第7話 ドルチアーノ殿下視点

~ドルチアーノ殿下視点~


次の日には彼女が僕の婚約者候補を辞退した事が学院中で噂になっていた。


僕が知らなかっただけで、もう何ヶ月も前に彼女は辞退していたんだ。


はぁ、このまま授業を欠席しようか。

どうせ内容も頭に入ってこないだろう。


1人になれる場所がいい。

空き教室に行こうか?

天気がいいから温室にでも行こうか?

カフェのテラスでもいいな。

あそこなら外から見られることもないし1人になれる。


結局僕が向かったのはカフェのテラスだった。

昨日あまり眠れなかったのもあり、春の日差しが差し込むここはポカポカと暖かくて落ち着く。







植木で仕切られた隣のテラスから聞こえる声で目を覚ました。

どうやら寝てしまっていたようだ。



『ヴィクトリア様が候補を辞退していたなんて知りませでしたわ』


・・・・・・。


『それでも時間の問題だったと思うわよ』


ここでも噂話か。


『確かにあの方はヴィクトリア様を除いた候補の方にはデレデレしていましたものね』


周りからはそう見られていたのか。

もう今日は帰ろう。

音を立てないように席を立とうとした時だった。


『最初から私はあの方に嫌われていましたからね。それに候補者のままだと素敵な出会いを見逃すかもしれませんもの』


!!

もしかして彼女が隣のテラスにいるのか?


『あの~ヴィクトリア様の理想の男性をお聞きしても?』


今さら彼女の好きなタイプを聞いてもな・・・


『そんなの決まってるわよ』


うん、聞かなくても分かるよ。


『ええ、ルイス様とリアム様、それに公爵様でしょ?』


うんうん僕もそう思う。


『それは分かっていますわ!世の女性の憧れの方たちですもの。わたくしが聞きたいのは性格というか、態度というか、見た目だとか・・・』


それは聞いてみたい。


『ん~そうね。女を侍らすような浮気性の人は嫌いね。あと横暴な人。それと・・・意味無く睨む人』


・・・・・・・・・聞かなければよかった。

確かに彼女に対しては横暴だった。

でも僕は浮気性ではない!

それに睨んでもいない!


『それって、そのままあの方みたいですわね』


やっぱり周りからはそう見えるんだ・・・。


『ええ、初対面の時から最悪でしたわ』


そうだろうね。

もう好きに言ってくれ。

すべて僕が悪い。

何を言われても怒らないよ。


『私は、私だけを見てくれる人がいいわ』


男も女も関係なく普通はそうだよね。


ははは、周りを女の子に囲まれて腕を絡められても、ベタベタ触られてもされるがままだった僕は周りから見ればただの女好きに見えたんだろうね。


・・・最悪だ。

僕は今まで何をやっていたんだよ。

もう消えてしまいたい。


いや、令嬢たちの貴重な意見が聞けたんだ、これを参考にして直すべきところは素直に直せばいいんだ。


もう、彼女との縁は切れてしまったんだから・・・。








その頃アンドリュー王太子の執務室では・・・


「なあ、ルイスの妹って本当に可愛いのか?」


「私の妹ですよ?可愛くないわけがないと思いませんか?」


「まあディハルト公爵家がお前も含めて皆が美形揃いなのは認めるけどさ~」


「ヴィーは世界一可愛いですよ」


「俺、あのお茶会以来会ったことないからな~ジョシュアも婚約者候補の中にお前の妹が入っていたら選んでいたと言っていたしな」


「当然ですね。でも妹は王家には渡しませんから」


「分かっているんだけどさ~」


「ヴィーは嫁に行かず、ずっと我が家に居ればいいんです」


「お前跡取りだろ!そんな事言っていたら嫁が来ないぞ!」


「ヴィーを大切にしてくれる女性を嫁にしますよ。もし現れなければその時は養子でも貰いますからお気遣いなく」


「・・・」


「それよりも来月に我が国に外交で訪問されるトライガス王国の資料を渡しますので目を通しておいて下さい」


「・・・歓迎パーティーもあったな?」


「はい」


「じゃあお前の妹も成人した事だし連れて来い!」


「はぁ?妹は関係ありませんけど?」


「これは王太子命令だ!」


「・・・側近辞めようかな」


「それはダメだ!1回ぐらい妹を見させてくれよ~」


「はあ・・・父に相談してみます」


「それでいい!」


「やっぱり側近になんかなるんじゃなかった・・・」

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