第22話 後半 ドルチアーノ殿下視点

馬車止めまで歩きながら少しづつ会話をする。


「あんな場面を見てディハルト嬢は大丈夫かい?」


「まったく気にしていませんよ。アレク様がマーガレット王女に落ちたのは気付いていましたから。確証が欲しかっただけですよ」


本当に?とドルチアーノ殿下の方が辛そうな顔で聞いてくる。


「・・・私は浮気する人が嫌いなんです。アレク様にも『浮気する方は軽蔑しますし嫌いです。たとえ1度でも許しません!』と伝えていたんです」


「うん」


「それをアレク様が忘れたのか、バレなきゃいいと思ったのか分かりませんが、彼の私への思いはそんなものだったって事ですよ」


「そっか」


「それに私は冷たい人間なんだと思います」


「なんで?」


「2人の関係に気付いてからアレク様への好意も無くなって、嫌悪感しかないんですよね」


「それは仕方ないんじゃないかな。ディハルト嬢が嫌いな浮気をアレクシスはしたんだからね」


「そうですね」


「これは僕の持論なんだけど、男も女も関係なく浮気する人はするし、しない人は一生しない。アレクシスは浮気する側だったけだよ。大丈夫!ディハルト嬢なら浮気をしない人を見つけられるよ」


「そうだといいのですが・・・」


「これからどうするの?」


「ん~まずは両親と兄様達に話します。それからアレク様とは理由をつけて会わないようにします。それにもうすぐ夏期休暇ですからギリギリまで領地に引き篭もりますね。アレク様と2人で会いたくないので」


「それがいいね。僕も今日のことを父上と兄上には話してもいいかな?」


「もちろんいいですよ」


・・・・・・。

・・・・・・。


「そ、その・・・ディハルト嬢、泣きたくなったら僕の胸を貸して上げたいけど、胸を貸したら君を抱きしめちゃいそうだから背中なら貸すよ」


「ぷっ、なんですかそれ!泣くほどアレク様に未練なんてありませんよ」


もう、笑わせないでよ!


「本当に私の中でアレク様の事なんてどうでもいい存在になっているんですからね!」


「・・・いや、笑わせようとした訳じゃないんだけど、君が笑えたならそれでいいか」


私に気を使って笑わせようとするなんて、ドルチアーノ殿下って面白い人だったのね。


結局、私が馬車に乗り込むまで一緒に居てくれた。








~ドルチアーノ殿下視点~


あれから彼女とすれ違ったり、目が合ったりすると挨拶をするようになった。


相変わらずアレクシスとも仲良くしているようで、マーガレット王女が近付く隙もなさそうで安心していたんだ。


彼女が放課後、僕たちのクラスにアレクシスを迎えに来ると急いで彼女の元に行っていたアレクシスが、知らないうちに席を外し彼女を待たせるようになった。


だからか、今度はアレクシスが彼女のクラスに迎えに行くようになったみたいで、彼女を3年の階で見かけることはなくなった。


でも最近になって彼女の笑顔に翳りが見える気がしていたんだ。


そんなある日の放課後、3階の窓から彼女がコソコソしている姿が見えて、気になって後をつけてしまった。


聞けばアレクシスとマーガレット王女が会っていると、しかも2ヶ月程前からだと思うって。


彼女はアレクシスの浮気に確信があるようで僕も付き合ったんだ。


そして、抱き合いキスをする2人を見てしまった。


『それでもわたくしは毎日でもアレクシス様に会いたいのです』


角度を変えて何度もキスをする2人。

彼女を傷つけたアレクシスが許せなくて拳が震えた。


『アレクシス様、今日も少ししか一緒にいられる時間はないのですか?』


『いや大丈夫だ。もうヴィーと登下校はしない事になった』


彼女を見れば頷いて本当だと言っている。


『では!今日は時間を気にしなくていいのですね』


アレクシスに甘えるよう抱きつき何度もキスを強請るマーガレット王女。


『王女との関係は留学が終わるまでの間だけだからな。それまでは付き合ってやる。俺にはヴィーがいるからな』


何を言っている!

お前に都合がいいだけじゃないか!

お前の言葉を聞いて、不貞を見ている彼女が許すわけないだろう!


これ以上彼女を傷つけたくない。

泣いてないだろうか?


彼女を見れば舌を出してすごく嫌そうな顔・・・?。

その顔も可愛いけど本当に平気なのか?


『それに、俺は王女と体の関係まで持つつもりはない』


アレクシスの言葉を聞いているだけで不快だ。


彼女が僕の袖をクイクイっと引っ張る。

もう満足したのか終了の合図を目で送ってきたのでその場をあとにした。


彼女がぽつぽつと話してくれた内容は、彼女は浮気や不貞が大嫌いで、アレクにも一度でもそんな事をしたら許さないと伝えていたと。


気付いてからはアレクシスへの好意も無くなり、嫌悪感しかないと。


アレクシスに浮気された事よりも、自分は冷たい人間だと落ち込む彼女に僕の持論を伝えた。


『そ、その・・・ディハルト嬢、泣きたくなったら僕の胸を貸して上げたいけど、胸を貸したら君を抱きしめちゃいそうだから背中なら貸すよ』


真面目に言ったつもりだったのに笑われた。

でも、彼女が初めて僕に笑顔を向けてくれたんだ。


笑いながらもうアレクシスの存在は彼女の中にないと言う言葉に無理をしているように見えなかった。


彼女も僕も帰ったら家族にアレクシスとマーガレット王女の事を話す。





10年間も思い続けてきたんだろ?

彼女を失ってまで、あんな女と遊びたかったのか?

もう、彼女がお前の手を取ることはなくなったんだよ。


それに・・・気づいた時にはもう遅いんだよ。

アレクシス・・・

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