第4話

次の日には私が婚約者候補を辞退したことは噂になっていた。


でも私に言わせれば今さら?なんだけど・・・

だってもう何ヶ月も前に辞退したんだよ?


それよりも驚いたのはドルチアーノ殿下が辞退を知らなかったことよね。

国王様も王妃様も教えなかったのか?


10年ぶりに話しかけてきた理由が誕生日プレゼントが届かなかったからなんて、バカにしてるわよね?


私の誕生日にプレゼントを送ってきたこともないクセに!

季節の折には義務で手紙も送っていたのに返事は1度もなかった。

『デブでブス』の見下せる私は貢物を納めるだけのカモだったのでしょうね。


そのカモから毎年納められる貢物がなくてムカついたとか?


そんなの知るか!


赤の他人になった男に誰が貢ぐか!


「どうしましたの?ヴィクトリア様」


「いつも笑顔のヴィクトリア嬢は今日は機嫌が悪いのかな?」


しまった!今は恒例のランチタイム中だった。


「そんなことありませんわ。少し考えごとをしていましたの」


「ヴィーはそんな姿も可愛いね」


リアム兄様!ここは共有スペースの食堂です!恥ずかしいです!

・・・嬉しいですけど。


「ヴィーの午後からの授業はなんだい?」


「先生の都合で自習になりましたの」


「ヴィクトリア様!では1年のわたくし達では中々使用出来ないカフェのテラスでお茶をしませんか?」


「各テーブル毎に季節のお花に囲まれてお部屋のように仕切られていると噂の?」


「そうです!行ってみましょう?」


私も行ってみたかったのよね。


「はい!行きましょう。楽しみです」


女の子4人だと恋バナとかになるのかな?

いいね~前世でも学生の間は恋バナで盛り上がった記憶がある。

社会人になってからは、会社と自宅の行き来しかなくて休日は寝て終わっていたような・・・


あ!私って学生の頃はある程度の恋愛は経験したけれど、結婚も出産も経験ないわ!


だってブラックだったんだよ~

残業で家に帰れない日だってあったんだよ?

そんな日は机の横で寝袋に入って床に転がって寝てたよ?

そんな時は他の同僚も何人かいたね。

・・・うん、過労死だ。間違いない。

まだ20代だったのにな。


今世は真面目で優しく思いやりのある人と結婚しよう!

お互いを愛し、尊重しあえる夫婦。

お父様とお母様のような夫婦になりたい!

だってお母様を見ていたら毎日が幸せそうなんだもの。


娘の私から見ても3人も子供がいるのに、それもルイス兄様なんて21歳だよ?なのに今だにラブラブなのよ?


ルイス兄様もリアム兄様も絶対にお嫁さんも子供も大切にするんだろうな~

正直兄様達のお嫁さんになる人が羨ましい。


私にそんな人が現れるなんてまだ想像も出来ないけれど、いつかは出会いたい・・・

愛し愛される人と・・・

それまでは大好きな家族と過ごしたい。




ランチを食べ終わり、リアム兄様達と別れて噂のカフェテラスに行った。


凄い!まるで花で出来た部屋!

もちろん天井はないけれど、真っ青な空が周りを囲む色鮮やかな花を引き立てている。

キツ過ぎない花の香りもいい!

外からはこちらの様子も見えないのもいい!


入学する前からの友達は、お母様に命令されて参加したお茶会で知り合い、性格も家格もバラバラだけれど本音で話せる貴重な子たち。


ふわふわの茶髪に水色の瞳のジュリアは小柄で可愛らしい令嬢。

性格も控え目で守ってあげたくなる。


真っ直ぐな赤い髪に黄色い瞳のアリスは背も高くて性格もサバサバした姉御的存在。

綺麗なお姉さんって感じ。


青い髪を高い位置でポニーテールにして黒い瞳のマーリンは落ち着いた見た目だけれど、私たちの中で1番の辛口。


カフェのメイドが茶菓子をセットして退室すると女子会の始まりだ。


「ヴィクトリア様が候補を辞退していたなんて知りませでしたわ」


「それでも時間の問題だったと思うわよ」


「確かにあの方はヴィクトリア様を除いた候補の方にはデレデレしていましたものね」


「最初から私はあの方に嫌われていましたからね。それに候補者のままだと素敵な出会いを見逃すかもしれませんもの」


そう、奴の婚約者候補のままだと若い貴重な時間を無駄にする事になるんだよね。

どこで出会いがあるかもわからないもの。


「あの~ヴィクトリア様の理想の男性をお聞きしても?」


ジュリア様。


「そんなの決まっているわよ」


アリス様。


「ええ、ルイス様とリアム様、それに公爵様でしょ?」


マーリン様。


「それは分かっていますわ!世の女性の憧れの方たちですもの。わたくしが聞きたいのは性格というか、態度というか、見た目だとか・・・」


「ん~そうね。女を侍らすような浮気性の人は嫌いね。あと横暴な人。それと・・・意味無く睨む人」


「それって、そのままあの方みたいですわね」


「ええ、初対面の時から最悪でしたわ」


私はハッキリと言葉に出した。


「それに・・・私だけを見てくれる人がいいわ」

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