手紙を送ってくる必要もなかったのでは?
手紙を読んで昼食を食べたあと庭園に向かった。
天気のいい日には庭園にある大きな木の木陰でお昼寝するのが気持ち良くて日課になっている。
私の行動を先読みして、すでにシートが敷かれ数個のクッションも用意されていた。
寝転がって目を瞑ればドルチアーノ殿下の困った顔が浮かんだ・・・。
以前、ルイス兄様にドルチアーノ殿下の性格を聞いてみたんだよね。
昔から穏やかで優しい性格らしい。
私も話すようになって優しい人だと今なら分かるけれど・・・
私を『デブ、ブス』って言ったのも、末の弟を可愛がる兄のアンドリュー王太子殿下が余計なアドバイスをしたのが原因だったそうだ。
ドルチアーノ殿下は、そのアドバイスを勘違いして解釈したらしい。
あの時もワザと王太子殿下の口調を真似らしい。
なんだそれは!ワケわからん。
真相を知っても今さらとしか思えないが・・・
それよりも何やってるんだよ!って感じ。
・・・ドルチアーノ殿下がまだ8歳の時だよ?
素直な時期に兄のアドバイスを聞いたら、従っちゃうのも仕方がなかったとは思う。
でもね、8歳でも王族なら王族らしい対応の仕方を学んでいたと思うのよ?
それに解釈違いだったとしてもだよ?
思い込みで10年は長すぎるよ?
謝ってくれたし、私も一応許したよ?
でもね?
胸が消化不良をおこしているみたいにムカムカして全てを水に流すには、ドルチアーノ殿下の私へ扱いは酷かったと思うの。
このムカムカはきっと不完全燃焼だからだと思う。
だって(泣かす!絶対にいつかお前を泣かす!覚えていろよ!)と密かに誓ったものが達成できていないからだよね?
私は『打倒ドルチアーノ殿下』を掲げて勉強だって作法だって頑張っていたのに、いつの間にかその時の決意を忘れちゃっていたよ。
きっと悲願が達成できれば胸のムカムカも収まるはずだよね?
ドルチアーノ殿下の過去の行いを思い出せば、自然と以前の闘志が燃え上がってきた。
そうと決まれば仕返しする作戦を練らねば!
・・・・・・どうやって??
王子に仕返し?
あれ?冷静になると恥ずかしくなってきたぞ。
『デブ、ブス』略して『デブス』と言われ、泣かすと決意した7歳のあの日、精神年齢20代半ばの私が8歳の子供相手に"泣かす"だとか大人気なかったのでは・・・?
いやいや、私への扱いを考えれば仕返ししてもいいのではなかろうか・・・
「む、難しい・・・」
「何が?」
「いや、仕返しがね・・・」
「誰に?」
ん?
独り言に返事?
不思議に思い目を開ければ私の顔を覗き込む、以前の宿敵がいた・・・
ぎゃ~~~~!
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