第23話
家族が揃った夕食が済んでから、家族だけに大切な話があると言ってサロンに集まってもらった。
私が彼のことを好意的に見ていた事は、家族全員が知っている。
私は順を追って話し始めた。
2ヶ月程前からの彼の違和感を不審に思ったことから話し始め、今日の彼とマーガレット王女の会話と何をしていたのかまで、すべて話した。
最後まで黙って聞いてくれていたが、話が進むにつれて、お父様と兄様達のお顔が恐ろしいものに変わっていった。
お母様の口角が上がっていくのも怖かった。
「許さん!」
「私も許す気はありませんよ」
「ヴィー可哀想に辛かったね」
「誠実だと思っていましたのに騙されてしまいましたわ」
「彼に違和感を感じた時から気付いていましたし、その時に彼の好感度は下がっていきました。それに私は浮気や不貞をする人は#大嫌い__・__#」です。なので彼には嫌悪感しかありません!」
「ヴィーよく言った!」
「ですから悲しんだり傷ついたりしていませんのでご安心を」
「さすが私達の妹だ」
「明日からは登下校も別になりますし、彼との接触をなくしたいと思っています。夏期休暇も領地に引き篭もりますね」
「それはいいが、1人で大丈夫か?」
「はい、リフレッシュしてきます」
あ!忘れるところだった。
これも言っておかないとね。
「それと、今日のことはドルチアーノ殿下が証人になってくれますし、既に陛下や王太子殿下にも報告してくれていると思います。今日まで知りませんでしたがドルチアーノ殿下は面白い人ですね」
皆んなが驚いた顔をしているけど、何かおかしな事言ったかな?
今日、1人で確認するつもりがドルチアーノ殿下まで付き合わせちゃったけれど、結果的には殿下が居てくれてよかったと思う。
それに、こんなにスッキリしているのはドルチアーノ殿下のおかげだよね。
今度お礼をしなくちゃ。
話したい事はすべて話せたので、私室に戻った。
もう、私から彼に近づくことはない。
私にとって彼は不要な存在になっただけ。
結局3ヶ月程度のお付き合いで終わったな。
本気で好きになる前に気付けてよかった。
マーガレット王女に狙われていると知っていて捕まるなんて愚かね。
所詮彼も口だけだったって事ね。
『浮気する人はするし、しない人は一生しないよ』
『泣きたくなったら僕の胸を貸して上げたいけど、胸を貸したら君を抱きしめちゃいそうだから背中なら貸すよ』
面白い人・・・
そして優しい人・・・だったのね。
この日から彼と登下校を別にしてしまえば、そう会うことはなくなった。
これで心置きなく逢瀬を重ねられるでしょうね。
私は2人の関係を知らない振りをしている。
「ヴィー夏期休暇に2人でどこかに出かけないか?」
「お誘いは嬉しいのですが、領地に行きますので残念ですが、お会いする時間があるかどうか・・・」
「じゃあ仕方ない、また今度だな」
それだけ言うと去って行く。
最近の私の作り笑顔にも気付かないのね。
彼って、こんな人だった?
釣った魚には餌をやらないタイプ?
もう私を釣ったつもりなのでしょうね。
しっかりと自分の意見の言える人かと思っていたけれど、ただの俺様だったのね。
あの時のプロポーズの言葉に騙されたわ。
10年間、私を思ってくれていた事は本当だったと思う・・・
でも3ヶ月程度、いえ、たったひと月程で私の存在は軽いものに変わったのね。
こんな人だと教えてくれたマーガレット王女には感謝してもいいかも。
『このまま2人を泳がす』
あの夜、家族の反対もあったけれど、私の意見を尊重してくれた。
そう、周りを味方につけるのが上手いらしいマーガレット王女なら、私に何かしら仕掛けてくるはず。
「ディハルト嬢おはよう」
「おはようございます。ドルチアーノ殿下」
「いつから領地に行くんだい?」
「明日には向かいます」
「気をつけて行ってくるんだよ」
あの日から私を気にかけてくれているようで、 こうして声をかけてくれるようになり短い会話もするようになった。
ドルチアーノ殿下も陛下や王太子殿下に報告済みで「あとは任せて」と、言われている。
何を任せてなのかはっきりとは分からないけれど、きっとトライガス王家との何かしらの交渉があるのでしょうね。
マーガレット王女は本気で彼を好きになり、留学までしてきたのなら、このまま何事も無く結ばれれば王女が幽閉される事も起こらないのに・・・
でも、手に入れるまでが王女にとっての遊びだったとしたら・・・その先には不幸しか見えないわね。
それを、自業自得とも言うけれど・・・
まあ、ここからは2人の問題で私は一切関係ないもの。
私には領地が待っている。
家族の目の届かない場所でリフレッシュして羽を伸ばすぞ~!
オー!
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