第8話
私の噂話も聞こえなくなった頃、リアム兄様達3年生の卒業式が行われた。
これから登下校も、ランチタイムもリアム兄様とご一緒出来なくなると思うとすごく寂しい・・・
邸で毎日会えるといってもこればかりは気持ちの問題なのだ。
私も2学年に上がれば後輩も入ってくる。
それは少し楽しみだけれど、その前に春休みがある。
その間に王城ではトライガス王国からの使者の方を歓迎するパーティーが開かれるそうだ。
実はそのパーティーに私も参加する事になったんだよね。
お父様とルイス兄様から『ヴィーを誰にも見せたくないけれど、夜会に参加しなければならなくなってしまった』
と、泣きそうな顔でそう言われたら断れないよ。
この国では17歳になると成人と認められて、夜会にも参加出来るようになる。
それに婚姻も認められている。
前世の記憶の中の小説では貴族の令嬢が着飾ってデビュタントだとか、お披露目されるパーティーだとか大袈裟に書かれていたが、この国では"17歳の誕生日を迎えたら成人"と認められて終わる。
日本で成人式に行かなくても20歳は成人と見なされる事と一緒だ。
・・・ん?待てよ?
日本の成人年齢って20歳だったっけ?
いや、私の記憶では18歳に法律で決まったような・・・?
まっどっちでもいいか。
もう転生しちゃってるし関係ないよね!
そしてパーティーに参加するならドレスがいる。
で、誰が私に1番似合うドレスを作れるかで、お父様、ルイス兄様、リアム兄様の3人が競い合っているんだよね。
私って前世から物欲よりも食欲だったから着られば何でもいいんだけど、真剣にデザインを考えてくれている姿に大切にされていると実感する。
少し照れくさいけどね。
で、選ばれたのはお母様が用意してくれていたドレス・・・
着られれば何でもいいと思っていたけれど、あれは無いわ~
だって3人とも露出は少ないドレスだったのはまだいい。
ただ生地は分厚く、ダボッとしていて身体のラインが分からないドレスを示し合わせたように似たような物を用意していたんだよね。
あれじゃあマタニティドレスか何処かの民族衣装にしか見えないよ・・・
そんな理由でお母様から却下され、今の私は光沢のある絹の青い生地に銀糸で繊細な刺繍のされたドレスを身にまとい、普段はしない化粧を施され自分で言うのもなんだが、とても似合っていると思う。
エントランスで待っていたお父様とお兄様2人は私の姿を見てスゴく褒めてくれたけれど、絶対に1人にならないと約束させられた。
海外のお客様も参加するパーティーで危険などないと思うんだけどな。
でもここは素直に頷いておこう。
初めての夜会とはいえ緊張をしないのは、きっとルイス兄様やリアム兄様が側にいてくれるから。
2人のお兄様に挟まれてお父様とお母様の後に続いて入場した。
ホールに入った瞬間目が開けられないほどの眩しさに目眩がした。
目が開いた先には凄いとしか言えない光景が。
前世でもこんな煌びやかな光景は見たことがない。
ヤバイ急に緊張してきた。
さっきまで平気だったのに手足が震える。
「大丈夫だよ」
「僕たちがそばにいるから安心して」
左手はルイス兄様、右手はリアム兄様がギュッと握って優しく微笑んでくれた。
それだけで落ち着いた。
「はい!」
そうだよ、緊張する必要などなかったよね。
私にはこんなに頼りになるお兄様たちがいるんだから。
「ルイス兄様、リアム兄様大好きです!」
「「ヴィーが可愛い!」」
それからはお父様とお母様と一緒に挨拶回りをしたけれど、婚約者のいない私たち兄妹に自分の娘さんや息子さんを進めてくる貴族がとても多くて驚いた。
ルイス兄様は次期ディハルト公爵家当主だし、リアム兄様はひとり娘だったお母様の実家バトロア侯爵家を継ぐし、2人とも頭脳明晰で、眉目秀麗、さらに優しくて超優良物件だもんね、そりゃあ狙われるよ。
『我が家は恋愛結婚を推奨していますから、本人に任せているんです』
お父様もお母様も同じ言葉で何度も相手に断っていた。
この国の女性の結婚適齢期は17歳から24歳と早過ぎず、遅過ぎずでもない。
17歳になって半年ほどの私は別に焦ってもいないし、最悪本当に嫁ぎ先がなければディハルト公爵家でお世話になるつもりだ。
お母様は家格など気にせず好きな人のところにお嫁にいけばいいと言ってくれる。
前世日本人の私からすれば10代で相手を選んでも失敗する確率の方が高い気がするのにな。
おや?音楽が変わったと思ったら王族の登場のようだ。
皆が頭を下げて臣下の礼をとる。
・・・あれが我が国の国王と王妃様。
ダンディで威厳もあり男前だ。
王妃様は小柄で華奢なのに貫禄もある美女。
あれで3人の男の子の母親なんだ。
続いて王太子のアンドリュー殿下。
国王によく似ている。
第2王子のジョシュア殿下。
王妃様似だったのね。
最後にドルチアーノ殿下。
彼も父親似ね。
3人の王子に共通するのは黒髪に金色の瞳。
それも国王様と同じ。そしてイケメンだということ。
「ヴィー後で王太子殿下に軽く挨拶に行こうか。挨拶だけでいいからね。何も話さなくていいよ」
「ルイス兄様も一緒に居てくれる?」
「勿論だよ。ヴィーを1人にしないから安心して」
「じゃあ挨拶だけなら・・・」
「僕も隣にいるからね」
リアム兄様が頭を撫でてくれた。
次はトライガス王国からの使者の方々の入場だ。
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